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第6話
「周平……っ」
ひそやかに呼んだ声に、せつなく濡れた恋心が滲む。結婚していても別れてしまっても、変わらずに周平だけが佐和紀の恋人だ。
「して……。こっち……ッ」
自分でボクサーパンツの前をずらすと、飛び出した性器が裏筋を晒した。恥ずかしさに顔を赤く染めながら、佐和紀は吐息を漏らす。
性器の先端はうっすらと濡れて、恋人の甘いくちづけを待っている。
それなのに、膝立ちになった周平は指から口を離してうっすらと笑うばかりだ。くちびるを寄せてもくれない。
「見てるよ。もっと大きくしてみせて……」
自分でしごいて育てるように促され、佐和紀はくちびるを噛んだ。片手で派手な花柄のシャツをまくり上げて押さえ、屈めていた上半身を起こす。
ボクサーパンツを膝までずらされながら、指を絡めて根元を掴む。ゆっくりと先端に向かって動かし、また根元に戻す。
そこが完全に剥き出しになり、刺激がさらに強くなる。
周平に見られていることよりも、自分が作り出す直接的な快感に息が乱れ、夢中になってしまいそうになった。普段は忘れている性欲が、ここぞとばかりに頭をもたげ、暴れ回ろうとしているようだ。
「あっ……、ぁ……ッ」
「ひとり遊びがうまくなったな。いやらしい手つきだ」
「ん……ばか……ッ」
「してもらうのが楽しみだ。なぁ、佐和紀……」
周平の鼻先が下腹の茂みに近づき、逃げようとした尻を掴み戻される。匂いを嗅がれ、息を吹きかけられ、手もろくに動かせない。
ただ握りしめているだけで達しそうになり、周平のくちびるを指で押した。開く場所を探っていじり、腰を引く。
「もう、くわえて……」
指で歯列をなぞり、爪の先で開かせる。唾液に指を濡らしながら、周平の舌を探った。自分自身を掴み、周平の口元へあてがう。
指を差し込んで開かせたくちびるの間から舌先が迎え出てくる。張り詰めた亀頭を舐められ、腰が引けた。
「あっ……ぁ」
思わず顔が歪み、息が引きつれた。
「ん……っ」
唾液のぬめりが、敏感な先端の膨らみを包み、肉の厚い周平のくちびるに飲み込まれる。全体が熱さを感じ、閉じた目のふちに涙が滲む。
「はっ……」
膝が笑い出し、ガクガクと震える。
「きもち、いい……っ」
ひとりでするのとは比べものにならない快感が押し寄せ、壁にもたれてのけぞりながら、佐和紀は自分の金髪を掴んだ。力強い周平の手が、壁に挟まれながら佐和紀の両尻に食い込み、逃げ場のない佐和紀は距離を詰められる。
ジュッと吸われ、深く飲み込まれていく。かと思うと、すぐに引き、幹をしごいてくちびるが動く。
「うっ……、ふっ。……もっと、音……させて……。あっ……あぁ、エロ……い……っ」
恥ずかしげもなくジュポジュポとしゃぶられて腰が揺れる。射精の欲求はすぐに募り、尻を揉まれるだけでは欲求不満になってくる。
指先で探って欲しかった。割れ目を押し開いて、奥に隠された入り口を撫でられたい。
しかし、喘ぐのに忙しい佐和紀はねだることもできない。もどかしさも、それはそれでよかった。
「あっ、あっ……く……、い、くっ……」
腰をぐいぐいと前後に動かした佐和紀は、シャツを抱きしめて身を屈めた。見上げてくる周平と、互いの眼鏡越しに視線が絡む。
佐和紀のモノにしゃぶりつきながら、周平は欲情している。その瞳に浮かんだ、獰猛な性感に佐和紀は支配された。
「飲、んで……。俺の、飲んで……っ」
激しく喘いで訴えながら、佐和紀はまぶたをぎゅっと閉じる。くちびるがわなわなと震え、ひときわ深く吸われた。腰が、壁ではなくドアに押し当たり、ドンッと物音が立つ。
「くっ……」
息が喉で詰まり、最後は周平の動きで搾られた。緊張を帯びた腰の中心に意識が集まり、欲望のすべてが出口を求めて迸る。
狭めた口の中いっぱいに溢れていく精液に、敏感な先端が包まれ、やがて嚥下する周平の喉の動きで全体が圧迫された。
「あぁッ、ん……」
腰砕けになる身体を抱き支えられ、愛撫に濡れた性器が解放される。周平の膝に崩れ落ちて、肩に取りすがった。ぜいぜいと息をつき、頬にくちびるを寄せる。
キスを求めると、気を使った周平が逃げた。
「イヤ……。する……」
フェラチオをしたあとでも佐和紀は平気だ。周平だって、自分のものをしゃぶらせて、すぐにキスをする。すべてはいまさらだ。
甘えながら首筋に腕を絡め、くちびるに吸いつく。ねっとりと絡めた舌に、濃い精液の味がした。
「ベッド、行こ……?」
眼鏡をはずした佐和紀がうっとり見つめると、周平が苦笑いを浮かべる。
「風呂の用意ができてる。汗を流してから……」
「いきなり咥えたくせに?」
「おまえはいつだってきれいだ。……俺にも『恥じらい』がある」
凜々しい顔だちで真剣に言われ、返す言葉もなく、佐和紀は頬を膨らませる。そういう周平が好きでたまらず、ときめく自分がたまらなかった。
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