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序 ─じょ─

「ねぇ、知ってる? 少し前、大女将さんから聞いた話なんだけどさ」 まだ幼さなさの残る少年が慣れた手つきで己に化粧をしながら、他の少年達に話しかける。 「なんだよ、ぼく忙しいんだけど」 「僕だって化粧中だけど? もうすぐお店開くし、しながら聞いてよ。ちょっと怖い話だよ」 「それならまあ、暑くなってきたから丁度いいかも……私聞きたい」 口々に答えつつ、手は止まらない。店が開くまであと一刻程だ。 「じゃあ、話していくよ。大女将さんがまだ女将さんだった頃の話だから、十年〜二十年くらい前だろうね。あのね、当時そろそろ陰間を引退する年頃の陰間がいたんだ────」 ︰ ︰ ︰

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