1 / 6
序 ─じょ─
「ねぇ、知ってる? 少し前、大女将さんから聞いた話なんだけどさ」
まだ幼さなさの残る少年が慣れた手つきで己に化粧をしながら、他の少年達に話しかける。
「なんだよ、ぼく忙しいんだけど」
「僕だって化粧中だけど? もうすぐお店開くし、しながら聞いてよ。ちょっと怖い話だよ」
「それならまあ、暑くなってきたから丁度いいかも……私聞きたい」
口々に答えつつ、手は止まらない。店が開くまであと一刻程だ。
「じゃあ、話していくよ。大女将さんがまだ女将さんだった頃の話だから、十年〜二十年くらい前だろうね。あのね、当時そろそろ陰間を引退する年頃の陰間がいたんだ────」
︰
︰
︰
ともだちにシェアしよう!

