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第43話 処刑

叔父様(おじさま)似嵐(にがらし)家名(かめい)(けが)した罪で、処刑いたします」 「面白かったぞ、(みやび)。アクタとウツロをすっかり骨抜(ほねぬ)きにしたな。あの腑抜(ふぬ)けたツラ、見てられんわ」 「同じ穴のムジナでしょ、叔父様? 人間を玩具(がんぐ)にするという点においてね」 「ほざけ雅。ミイラ取りをミイラに。お前もわしの玩具になってもらうぞ。今度こそバラバラに切り刻んでその肉片(にくへん)傀儡仕掛(くぐつじか)けにし、姉貴(あねき)の前で人形劇(にんぎょうげき)としゃれこむのだ」 「ああ、やだやだ、下劣(げれつ)な男。わたしをそんな目で見ないでくれる?」 「ふん、悪女(あくじょ)が。そうだ、どうせなら後ろの役立たず(・・・・)とまとめて(おり)の中へ(ほう)()み、見世物(みせもの)にするというのはどうかな? わしは見物料(けんぶつりょう)をたんまりせしめて、お前たちは一緒に気持ちよくなれる。一石四鳥(いっせきよんちょう)じゃないか?」 「(けが)らわしい……ぶち殺す……!」 「ふん、本性(ほんしょう)を現しおったな。やってみろ」  (つい)大刀(だいとう)を、星川雅(ほしかわ みやび)は突きだすように(かま)えた。 「わたしの二竪(にじゅ)で、あの世へ送ってあげるよ」  その目は爛々(らんらん)と殺意に(かがや)いている。 「なるほど、二竪か。姉貴の両面宿儺(りょうめんすくな)を小型にしたレプリカだな? 母の真似事(まねごと)では、わしは倒せんぞ?」 「レプリカじゃないし。それに、真似事かどうか、(ため)してみなよ――!」  星川雅は強く、大地を()った。 「――っ!?」  早い――  中空(ちゅうくう)でくるっと横に回転しながら、右の刀を袈裟(けさ)に振り下ろす。  似嵐鏡月(にがらし きょうげつ)はその攻撃を黒彼岸(くろひがん)で止めた。  少女とは思えない重さ、そして―― 「ぬっ――!?」  間髪(かんぱつ)置かずにさらに回転し、今度は左の刀の攻撃がくる。 「くっ――!」  似嵐鏡月はかろうじてそれを(はじ)(かえ)した。  星川雅はくるっと蜻蛉返(とんぼがえ)りをして、じゅうぶんな間合(まあ)いを保った位置に着地する。 「なるほどな。片方(かたほう)の刀で注意を引き、その(すき)にもう片方で攻撃する。理にかなった戦法(せんぽう)だ。やるじゃないか、雅」 「うふ、右が阿呼(あこ)で、左が吽多(うんた)っていうんだ。叔父様の血を欲しがってるよ? このままあなたを切り刻んであげる」 「ふん、偉そうに。お前の母が()()したやり方ではないか。しょせんは劣化(れっか)コピーではないのか? あーん、雅?」 「なめやがって、ぶっ殺す……!」  桜の森の間隙(かんげき)をぬって、二つの影が激しくぶつかり合う。  斬撃(ざんげき)につぐ斬撃の応酬(おうしゅう)――  虚空(こくう)静寂(せいじゃく)蹂躙(じゅうりん)して、鋼鉄(こうてつ)どうしがこすれる音と、(しょう)じる火花(ひばな)()(みだ)れる。  森の桜よりもなお、美しいような―― 「ふん、なかなか楽しませてくれる。アクタやウツロなどよりよっぽど使いよるな、雅?」 「あは、まーね。教える人のレベルが違うから、ね?」 「ふん、いちいち生意気(なまいき)(むすめ)だ。姉貴を見ているようで怖気(おぞけ)が走るわ」 「あなただって吐き気を(もよお)すおぞましさだよ? 毒虫の鏡月(・・・・・)?」 「おのれ、まだ言うか――!」  黒彼岸の(にぶ)一撃(いちげき)を、星川雅は受け止めた。  そのまま体をひねって回転し、また間合いを取る。 「叔父様、こんなのはどう?」 (『第44話 絶技(ぜつぎ)』へ続く)

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