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第56話 魔女グレコマンドラ

「グレコマンドラ・ジョーンズ……あの悪魔のような天才科学者が、わしに誘惑をしかけてきたのだ……」 ―― ミスター・キョウゲツ、わたしに力を貸していただきたい。人間の可能性の限界を打ち破るその『実験』に、協力してもらいたいのです ―― 「不気味な女だった……容姿(ようし)こそ美しいが、(かも)()雰囲気(ふんいき)はどこかおどろおどろしく……なんというか、(はじ)けたザクロのような女だった……」 ―― 魔王桜(まおうざくら)と呼ばれる異界(いかい)の支配者がいて、その存在がそれを可能にするのです。わたしは人間の技で、魔王桜を召喚(しょうかん)することに成功しました ―― 「いったいなんの冗談(じょうだん)かと最初は思ったよ。しかし彼女は、グレコマンドラは大真面目(おおまじめ)だった。世界でも名だたる科学者・工学者・技術者たちの手を集結させ、完成させていたのだ……魔王桜を人工的に呼び出す装置、その名も『ファントム・デバイス』をな」 ―― もし、魔王桜の手によって、治癒(ちゆ)の能力が開花(かいか)すれば、あなたの大切な方……アクタさん、でしたか……助けることも可能となるでしょう ―― 「まさに悪魔の誘惑……だが、わしにそれを(こば)む理由などなかった……こうしてその『実験』は、まるで台本にでも書かれていたように首尾(しゅび)よく進んだのだ。わしとグレコマンドラの(むすめ)、テオドラキアの二人でな……」 (『第57話 テオドラキア』へ続く)

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