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【第2部 ヘルボルナ大陸】 第2章:クルーズ編 第3話
すっかりと日も落ち、圭たちは部屋へと戻った。ほどなくして夕食の時間となった。昼食を食べて昼寝して、少し船内を歩いた程度しかしていないというのに、不思議なものできちんと腹が減る。成長期を実感した。早くもっと背が伸びて、カッコ良い大人になれれば良いのに。
スイートルームを利用している圭たちは食事の場所を選ぶことができた。移動が面倒くさければ昼食の時のように部屋に運んで来てもらうこともできるし、他の乗客たちのようにレストランを利用することもできる。
レストランにも2つのタイプがあるようで、乗客の多くが利用しているビュッフェスタイルのレストランと、フルコースとして提供されるレストランの2店舗があった。
好きな物を食べたいだけ食べられるビュッフェは非常に魅力的ではあったが、共に食事をするアレクをそんな場所に連れて行くことはできない。王宮などで開かれる立食パーティなどと違い、豪華客船と言えど、不特定多数の人が気ままに訪れる場所に行くことなど許されないだろう。
周囲の警護のことなどを考えれば、部屋の中で食事を摂るのが一番面倒をかけずに済むだろうことは明白だったが、せっかくの客船を存分に楽しみたかった。
コースで提供されるレストランへと赴けば、当然のように案内されたのはVIP用にあつらえられた個室だった。アレクと2人きりの食事というのは慣れているし、特に抵抗もない。アレクにとっても、周囲から見られないというのは楽で良いだろう。
城の料理からすれば少々格が落ちるだろうが、それでも絶品と呼ぶに値する食事に舌鼓を打ちつつ、楽しく夕食を共にする。船首では少しアンニュイになっていたようにも見えたアレクであったが、その後は終止ご機嫌だった。
いや、アレクはこの旅の道中、機嫌が良いことの方が多い。時折、圭が突拍子もないことを言えば首を傾げたり怪訝な表情をしたりもするが、大抵の時間は穏やかに笑んでいたり、楽しそうにしたりとリラックスして見える。
そんなアレクを見て、圭も嬉しかった。
豪華な夕食を終え、部屋へと戻る。少し食休みを取った後、昼間話していたジャグジーの件が承諾されたと聞き、喜々として水着を着用した。
もちろん、ジャグジーの周囲には一般の人には見えないよう、目くらましの魔法が施されるらしい。それに、ジャグジーの周囲は立ち入りを禁止するようだ。
しかし、それ以外の甲板は誰でも自由に寛げるよう、制限はごく一部にするらしい。
圭としてもその方がありがたかった。いくら夜で使用されていない場所とは言え、誰もが自由に利用できる場所を自分たちの都合だけで塞いでしまうのは心苦しい。それに、誰かに迷惑をかけていると思うと、気にしてしまってゆっくりなんてできない。日中見たプールのように、利用者の楽しい声が聞こえてきてこそ気兼ねなく寛げる。
短パンとラッシュガードのような薄手だが透けない羽織物を着用し、甲板へと向かう。ジャグジーは乗客たちの利用後、きちんと清掃されたようで清潔に保たれていた。両親などと行った近所のプールの施設では、夕方にもなれば多くの人が利用したことでそこそこ汚くなっていたのを思い出し、苦笑する。さすが豪華客船。衛生観念が違う。
もちろん、アレクが利用するということが一番大きいとは思うが。
チャプリと足先を入れれば、温かさにホッとする。日が落ちると寒いという程ではないが涼しく感じる。ラッシュガードを脱ぎ、水着一枚でジャグジーの中で脚を伸ばした。水温というより湯に近い温度は心地良く圭の体を包み込んだ。
「あったかくて気持ち良いな~」
大きく伸びをする。見上げた空一面に星空が煌いていた。
「わぁっ!」
キラキラと輝く大量の星々。時折見える流れ星がまた夜空を美しく彩っていた。
「アレクー、空、すっげー星キレー!」
夜空を指さし、隣にいるアレクへと顔を向けた。アレクの視線の先が圭の指の方向を向いている。
「あまりこうして夜空を眺めるなんてことはなかったが、なかなかに綺麗だな」
「俺の世界でも星見えるけど、こっちの世界ほどは綺麗にいっぱい見えないから、こっちの方がすげーと思う」
「ケイの世界にも星はあるのか?」
「あるよ! あと、月っていうのがある。星よりもっと大きく見えて、お日様ほどじゃないけど、夜も少しだけ明るく照らしてくれるやつ」
「それだと眩しくないか?」
「日中みたいな感じじゃないよ。本当に薄っすらって感じ」
元の世界が懐かしくなった。別に月があろうがなかろうがそこまで生活に大きな影響は与えないが、いつも見ていたものがないというのは少し寂しいものだ。
「もしかしたら、ここから見える星のどっかに俺の住んでる星があって、いつか行き来できたりしちゃったりするかな?」
「そしたら、ケイの家族に俺も会えるな」
「里帰りもしやすくなるから、喧嘩したらどこでもドア使ってすぐ帰ろっと」
「……そんなことがあれば、あの扉は即廃棄だな」
「冗談だって。そもそも、俺使えねーし」
ケラケラと笑いながらアレクの肩に頭を凭れる。しばらく星を眺めながらどれが大きく見えるか、一番明るいのはどれかなど、とりとめもない話に花を咲かせていた。
湯の温度が低いとはいえ、ずっと入っていれば少し湯あたりしてくる。ジャグジーの縁に腰かけ、バタバタと足を動かした。普通の風呂なら行儀が悪いと怒られそうだが、今は貸し切りなのだから少しくらい羽目を外してもご愛敬だろう。
ひとしきりバタ足で遊んだ後、段々と悪戯心が湧いてくる。ジャグジーの中央付近まで行き、アレクを呼んだ。
「アレク、アレク、これ見て!」
手招きすれば、アレクが不思議そうに圭の傍へとやって来た。圭の手元付近を覗くように伝えれば、その言葉通り顔を近づけて見つめてくる。
「えいっ!」
手で水鉄炮を作り、アレクの顔へとかけた。前髪から顔全体に至るまで湯がかかる。
「……ケ~イ~?」
「あはははは、ひっかかった~」
半眼で笑いながらじりじりと詰め寄って来るアレクに、今度は湯を掬ってバシャバシャとかける。あっという間にアレクの全身は湯で濡れそぼった。
「こら、皇帝に悪さをするのはどこの刺客だ?」
「知らな~い」
笑いながらジャグジーの中を駆け回る。アレクが近づく度に湯をかけ続けていたが、プールほど広くないジャグジーではすぐに逃げ場などなくなり、アレクに捕まった。
すると、今度はアレクの方がお返しとばかりに圭の脇腹や脇の下などをくすぐってくる。
「あ~、無理~! ギブ! ギブ! アレク、俺ギブ~!!」
アレクの手を外そうとするも、力の差で全く外れない。バシャバシャと周囲の湯を叩いていたが、アレクが背後から抱きついてきたことによってくすぐり攻撃は終焉を迎えた。
ギュウゥと強く抱かれ、少し気恥ずかしくなる。魔法で他の人には見えていないとはいえ、圭からはデッキで寛ぐ乗客たちの姿が丸見えなのだ。水着を着てはいるが、周囲に人がいる状態の中、半裸で抱き合っているというのは羞恥を煽るのに十分だった。
「アレク、外、だから」
「だから?」
「な、なんかハズイじゃん」
「どうせ見えていない。それに、見えたとしても、俺は恥ずかしくない」
「ええ~」
ギュッと更に強く抱き締められる。それまで湯をかけて遊んでいた時の雰囲気とはガラリと変わる。
アレクの頬が圭の首筋に当てられた。そして、腰付近にはゴリッとした感触。こんな場所で盛っているアレクに少しばかり焦る。
「ここ、みんなが使う場所だから」
「関係ない。それなら、明日も立ち入り禁止としておくか」
「そういう問題じゃない~!」
アレクの腕の中で藻掻くも、拘束からは逃れられなかった。そうこうしている内に、腰に当たる屹立の硬さが増しているように感じてビクリとする。
「するなら部屋戻ろう? ここは、やだよ」
「なぜだ?」
「俺は露出狂じゃないの! それに、ジャグジー汚しちゃうのも恥ずかしいから!」
ここで致せば、誰かが掃除する羽目になる。ベッドならまだしも、公共の場所を淫液で汚すのはさすがに忍びない。
「俺だって、俺にしか見せないケイを衆目に晒したくなんかない。でも、一方で俺だけのケイだと自慢したくもなる」
「しなくて良いの! そういうのは!」
本気でアレクの腕から逃れようとしたが、またしても失敗した。先程はしゃいだ時の疲れと相まって脱力する。
そして、その隙をアレクは見逃さなかった。
「ケイ……」
耳元で色気のある低い声に囁かれる。この声に弱い圭はビクリと反応してしまう。
「ケイのこっちも期待しているようだが?」
「あっ」
アレクの手が圭の股間へと回される。中指の関節でスリッと擦られた場所は屹立しかけている下腹。アレクが腰へとグイグイ当ててくる勃起のせいで、圭自身も興奮してしまっていた。
布越しに指の関節を竿に沿って上下される。それだけで圭の屹立の角度は少し増した。
「んっ……」
声を漏らしてしまわぬよう、両手で口を塞いだ。圭たちの姿は魔法で周囲から見えなくなっているとは言っていたものの、音までは遮断されていない可能性がある。男の喘ぎ声など聞こえてきたら、何があったかと勘繰られてしまうかもしれない。
股間の愛撫はそのままに胸のピアスを引っ張られた。上と下から同時に訪れる快感に胸を反らした。
度重なる愛撫の末にすっかり性感帯となってしまった乳首。舐めたり撫でられたりと優しくされるのも好きだが、少し意地悪にされるのも嫌いではないから困ったものだ。チリチリと胸から上半身を犯す快楽の刺激。乳首が引っ張られる強さによって、さざ波のように押し引きしながら快感として圭の体を満たす。
「あっ」
水着越しに屹立し始めた愚息を握られた。掌の滑らかさと違う、布の少し荒い生地の感触に包まれる。そして、ゆっくりとそのまま小さく上下に擦られた。
「ふぅっ……ぅ」
ビクビクと体が震えてしまう。あられもない声を出してしまいそうで、口を押さえている手をグッと押し付けた。
アレクは何の遠慮もなしに圭の性器を擦り続ける。快楽に弱い体が陥落するのに時間はかからなかった。
「あれ、く……やっ……らめ、……ッ」
上を向いてアレクに懇願する。背後にピタリとくっついて圭を見下ろしているアレクがニンマリと笑んだ。
興奮したように瞳を輝かせながら。
「いくらでも感じれば良いし、イけば良い。どうせ俺しか見てないんだぞ?」
耳元で囁かれる低い悪魔の囁き。許されている気分になってしまう。フルフルと首を横に振った。
悪魔の甘言に惑わされてはならない。ここは公共の場所であり、圭たちの目の前には寛ぐ乗客たちの穏やかな顔が見えている。まさか、こんな人目のある場所でこんな醜態を晒しているなんて誰も思っていないだろう。
しかし、それがまた背徳感となって圭に刺激を与えていた。普段よりも気持ち良く感じてしまう。直に触られている訳でもない性器も、まだ遊ばれているだけの乳首も。直接的な刺激を受けていないのに、どんどん屹立の角度が増してくる。
「らめ……らめ、らよ……」
羞恥で顔が熱くなる。顔中赤面しているに違いない。ドクドクと心臓が激しく鼓動を打つ。
こんな恥ずかしいことをしているのに、興奮してしまっている。なんと淫らなんだろう。
そして、そう考えるだけで更に屹立の角度が増してしまう。何とも浅ましい体だ。
「ほら、もうここは窮屈だろう?」
言い訳などしようもない程に勃ち上がってしまった性器。圭の性器を擦って遊んでいたアレクの人差し指がツツツと性器の下から上へとなぞっていく。それだけでビクビクと快感を得てしまっていた。
「布越しなんかじゃなくて、もっと気持ち良くなりたくないか?」
吐息と共に耳の中へと入り込んでくる魔の言葉。首を横に振ってはいるものの、その魅惑の誘いに心が揺れる。
アレクが圭を抱きしめたままジャグジーの中へと腰を下ろした。肩まで湯に浸かる。
「風呂なら、裸になっても恥ずかしくなんかないだろ?」
全身を温かい湯に包まれ、頭の中がアレクの言葉を肯定したくなってしまう。
違うというのに。
本当は風呂なんかじゃなくて、日中は誰もが日の光の元で使える癒しのスポットなのに。
「それじゃあ、俺が先に脱ごうか。そうしたら、ケイ一人だけじゃない。一緒なら恥ずかしくないだろ?」
「あれく、まって……」
圭の言葉よりも先にアレクが背後で水着を脱いでいる気配がした。
「ひゃっ!」
その直後に押し当てられる剛直。ぬるぬるとした先走りの感触。それを圭の背中から腰にかけて塗り付けてくる。
「だめ、アレク……」
「ケイの肌は気持ちが良いな。こうやって擦ってるだけで出してしまいそうだ」
「絶対ダメ!!」
背後を振り向けば、至極楽しそうに圭を見てくるアレクの顔。満天の星空の元、優美に笑んでいた。
「じゃあ、どこか出しても湯を汚さないような場所が必要じゃないか?」
手早く水着を脱がされ、アレクの指が今度は圭の後孔を撫でた。暗に圭の中で出させろと言っていることを理解して赤面する。
「部屋まで待ってよ」
「ダメだ。そんな余裕はない」
「ひゃっ!」
浮力の力も借りてアレクは圭の体を軽々と持ち上げた。後孔に当てられる剛直の先端。フル勃起している屹立は挿入への準備万端だ。
アレクが腰を蠢かして圭の括約筋を擦って来る。アレクの力を持ってすれば小柄な圭の体など一気に奥まで貫けるというのに、それをしない。あくまで圭の許可を待っているのだ。
「だめだよ……人前、だし」
頑なに首を振り続ける。目の前に見える光景がこの淫行を許すはずがない。大人から子供まで楽しそうに飲み物片手にデッキで寛いでいる。その表情から、圭たちのように淫らな会話をしている人などいないだろう。
デッキを駆け回る楽しそうな子供の声が更に背徳感を煽る。
「じゃあ、ケイが見えなければ良いか?」
その言葉と共に圭の体が反転した。今度はアレクと向かい合う格好になる。
「ほら、これなら俺以外に誰も見えない」
チュッと軽い口づけを一つ。そして、それを契機に何度もキスを繰り返した。バードキスから、交わる時間がどんどんと長くなる。あっという間に舌を絡め合わせた濃厚なキスへと変化していた。
頭の中がホワホワしてくる。このキス以外何も考えられなくなる。
気持ち良い。もっと欲しい。ジュルジュルと音をさせてアレクの舌を吸った。最後に食べたフルーツの甘味がまだ少し残っているような気がする。もっと欲しくて激しくキスを求めた。
自分からアレクの首へと腕を回す。深い口づけでアレクを貪った。
「んっ」
括約筋が少しずつ拓かれていく感触がする。しかし、もうダメだと突っぱねる気持ちはほとんど失っていた。
直腸の奥が疼く。逞しい剛直を求める思いは圭の体も同じだった。
気持ち良くなりたい。アレクと一緒に。
「ふっ……ぅ……」
徐々に中へと押し込まれていく性器。湯も一緒に圭の中へと入り込んでくる。滅多に風呂で性交に及ぶことがないため、この感触にはほとんど免疫がない。
「んんっ」
ギュッと抱き締められる。アレクとゼロ距離で感じる肌の心地良さ。温かい湯に包まれるのも気持ち良いが、肌同士を重ね合わせる心地良さに比べれば雲泥の差だ。
拓かれていく直腸の襞も快感の波に攫われていた。剛直が通る時の摩擦も気持ち良いし、浮き出ている脈が擦れるのも堪らない。腰をくねらせて快感から逃れようとするも、ガッシリと抱き込まれている体は自由など利かない。
それに、挿入前から続いている口づけも圭の頭の中をトロトロと溶かしていた。
理性が失われる。このまぐわいのことだけしか考えられない。
気持ちの良いことを与えてくれるアレクだけが全て。それ以外、何もいらないし必要ない。
「んっ」
結腸まで埋められた。中で味わう圧迫感。アレクの腰に脚を絡ませる。体の中でアレクと触れていない場所があるのが許せなかった。体の奥深くまでアレクで占められているのだから。
「ここまでで良いか? それとも、もっと奥が欲しいか?」
僅かに離された唇から紡がれる低い囁き。
そんなの、答えなんて当然決まっている。
「もっと奥……いっぱいアレクくれなきゃやだよぉ」
ここまで来たら、もうどうだって良い。圭にとってはアレクだけが全て。常識なんて頭の片隅にすら存在しない。もっと気持ち良くしてほしくて堪らなかった。
尻をいきむ。そうすることでアレクが更に奥へと入りやすくなると分かっているから。
グッと押される結腸。何度か助走をつけるように突かれた後、グポリと一気にS状結腸の奥の壁まで満たされた。
「んんんっ!」
アレクの体をギュッと抱き込んだ。体の奥深くで脈打つ他者の息遣い。深く絡められた舌と共に、上も下もアレクに愛されていることを実感する。
「んっ、んっ、んんっ」
注挿が始まった。湯と一緒に入り込む性器。圭たちの周りの湯が行為と共に揺れる。
しかし、湯による抵抗か、はたまた体勢か。いつものような激しく貪られる程の勢いがない。
もっと欲しいのに。体の奥を無理矢理突かれる、あの悦楽が欲しくて堪らない。
無意識の内に抱き着いているアレクの腹筋に性器を擦り付けてしまう。もっと気持ち良くなりたい。もっと激しくされたい。
「……ッ!!」
突然、アレクが立ち上がった。アレクの体に全身で抱き着いていた圭も一緒に湯から上がる。
アレクはザバザバとジャグジーの端まで歩くと、縁に圭の体を横たわらせた。
覆い被さって来るアレクの欲に塗れた顔。そして、背後に背負っている満天の星空。
どちらも美しくて、胸がキュウと締め付けられる。
注挿が再開された。正常位で求められるのは好きだ。アレクに抱きつけるし、顔も見られる。
ただ、声が漏れてしまうのが怖くてまた強く口元を押さえた。それでも、喉が鳴ってしまう音だけは防ぎようがない。
耳に聞こえてくる乗客たちの声。それに混じる圭のくぐもった声。2つの対照的な声すら、今の圭にとっては興奮を煽るスパイスでしかない。
大きく開かされている股関節。行為に夢中になっているアレクの魔法が解けて、揺れる足先が誰かに見えてしまったらどうしよう。そう考えるだけで後孔が締まる。
「はっ、そんなに締め付けて……ケイは外でする方が好きか?」
涙目になりながら首を横に振った。
こんなことしちゃいけないのに。そんな常識が圭に与えてくれる悦楽でギュウギュウとアレクを締め付けてばかりいた。アレクの顔が快感に歪められる。クッと喉を鳴らしたかと思うと、最奥に湯とは違う激しい飛沫を感じた。
「……ッ!!」
熱い白濁のシャワーを浴びて、圭も吐精する。圭の腿を握るアレクの手に力が籠められる。そんな強く握られたら痕になってしまいそうだ。誰にも見せることなどないが。
何度かアレクがトントンと緩く奥をピストンした。圭の中の締め付けを感じながら全ての精を吐き出すためだ。射精の勢いが弱くなり、止まる。最奥に力の抜けたアレクの性器の感触をボンヤリとした頭で感じていた。
ゆっくりと抜き出される性器。それだけでもイって敏感になった体は反応してしまう。性器の全てが抜け出ると、ずっと太い物を咥え込んでいた後孔はぽっかりと口を開けたまま閉じられなくなっていた。
「あっ」
直腸を通る粘液の感触。湯の中に落としてしまってはまずいと、咄嗟に後孔を締め付けた。城の風呂であるならば、そこは圭とアレクしか使わない。最悪、湯を汚してしまったとしても全て抜いて使用人に掃除をさせれば良い。しかし、ジャグジーの湯はみんなが使う場所だ。そんな所に白い物が浮いていてはまずい。
「まだ余計なことを考えられる余裕があるか?」
「んっ!」
出して萎えた性器を指先で弾かれる。そんな僅かな刺激ですらも敏感になっている陰茎にはツラい。だらりとした性器を掴まれ、指先で亀頭付近を愛撫される。指の腹が亀頭の滑らかな皮膚を撫でる感触に身を捩った。
仮性包茎の皮を下に引っ張られる。桃色の亀頭全てが顔を出し、震えていた。
ぐるりとアレクの指先がカリ首を一周した。それだけでビクリと反応してしまう。普段、皮で守られている場所は耐性がない。アレクのように常にむき出しになっている性器とは違うのだ。僅かな刺激ですら敏感になる。
アレクの顔が圭の股間へと近づいていく。静止したいが、快感に抑えていた口からは手を離せない。
「……ッ!!」
ペロリと亀頭を舐められ、大きくのけ反った。刺激が強すぎる。そして、そのまま口を開かれ、亀頭だけを口内に導かれた。
「んんんんっ!」
温かい体温に包まれ、また射精欲が湧いてしまう。快楽に弱すぎる体が憎い。イかないようにと頭の中で念じ続ける。
アレクの舌は口内へと招き入れた圭の亀頭の皮膚を丹念に舐め上げた。ザラザラとした舌の表面の刺激がツラい。時折、鈴口へと細めた舌の先端が入り込む。亀頭以上に敏感な場所を愛撫され、涙が零れた。
鈴口の中など、ほぼ体内と同様だ。皮膚のように守ってくれるものもない。敏感な場所がむき出しで、体の中を舐められるのと同じようなものだ。
「んんん~……」
嫌々と首を横に振った。しかし、やめるどころかアレクは更に鈴口を責めてくる。舌先で届く範囲を何度も舐められる。射精以外の物が出て来てしまいそうで怖い。
「ッ!!」
口淫をされながら、後孔にも指が挿入り込んで来た。掻き出すように中で指を動かされる。これには堪らず声を上げた。
「らめっ! 中、こぼれ……るぅ」
「零してしまえ。俺のが中から出てくるケイは最高にそそられる」
性器を口から出し、圭の竿の側面を舐めながらアレクが意地悪気にほほ笑んだ。
確かに、アレクは圭の中から己の吐き出した白濁が出てくるのを見るのを好む。アレクへと散々穿たれた臀部を突き出し、吐き出すようにいきまされた仕置きの時などは本当に羞恥でいっぱいだった。好きな相手に尻を向け、恥ずかしい場所を晒しているだけでもいっぱいいっぱいなのに、そこから粗相のように精液を零させるのだ。アレクとの性交の場において男らしくなど振る舞えるはずもないが、さすがに中から出てくる物を見られるのはまだ吹っ切れない。
竿を下から上へと何度か舐め上げていた後、再び性器を咥えられた。今度は性器全てを飲み込まれる。アレクの頬が窄められ、そのまま上下に頭を動かされた。圭の性器にアレクの頬の内側の肉が触れ、勢い良く吸われる。性器へと訪れた快感に、咄嗟にまた掌で口を塞いだ。
「……ッ! ンんッ……ッ!」
一気に高まる射精欲を抑え込むのに必死だった。ジュルジュルと音をさせながら吸われる性器。時折、ゴクリとアレクの喉が鳴る。吸い出された先走りを飲み込まれた音だと気付き、圭は全身を真っ赤に染めた。
相変わらず、デッキの喧騒は聞こえてくる。そこに混じる淫靡な音たち。先ほど出したばかりだというのに、アレクの口内で滾ってしまっている性器。どれもが羞恥をかき立てる一因であり、興奮材料となっていた。
「……んっ!」
後孔内のアレクの指が前立腺を掠める。ビクリと反応した後、ゆっくりとその場所を擦り始めた。
「んんっ、うぅ、ンッ……」
体内と性器。二つの刺激がどんどん強くなっていく。更には空いている手で睾丸まで揉まれ始めたのだから我慢なんてきかなかった。
「んんんんんっ!!」
腰を反り、アレクの口内へと向けて射精する。その吐精を促すように前立腺をグリグリと強く押されるのだから堪らない。2回目の射精だというのに、いつも以上に出してしまった。
アレクは圭の出した精全てを飲み干していく。
「こんな場所だというのに、二度もイって。圭ははしたない子だな」
アレクがキスをしてくる。精液の苦味が口の中に広がった。
「も……だれの、せいだよ……」
ぺチンとアレクの頬を軽く叩く。楽しそうにしているアレクに、今度は圭の方からキスをする。もう終わりだと、終焉を意味する口づけを。
「背中……痛い」
正常位でした後、フェラまで流れでされたのだ。布団の上ならいざ知らず、デッキの板は硬く冷たい。せっかく温まった体も板の冷たさと夜風で少し冷えてしまった。
「ああ、それは悪かった」
アレクによって抱き上げられる。もう2度の逐情で体は倦怠感に塗れていた。
再び湯の中に入れてもらえるか、部屋へ戻るかの2択だと思っていたが、アレクの行動はその2つのどちらでもなかった。圭の体を反転させると、アレクへと背を向かせてジャグジーの縁に手を突かされる。尻を突き出す格好にされ、驚いた。
「アレク!? ……んっ」
後孔へと再び挿入される2本の指たち。まだ弄られるのだろうかと内心不安になるも、後孔は期待からかキュッと指を締め付けてしまう。
「ちゃんと全部かき出してやろうな」
親切のように言っているが、ただ自分がしたいだけだと分かっている。普段、アレクは中に出した精をかき出すなんてことはしない。普段から飲んでいる薬のお陰で腹を下すこともないし、圭の中に自分の放った物があることをアレクは好む。だから、今はただ圭を恥ずかしがらせたいだけなのだ。
2本の指が前立腺を挟み込む。擦ったり引っ張ったりしながら弄られ続け、ゾクゾクとした快感が背筋を駆け抜けた後、全身へと波及した。
「やぁ、らめ……やめへ、よ……ぉ」
体を支えるためにジャグジーの縁を掴んでいて、口を押えられない。前立腺のように体内でも屈指の性感帯を愛撫され、声を出さずになんていられなかった。
「――ひっ、! ……う゛あッ! ん、う……っ」
きつすぎる快感に嬌声が止まらない。こんな声が他の人に聞かれてしまったらどうしよう。こんな場所でまぐわう変態だと思われてしまう。
嫌なのに。興奮した体が再び性器の頭を擡げ始めていた。さっき放ったばかりなのに。しかも、1人だけ2度も。これでは、ただの好き者だ。
「やめへ……あえく……やぁ、よぉ……」
グスグスと涙混じりの声で懇願する。屹立した性器から先走りが零れてしまっているのが分かる。湯を汚す背徳感。こんなことして良いはずがないのに。体が言うことを聞いてくれない。
今度はグリグリと指2本で前立腺を強く押され始めた。押し込まれることで、睾丸からまた精を吐き出したくなる。
「……あ、…っぅあっ、ぅあッ……あああっ……」
短時間で3度の逐情は身体に堪える。一度ストップしてほしい。間を空けたらまたいくらでも望むままに付き合うから。……意識が保てる間中という制約はあるが。
前立腺ばかりを弄られ、奥がキュンキュンとわなないていた。そこも好きだが、もっと奥も可愛がれと主張している。
結腸の奥を勢いで突かれる刺激が欲しくて堪らない。キュウキュウと指を締め付けて乞うた。指の関節などがありありと分かり、赤面する。体内で感じる他者の体というのは、どんな時でも羞恥を誘う。
「そんなに締め付けて。もっと欲しいか?」
「ひぁっ!」
指先がトントンと前立腺を叩いた後、今度は2本の指でギュウと抓られた。強すぎる刺激でイきそうになる。咄嗟に性器を握って耐えた。こんな指での遊びで達していたら、体がもたない。
しかし、精を出さずともイける体は軽く甘イキしてしまった。体がビクビクと震える。頭の芯まで痺れるような絶頂。口からはボタボタと唾液が零れ、湯へと落ちていった。
「なんだ、空イキか? そんなことをしなくても、好きなだけイけば良い。いくらでもイかせてやるぞ?」
「や……あと、つら、く……なるぅ……」
グリグリと指で前立腺を押され続け、快感を反らそうと首を横に振った。甘イキしたことで、もっと奥が切なくなってしまった。結腸を掘られたくて仕方ない。でも、こんな所でまた挿入してほしいなんてはしたなくて言えない。
ギュッと性器を握る手に力を込めた。もう、これ以上湯を汚さないと決意を込めて。
しかし、そんな圭をアレクは気に入らなかったようだ。
「うぁっ!」
後孔から指が引き抜かれたかと思うと、手首を掴まれて後ろへと引かれた。胸を突き出す格好になる。
「もっとケイの可愛い声が聞きたいし、イく姿が見たい」
アレクの声が耳元で聞こえたかと思った次の瞬間、それまで散々弄られ続けた後孔に熱い切っ先の感触がした。
「ああっ」
一度剛直を飲み込んだ後孔は易々と二度目の挿入を受け入れる。あっという間に奥まで達し、満足感に性器が震えた。
「あっ、ああぅ、あっ」
注挿が始まった。ぱちゅぱちゅと圭たちの周りの湯が動きに合わせて水面を揺らす。
今度は口を塞げず、感じる声が漏れてしまう。恥ずかしいから我慢したいのに、イイところばかりを狙いすましたかのように突かれて我慢なんて到底できなかった。
「う、ああ、あ、ぅあッ……あああっ……」
甘ったるい自分の声が聞こえて恥ずかしい。そして、それ以上に奥が気持ち良すぎる。アレクの動きに翻弄される結腸も、擦られ続ける襞も。全部が全部快感に繋がっている。後ろから突かれる度に勃起した性器もフルフルと震えていた。
また絶頂が来てしまう。今度は白濁を防げない。嫌なのに、出したくて仕方なかった。
「ああああっ!」
ひと際奥まで貫かれ、絶頂の瞬間を迎えてしまった。3度目の逐情は少量の精液が放たれたに過ぎなかった。
それでも、湯を汚したことには変わりない。湯に浮かんでいる自分の出した白い塊を見て、まだ中にいるアレクを締め付けた。
「ああ、出してしまったなぁ」
嬉しそうな声が背後から聞こえてくる。脱力した体はアレクによって支えられていた。
まだ中にいるアレクの剛直は力を漲らせている。圭だけがイってしまった。快感に弱すぎる体が恥ずかしかった。
そして、まだ大きく口を開けたままになっている後孔。絶頂によってヒクヒクと蠢いているが、閉じられないまま中の性器の大きさを感じ取っていた。
アレクがジャグジーの縁に腰をかける。
「んんっ」
自重で奥までアレクを飲み込んだ。手首を離してもらえたものの、今度は腿の裏側を掴まれ、グイッと両脚を引き上げられた。
脚をV字の格好で持ち上げられ、下半身が衆目に晒される。
「やだっ、やだよぉ……」
恥ずかしくて堪らない。パタパタと膝から下を抗議の意味を含めて動かしていたが、最奥をズンッと勢いづけて貫かれ、快感に脚が伸びてしまう。
「んぉっ」
S状結腸の奥の壁に亀頭がめり込む感触。深いアクメに包まれ、またしても空イキしてしまった。
「まだイけるよな?」
遠慮のない突き上げが始まった。体を持たれ、激しい注挿に襲われる。
途中、潮を噴いてもアレクは止まらなかった。何度も絶頂を繰り返す。もう数えている余裕など微塵もなかった。
「っン……は、ぁっう、ああ、あ……」
敏感な直腸を高速で擦られ続ける。空イキしすぎた体がツラい。もう訳が分からなくなっていた。ここがどこかも曖昧で、穿たれる性器の気持ち良さしか脳が認識してくれない。
注挿の動きに合わせて揺れる足先。時折、空イキしてはピンと伸び、中にいるアレクを締め付ける。その度にアレクから耐えるようなくぐもった声が零れた。
「気持ち良いか? もっともっとイけば良い。ケイにとって、全てが俺だけになれ」
背後からギュウと抱き締められる。それでも器用に腰だけは振られていた。ズブズブと音をさせる結合部。腹の中がアレクでいっぱいになっていることが嬉しくて堪らない。
抱き締められるのも、挿入されるのも。全部が全部幸せ。アレクと一緒に溶けあえるようなこの時間が堪らない。
「くっぅ……」
ひと際低い呻くような声の後、最奥にかけられた熱い飛沫。ドクドクと脈打つ性器。圭も共に白濁を零すが、鈴口から数滴が零れる程度にしかならなかった。
しかし、体中で感じる絶頂は注挿時の空イキよりも深く、全身を痙攣させた。
アレクが圭に挿入した格好のままジャグジーの中へと身を沈めた。温かい湯に再び包まれる。
そして、キュッと抱き締められる逞しい腕にも安堵した。
アレクのことが好きすぎて、何をしても許してしまう自分がいる。今だって本当は怒らなきゃいけないのに、満たされ過ぎて幸福感でいっぱいだった。怒るなんて感情を今は持てない。
それよりも、もっと抱き締め合いながらキスをしたくて堪らなかった。唇が寂しい。両手が逞しい体を触れないのがもどかしい。
「ちゅう、させてよぉ」
圭のうなじにキスを繰り返していたアレクであったが、圭の泣き声交じりの懇願の声に動きを止める。
首だけで後ろをむいた格好で顎を取られ、端正な顔が近づいて来た。その行動に嫌々と首を横に振った。
「おれも、いっぱいあれくぎゅーってしたいぃ」
くしゃっと顔をしかめながら文句を言えば、まだ中にいるアレクの分身がドクリと脈打った。ムクムクと大きくなっていく性器を感じながら、体を回転させられる。
「んっ」
唇が寄せられた。熱い舌に夢中になる。深く唇を交わらせていると、ゆっくりとアレクの注挿が始まった。腰を蠢かせて歓待する。
アレクの背へと腕を回しながら、深い口づけと緩慢な注挿に酔いしれていた。
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