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【第2部 ヘルボルナ大陸】 第3章:入国編 第2話

 少し早い昼食を食べ終え、やっとアレクが動いてくれるようになり、ようやく移動への準備が整った。  船の中で警護などをしてくれていた従者たちとはこの街でお別れらしい。複数人を一気に転移で連れて行くのはアレクに負担がかかる。ヴァラーラの首都・バレモニザイトには既にユルゲンたちよりも先に到着している先発隊がいて、アレクたちの来訪に向けた準備を整えているらしい。  そんな大がかりなことになっているとは知らず、その事実を聞いた時には大いに驚いた。  つまり、この旅にはルレヴェックでの護衛と船の中の護衛、更にはバレモニザイトでの護衛と、3つのグループが旅の安全を守るために派遣されているのだ。  アレクがシルヴァリアの城から一気にバレモニザイトまで来ればそんな面倒なことはする必要がない。申し訳ないという思いもあるが、それは口にしないことにした。圭が気にしていると思われれば、せっかくこんな風に様々な旅の提案をしてくれたアレクたちの好意を台無しにしてしまう。  だから、感謝の念を抱くに留めることにした。その分だけ、みんなの期待に添えられる働きをしよう。きちんとシルヴァリアの皇后として振る舞えるよう、このひと月間で努力はした。それをしっかりと発揮できるようにするのが圭の使命だと自分に言い聞かせる。  アレクの腕の中に抱かれながら転移の赤い光に包まれる。船からここまで護衛してくれた従者たちに礼をして、手を振った。  船の中ではたくさん迷惑をかけてしまった覚えはある。しかし、誰一人として圭を責める者はいなかった。シルヴァリアの皇后に意見できる者などいないというのは分かっている。それは圭の立場が他の人たちよりも上だから。  でも、それは圭自身が偉いというわけではないと自覚している。ただ、アレクの伴侶になったから。すごいのはアレクであって、そこをはき違えないように気を付けねばならない。  まばゆい光に目を瞑る。瞼の裏まで強烈な紅い光の残光で眩しい。  やっとその光が和らいだのを感じて、ゆっくりと瞼を開いた。  目の前には豪奢な門。その奥に見えるのは中華風の巨大な城だ。  そして、門の前にいる1組の男女が圭たちへと頭を垂れていた。 「ようこそヴァラーラへお越しくださいました」  低く、落ち着いた優しい声。男性のその言葉と共に、2人は頭を上げた。  ハッとするほど美しい人たちだった。2人共にスラリとした体躯で背が高い。男性の方はアレクのような軍服を身に纏っていることから、武官なのだろう。隣の女性は生成りの良さそうなチャイナ服に似た服を身に着けている。  どちらも整った顔をしており、まるでモデルが立っているのかと思った。アレクを初めて見た時にもその美しさに大いに驚いたが、この2人も相当なレベルの容姿をしている。日本で暮らしていて、日常的に見るイケメンや美人と呼ばれる人たちとは圧倒的にレベルが違う。 「ケイ様?」  呼びかけられ、意識を戻した。あまりにも目の前の2人が美し過ぎて見惚れてしまっていた。 「あっ、その、す、すいませんっ!」  ガバリと頭を下げる。頬が紅潮する。心臓の動悸が速い。緊張して頭が上げられない。  アレクやユルゲンで美形は見慣れたと思っていた。しかし、そんなこともなかったようだ。慣れたのは普段から会う人たちだけであって、こんな風にまた新たな美形に出会えば、やっぱりドキドキする。 「そんなにかしこまらず、面を上げてくださいませ」  女性の柔らかく少し高めの声が聞こえてきて、今度は一気に頭を上げた。少し心配そうな顔をしている表情もまた美しい。カーッと顔中が赤面する。 「ケイ、そんな緊張するな」  横から降ってきた聞き慣れたアレクの声。見上げれば、少し面白くなさそうに不機嫌面を晒している。  その顔を見てホッとした。やはり慣れというのは大切だ。美形ではあるが、アレクの顔を見ると安心できる。  アレクの手が圭の腰に回された。引き寄せられる。 「今日からしばし世話になる。頼んだぞ、クリストフ、それにマリー」  目の前の二人が恭しく頭を垂れる。どうやらアレクはこの2人と知り合いのようだ。  2人に連れられ、城の中へと入って行く。映画でしか見たことないような豪奢な城。圭たちの住んでいる城もすごいとは思うが、こちらの城もまた別の荘厳さがある。  アレクたちのために用意された部屋へと連れて来られ、やっと二人きりになれた。ずっと緊張の糸が張り詰めていたため、皆がいなくなった瞬間、圭は盛大な溜め息を吐き出した。 「きっっっっっっっっっっっっっっっっんちょうしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」  ソファに座り、だらしなく手足を伸ばして弛緩させた。ドキドキと早鐘を鳴らし続けていた心臓は疲れて痛いくらいだ。 「よく頑張ったな」  隣に腰を下ろしたアレクが圭の頭を撫でてくる。フニャリと笑んでアレクの腕に腕を絡ませた。  人見知りなどがないため、知らない人と会うこと自体はそこまで緊張しない質だが、それは普通の人と会う時に限られる。  今日の圭は「シルヴァリアの皇后」なのだ。その責務を背負って来訪しているという重責は思っていたよりも大きかった。婚姻の儀でも多くの人に挨拶をされたが、凶悪なヒールとコルセット地獄でそこまで気が回らなかったというのもある。それに、あの日は皆、アレクに挨拶をしていたようなもので、圭自身はおまけのようなものだと思っていた。 「ケイはちゃんとできていた。自信を持って良い」  今度は頬を撫でられ、温かい手にうっとりする。  知らない土地で、知らない人ばかりで緊張しっぱなしの中、アレクだけが心の頼りだ。安堵に包まれ、心安らげる腕に自分からも頬擦りする。 「俺、歩いてる時、緊張して手と脚同じになっちゃってたかも」 「ははっ、それは見たかったな」  頬や鼻先などにキスをされ、表情筋が更に緩む。優しい口づけ。柔らかい唇の感触が更に緊張を和らげてくれる。  アレクの唇が圭の唇へと近づいていくのを見て、そっとアレクの頬を包み込んだ。 「口紅ついちゃうよ?」 「ははっ、キスしたとバレてしまうな」 「んっ」  重なる唇。潜り込んでくる舌。アレクが良いと言うのなら構わない。深く唇を交わし合う。  気持ちの良いキスに酔いながらアレクの首へと腕を回した。何度も角度を変えながら口づけを堪能する。口内へとアレクの唾液が送り込まれ、嚥下した。喉に落ちる彼の体液が嬉しくて堪らない。覆い被さってくる体に脚を絡ませる。キュッと腰をホールドすれば、硬くなった彼の下腹の感触。 「んっ、まだ、昼だからダメだよ?」 「ケイも硬くしているくせに」  アレクの言葉に顔を紅潮させる。その言葉通り、圭の下肢も高ぶりを覚えていた。  いたずら好きな彼の手がスカートの中へと潜り込む。下着の上から尻を撫でられ、ビクリと体を震わせた。 「あれ、く……夜に、しよ?」 「それまでケイは待てるか?」  何度も首肯を繰り返す。こんな場所でこんな時間にするような行為じゃない。  それなのに、下着の中に指が入り込み、指先が括約筋をなぞると期待してしまう。 「んっ、だめ、だよ……」 「でも、ケイも期待しているだろう?」 「んっ!」  指先が挿入り込んで来た。第一関節分のみでも、拡げられている括約筋が締め付けてしまう。これでは期待していると言われても何も反論できない。  徐々に奥へと進む指。前立腺付近で止まり、やんわりと擦る。 「んんっ……」 「ほら、気持ち良いだろう? もっとされたくないか?」  フルフルと首を横に振った。ダメなのに。求めてしまう体が口惜しい。 「んっ!」  中に挿入されているアレクの指先がコツコツと前立腺を叩いてきた。最奥がもっともっとと期待する。キュウと指を締め付けながらも必死に首を横に振り続けた。  体を反転させられる。ソファにしがみつきながら与えられる刺激に耐えていた。  城の座り慣れたソファと違う感触が圭に罪悪感を覚えさせる。高価そうというのは変わらないが、色も形も触り心地も何もかもが違う。シルヴァリアのソファは沈みこむほど柔らかいのに対し、こちらは弾力がある。それに、匂いも香のようなものが焚き染めてあるのか、独特な香りがする。 「んんぅ……」  指が2本に増やされた。それだけでも拡げられる面積が2倍になり、腰をくねらせて耐える。  遠慮なしに注挿される慣れた指。彼の指の関節も、剣かペンの握りすぎで圭よりも少し硬くなった指先も。全部を体が覚えている。 「今日は少し強情だな。いつもの褥ならもう強請ってくるのに」  それはあくまでベッドの中の話だ。こんないつ誰が来るかも分からない場所で乞うほど淫乱ではない。  それなのに、強請ってしまいそうな口が憎い。口元を両手で押さえ、我慢する。  スカートの裾を捲られた。臀部が露わになる。他国の城の部屋の中で、まだ下着は身に着けているものの、尻を丸出しにしている恥ずかしい格好に羞恥心でいっぱいになる。 「やっ、あれく……んんっ!」  下着のクロッチ部分を指でずらされ、後孔がむき出しになってしまう。そこに息を感じてキュッと括約筋を締め付けた。 「ああっ!」  挿入り込んでくる熱い舌。弾力のある肉が唾液と共に直腸を舐める。 「ひっ、ぁっ……」  ビクビクと体が震えてしまう。敏感な襞を舐められるのは気持ちが良い。  アレクの舌は入口付近の柔肉をグルリと舐めた後、ツポツポと出し入れを始めた。それがまた良すぎる。軟体動物のような舌。性器の注挿とは違う良さを持っている。性器のピストン運動は有無を言わせずに中を押し広げる男根の硬さが特徴的だが、舌の注挿はその柔らかさにある。性器の場合は直腸の襞をゴリゴリと擦り潰すような感触だが、舌の場合は撫でられるような優しさで愛撫する。両方共にどちらも良さがあり、甲乙を付けるようなものではない。 「んっ……んんっ……」  息が荒くなってしまう。後孔から聞こえてくるジュプジュプという恥ずかしい注挿に伴う水音。耳でも犯されている気分になってくる。  もう、ここまできたらやらずに終わるなんて選択肢は到底ありえない。高ぶらされた体は出さずに収められないのだ。 「あれ……くぅ……」  媚びた声が出てしまう。恥ずかしいが、それでも、このままでずっとなんて耐えられない。 「どうした?」  優しい声。こんな意地悪なことをしているのというのに。ずるいと思いながらも首だけで後ろを向いた。 「分かってるくせに……」 「ん? 何がだ?」  後孔から舌を抜き、蕾を指で開きながら括約筋を舐めているアレクは本当に楽しそうに顔を緩めていた。 「ンッ……」  下着の上から勃起した性器を指でなぞられる。直には触れないところもまた意地が悪い。指先で裏筋を何度も行き来され、先走りが下着を汚しているのが分かって恥ずかしかった。きっと今、下着に染みとなっていることだろう。 「いれ……てよぉ……」  圭の完敗だった。自分から強請り、性交を強要する言葉に赤面する。 「こんな所でこんな時間から? さすがに淫乱がすぎないか?」 「ひうっ!」  後孔全体を咥えられ、再び舌が挿れられた。激しく舌を動かされる。 「んひぃっ!」  体をくねらせて刺激に耐えた。今度は注挿される動きではなく、深く差し込み、横へと暴れるような愛撫だった。更に、下着の上から性器を掴まれ、上下に擦られる。前後から来る強烈な刺激に弱い体が屈服する。 「あれく、お願いぃ! 入れて、ちんぽで中いっぱい擦ってよぉ!」 「まったく、ケイははしたない子だな」 「んああっ!」  腰を掴まれ、下着を着用したままクロッチを少し横にずらした状態で貫かれた。体を持ち上げられ、アレクがソファへと座る。 「んんんっ」  ズブズブと性器を飲み込む後孔。アレクの膝の上に座らせられたまま、大きく脚を開かされた。 「服に恥ずかしい染みが付いたら嫌だろう? ほら、スカートを持って?」  アレクの手に導かれるようにスカートの端を持つ。先走りで汚れないよう持たされているが、下着の中でもっこりと勃ち上がっている性器の形が分かって羞恥に頬を染める。 「あっ! ああっ!」  アレクが容赦なく下から突いてきた。最奥を穿たれ、背を反らす。開いた口から唾液が零れ、ワンピースの襟付近を汚してしまう。 「まったく、結局服を汚して。ケイは本当に我慢のできない子だな」 「んぅっ」  そんなことはないと文句を言おうにも、後ろを向かせられてキスで唇を塞がれる。 「んんーっ、んんぅ……ッ」  ガツガツと遠慮なしに掘られる結腸の壁が抜かれるのは時間の問題だった。アレクにとって、柔肉を貫くことなど容易である。キスに夢中になっている間にズボリと奥まで性器が挿入り込んできた。 「んんーッ!!」  ビクビクと体が跳ねた。その勢いに少し吐精してしまう。粘液でベトベトになった下着の中が気持ち悪い。 「イってしまったか。そんなに気持ち良かったか?」  コクコクと頷きながらも、互いの唇は触れ合わせたまま。乱れた呼吸でアレクの唇を求める。  体の奥も、口の中もアレクでいっぱいなのが嬉しくて堪らない。アレクの頬へと手を添え、むしゃぶりつくように唇を重ねた。 「んんーっ、んっんんんっ!」  下から突いて来るアレクの注挿も激しさを増す。イったばかりの敏感な場所を容赦なく擦ってくる刺激に涙が溢れた。  化粧が落ちてしまうとか気にする余裕なんてない。この快感の波に飲み込まれないよう意識を保つことだけで必死だった。 「腹の中、いっぱいにしてやろうな」  陶酔したようなアレクの言葉の後、S状結腸に突き立てられる剛直。そして腹の奥で浴びる熱い飛沫。腹の中がアレクの体液で満たされる心地良さ。同時に圭の性器からも2度目の白濁が放たれる。  ヌポリと力の抜けた性器が引き抜かれる。脱力した体をアレクに預けていると、体をソファへと横たえられた。 「これじゃあ、着替えなければならないな」  苦笑しながら圭の髪を撫でるアレクは全く悪びれていない。誰のせいだと苦言を呈そうとしたものの、吐精後の眠気に勝てず、うつらうつらとしていた内に意識が途切れていた。

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