5 / 9
俺の処女を奪った先輩のことが気になりすぎて病みそうです①
『あッ、ンんぅ…っ、あぁン、』
手の中のスマホが暗闇に光る。
画面の中で長い黒髪を揺らすAV女優は俺のタイプそのもので、その子が高く喘ぐ度に右手に力が入る。
「ん、っ、」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が部屋を埋める。ローションとオナホと俺のモノがぐちゃぐちゃに擦れて快感を生む音。
(あ、いい感じ。今日は大丈夫かも、)
わざとらしいくらい画面に全意識を集中させて、女性の一挙一動を見つめる。表情ひとつ見逃さないように。引き離されないように。
あれに、気付かないように、
『や、ッあぁん!だめっ、やぁッ、っ…ンンっ!』
多分ラストスパート。画面の中の女性はバックでガンガンに突かれていて、それをハメ撮りの形で映すカメラワーク。華奢で色白な背中が激しく揺れて、俺の右手のスピードも上がって、
そこで気付いてしまう。俺の視線の先は画面の下の方、チラチラとわずかに映るものに向かっていること。女性のソコに激しく抜き差しを繰り返す男優のソレ。
気付いたら、ソレからもう目が離せなくて、
『まひろ、』
「ッ!あっ、ンンっやあぁ、」
だめ、だめ。
頭では分かっているのに手はもう止まらない。今日もオナネタの役割を果たせず用済みになったスマホの画面を切って、真っ暗になった部屋の中でひたすらオナホを上下に動かす。目を閉じればアキさんの顔が簡単に浮かぶ。1週間前に俺を抱いた職場の先輩。
「ンンっ、…っ、アキさんっんあッ…きもちっ、だめえ……ッ」
ぐちゅぐちゅ、エロい音。この1週間、毎晩聞いてる音。アキさんに抱かれてから性欲が馬鹿になったみたいに毎日オナってる。でも、毎日足りなくて、
ジンジンと疼く秘部に手を伸ばして入り口を指でなぞる。
「んッ、はぁッ、ここ、っここがいい……ッ」
男であるアキさんに抱かれた後からオナニーのネタもアキさんになり、さらに後ろまで弄るようになった。あの甘い快楽を何度も何度も思い出して、道を踏み外している自覚がある。きっともう戻れなくなるほどに。
「ッ……あ、アっん…!」
ゆっくり指を飲み込んでいくソコ。中は熱くてギチギチに狭くて、最初は恐る恐る動かしていた指が気付けば必死でイイ所を探していた。
でも足りない、足りない。太さも長さも動きも。全然満足出来ないのに射精感だけ勝手に湧き上がってくる。
「あッ、ンン、ッ…んあァっ、あッ!イくッ…ぁあっ!ンッ……」
ぐちゅぐちゅ。今度の音はオナホの中に放たれた精液とローションが混ざり合う音。これもこの1週間毎日聞いている音。肩で息をしながら閉じた視界の中で浮かぶのは、やっぱりアキさんの整った美しい顔だった。
***
「お疲れ様でーす」
「まひろお疲れ。あ、悪いんだけどこれ中にいるアキに渡しといて」
「え!?今アキさん来てるの!?」
「うん、いるけど……お前ら仲良かったっけ?」
本日1件目の仕事を終えて職場に戻ってきたところに思わぬ朗報。まだ話している途中のスタッフからアキさんへの伝言らしい付箋を奪い取り、待機所のドアを勢いよく開けた。
「まひろじゃん。おはよ」
「アキさん……!お、おはようございますっ!」
相変わらず限界突破した最高のビジュを向けられ、頬が赤くなるのが自分でも分かった。
うちの店のNo.1のアキさんは多忙に多忙を極めていて待機所で出くわすことがほぼない。だからあの日から顔を合わせることがなくて、俺はこの時を待ちわびていた。
だって俺はあの日からアキさんが忘れられなくて、毎日毎日、
「アキさんあの、えっと、」
「それ俺に伝言?ありがとね」
「え……あ、はいっ、」
何事もないように社交辞令のような冷たい笑顔を向けながら、俺の手からスタッフの付箋を抜き取ったアキさん。もう用済みとでも言うように完全に背を向けられ、心の中の何かが急速に萎んでいく。
「えっと、あの、アキさん……」
「俺もう出るからまたね」
「あ……え、」
パタン、
静かに閉まるドアを呆然と見つめる。
普通だった。むしろ冷たい?俺なんか顔真っ赤なのに。毎日アキさんで抜いてんのに。そんな、何も無かったみたいに。てか無かったことにされてる?意識してんの、俺だけなの?
「まひろ車出すぞ~。次のスケジュールちゃんと覚えてる?」
「……14時から、新規120分…」
「お、やるじゃん。もう新人卒業だな。準備したら車乗っといて~」
ひらひらと手を振って去っていくスタッフの背中を見送りながら、冷たくなった胸の辺りをぎゅっと押さえた。
病んでる場合じゃない。仕事はちゃんとしないと。
てかなんで俺病んでんの。アキさんになんて言われたかったの。アキさんの何になろうとしてたの。一回抱かれたくらいで舞い上がって、
「……もーやめ。考えない」
多分この感情は、気付いちゃいけないから。
ともだちにシェアしよう!

