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俺の処女を奪った先輩のことが気になりすぎて病みそうです②

 薄暗いホテルの廊下。指定された部屋の前でもう一度仕事用のスマホをチェックする。  指名をくれたのは20代前半の新規のお客様。2日前に急に予約が入ったのでメールでのやり取りがほぼ出来ず、どんな女性なのかイメージがしっかり掴めないまま当日を迎えてしまった。  見知らぬ他人、という存在に多少の不安はあるがそれは相手も同じ。それどころか初めて利用するお客様であればこの扉の向こうで俺以上の不安を抱えているはず。その不安を短時間で打ち消して接客と施術で満足してもらうのが俺の仕事。  でも、 (帰りたいな……、)  ここに来る前に待機所で素っ気ない再会を果たしたアキさんのことを考えてまた胸が苦しくなる。  だめ、今は仕事中。  気を引き締めてドア横のインターホンを鳴らせば、出迎えてくれたのは見覚えのある人物だった。 「ま、まひろ君」 「えっ……森本さん?あれ、え?え?」 「と、とりあえず入って」  目の前の青年は前に俺を指名してくれた森本さん。女性向け風俗であるうちの店を、女性の知人を使って出禁覚悟で利用してくれた唯一の男性客。俺のことを推してくれている人。忘れる訳がない。 「また前と同じ方法で予約したんだ……前とは別の知り合いに頼んで…ごめん……」 「新規予約だったから分かんなかったよ。なんだー、前と同じ情報で予約してくれたら森本さんってすぐ分かって気が楽だったのに」 「だって、俺、出禁になってると思って……」 「なんで?する訳ないじゃん」  新規客とリピーター客だとこちらの気の構え方もかなり違う。予約が入った時からなんとなくまとわりついていた緊張が一瞬で解けて、職場への連絡をするために軽い手つきで仕事用のスマホを取り出す。  が、それを見た森本さんの肩がびくりと揺れた。どうやら緊張が解けたのは俺だけだったらしい。  怯えるようにこちらを伺う森本さんに向けて慌ててひらひらとスマホを振る。 「あ、これ違う違う。無事に合流して今から施術スタートします、っていう連絡を毎回店に送らなきゃいけないの。別に森本さんのことチクる訳じゃないよ」 「また、見逃してくれるの……?」 「見逃すも何も……俺は別に悪いことだと思ってないよ。前回のことも店に言ってないしこれからも言うつもりないし。また指名してくれたの嬉しい!」  俺はもう森本さんの違反行為を容認しているが、考えてみれば彼は危険な橋を渡っている訳で。今回だって出禁になっていると思って前回とは別の名前から予約を入れた。今の彼にはきっと不安しかないんだ。  新規客だと思って身構えていた所に見知った人物が現れたことで完全に気が抜けていた。頭の隅にチラつくアキさんへの気持ちも一旦忘れて、仕事のスイッチをしっかり入れる。 「ねぇ、今日も森本さんのここ、可愛がっていい……?」 「っ、」 「ほら、シャワー行こ?」  すでに立ち上がりかけているソコをそっと撫でて、真っ赤に俯く森本さんの手を取ってシャワールームに歩き出した。 *** 「っ、はあっ、まひろ君っんあァっ」 「森本さんのクリちゃんまだガチガチ。ねえ、きもちい?俺にシコシコされてきもちいの?」 「アっっ、んっきもちっ、ッ、アっ!っ、気持ちいっ」  ドロドロと溢れる先走りを指に絡めて森本さんの熱を扱く。もうすでに2回イかせているのにまだ元気そうで、横目で時計を確認しながら頭の中でシュミレーション。  いつも行っている女性への施術とはかけ離れているので時間の計算は完全に手探り。前回は俺が快楽に溺れてしまったことで延長ギリギリの慌ただしい時間配分になってしまった。せっかくまた勇気を出して予約してくれたんだから、今回はしっかり仕事に徹して満足させなきゃ。  それに、今は何かに集中したい。じゃなきゃ、 『まひろ、』 「っ、ン、」  あ、やばい、  頭に浮かんだアキさんの顔をすぐに振り払うがもう手遅れで、またいつもの馬鹿になった性欲が溢れ出す。突然むくむくと立ち上がったソレに森本さんも目を丸くした。 「んっあ、まひろ君、ンンっ興奮、してるの?」 「ッ、はあっごめ、ん、ッ」 「すご、おっきい…触っていい?触りたい」 「ンンっ、っアぁ、」  俺の返事を待つことなく伸ばされた指先が下着の中をソレをぎこちなく触る。もどかしい刺激に熱い息が漏れた。 「可愛い…まひろ君、俺といちゃいちゃして興奮してくれたんだ。可愛いっ」 「っ……」 「まひろ君っ、あッ……ん、キスしたい、ンんっ」  明らかに嬉しそうに声を弾ませた森本さん。罪悪感をごまかすように舌を絡め、頭の中をジワジワと埋め始めるあの整った顔立ちを必死でかき消す。  やばい、やばい、仕事中なのに。どうしよう、 「すご、はあっ、まひろ君のおち○ちんもうガチガチだよ?ここ、どうしてほしい?」 「ンっ、ッ…、はあっ、だめ、もりもとさん、だめッ…」 「駄目って顔してないよ、はあッ、まひろ君っ、まひろ君っ好きぃ…っ」  ぎこちない手つきで俺のを扱き始める森本さん。やばい、前と同じ。仕事中なのにリードを奪われてしまう。時間配分も考えなきゃ。駄目。頭が回らない。  溢れて止まらない性欲を必死に押さえながら何度も何度もキスをされて、そこで、ふと気付いた。 (俺……アキさんにキスされてない、) 「……森本さん、そと、」 「はあっ、なに?どうしたの?」 「仕事抜きで、外で会いたい……っ、俺のこと好きなら、いいでしょ……っ?」 「えっ……」  目を見開く森本さんに抱きついた。ズキズキと痛む胸をごまかすように強く、強く。  アキさんに一度抱かれただけで、何を勘違いしてんの俺は。アキさんは俺にキスしなかった。アキさんは俺のこと好きじゃない。意識すらされてない。気まぐれで俺を抱いただけ。  なのに俺はなんでここまで必死で、アキさんのことばっか考えて、くるしくて、馬鹿みたい。馬鹿みたい。  そっか俺、アキさんのこと好きになっちゃったんだ、

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