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第18話

 ぐずぐずと泣きながら薔太は腕の中から懸命に手を伸ばし、紫央の髪に手を差し入れ、ぐいっと顔を近づけた。まだ胸はしゃくりあげたままだ。だが今伝えなければ、愛おしい男を手に入れるためならばなりふりなど構っている場合ではない。 「しぃちゃん、大好き。俺が、なにものでも、しぃちゃんの事好きな気持ちは本当だから。何があっても、傍に居るって、ちゃんと決めたから」 「薔太」 「好き。好きだ。俺を、抱いて。しぃちゃん」  誘うように中指の先で紫央のはっきりとした形の唇をなぞったら、紫央はぐっと薔太の頭を掻き抱いて唇を重ねてきた。薔太も唇を開いて、たどたどしく舌を絡ませる。じゅっと先を吸われただけで、また身体が熱くなる。もじもじと足を動かしたあと、薔太は大胆に動き始めた。足を崩し、胡坐をかいた紫央の膝の上に向かい合って、足を大きく開いてどかりと座った。そのまま体重をかけて腹筋で寝転ぶのは耐えている紫央に絡みつきながら、自らも激しく紫央の唇を貪った。見よう見まねで紫央の施された口付けを真似ただけの稚拙さだが、能動的に動くさまが紫央には嬉しく感じたのだろう。腹に擦れる紫央の陽物がさらに天を衝くように立ちあがるのを感じて薔太は増々興奮を高めた。 (俺のキスで、しぃちゃん感じてくれてるのかな)  そんな風に小悪魔めいた考えが頭を過り、自分の中にこんなにも熱い衝動が隠れていたことにも驚いた。  唇を離すが名残惜しく、紫央の唇についた雫を子猫の様にぺろぺろと舐めとっていたら、息を乱した紫央が愛しさに溢れた声で尋ねてきた。 「……薔太も俺を好いてくれていると、思っていいんだな?」  紫央がこれほど感情を露わにした声を聞いたのは付き合いの長い薔太にとっても初めての事だった。初めて会った時など、人形のように見えて、この人は息を吸っているのか、ご飯を食べているのかと思うほどだった。  だから今、薔太のせいで心を乱す紫央をみて、嬉しくて堪らなかった。薔太は両手の平で涙を拭うとぴしゃりと自分の頬を張った。気合いを入れて、告白したいとすうっと息を吸う。紫央は驚いているようだったが構わない。彼の裸の胸は温かく、薔太はこれを失わなければ他に何もいらないと思った。 「しぃちゃん、愛してるよ。しぃちゃんが俺の甥っ子でも……。血が繋がってても構わない。だって俺にとってしぃちゃんはとっくに、この世でたった一人の家族だから。ここが駄目ならどこか別の場所だっていい。しぃちゃんの傍に居られるなら、俺、どこだっていいんだ」 「甥っ子?」 「だから……。俺をしぃちゃんのものにして下さい」 「薔太……」  潤んだ瞳で男の首に腕を投げかけ、薔太はコケティッシュな仕草で小首を傾げて紫央を誘惑する。紫央は一度息を飲み、魅入られたように無言で誓いの口付けをしてきた。  薔太はそれを目を瞑って受け、唇が離れると互いに見つめあって少しだけ微笑んだ。それから今度はゆっくりと二人で褥に寝そべった。  薔太は涙で睫毛の先を濡らしたまま悪戯っぽく指先を紫央のものに這わせた。やはり海の向こうの血が混じっているせいか幹といい張り出たエラといい、立派すぎて薔太は頬を染めてしげしげと見つめてしまった。 「しぃちゃんの、これ。俺の中、入るのかなあ。おっきいね」  だが目があった熱い吐息を漏らす紫央の視線が艶めかしすぎて、恥ずかしくてたまらなくなる。  枕元に転がっていた螺鈿の小箱が行灯の光をゆらりと反射する。紫央が再びそれを手に取って中から薔薇の香りが漂う蜜ろうのようなものを指先にたっぷりと塗りこめた。 「多分……、今日は入らないな」 「さっきはしようとしてたのに、入れてくれないの?」  薔太は再び仰向けに寝転ぶと、蝶が羽を広げるように、薔太は淫らに大きく足を広げて、自らの足を両手で掴んだ。 「ねえ、こうしていたら、入る?」 「っつ! 薔太、お前って子はっ!」  薔太の媚態に煽られた紫央だが薔太をごろりとうつ伏せに寝かせなおすとぐっと腰を立てさせた。まるで動物の交尾のような姿勢に薔太は艶めかしく「んっ」と吐息を漏らしてから兆した自らを布団にこすり付けた。  その仕草にすぐに気づいた紫央の大きな掌が再び前を扱き始めた。 「薔太、足を閉じて」  何をしようとしているのかはいまいち分からないが前を弄られた薔太は再び速いピッチで喘ぎながらも指示に従った。 「あ、あうっつ!」  突然熱く硬いもので自らのものが擦り上げられた。それが紫央の陽物であることに気付いた時には気が狂わんばかりの快感に布団に顔をこすり付けながら薔太は乱れ、喘ぎ続けた。 「一緒に……、いきたい」  すでに前から雫を垂らしていた薔太のものは、ぐっと紫央の掌の中に戒められ、すごい勢いで紫央が腰を動かしてきた。 「薔太! 薔太」

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