13 / 14
第13話 晴美side目に余る
そうかなと思っていたけれど、やっぱりちゃんとした様だった。俺は締まりのない顔をしているタカにジト目を投げかけて言った。
「お前、ちょっと顔がヤバい事になってるぞ。」
すると俺の皮肉などものともせずに、タカはますますだらし無い顔でウットリと思い出す様に言った。
「だってさぁ、めちゃくちゃ可愛いんだぜ?奏って本当は妖精なんじゃないか?あのエクボでにっこり微笑まれたら、胸がズキューンってさ、ついでに身体が燃える様に熱くなっちゃって。俺マジでヤバいんだ。」
俺は呆れて、タカに言った。
「確かに蒼井は独特の魅力があるけどさ、それにしたって最近のお前はカリスマオーラがちょっと無さすぎるんだよ。せめてそのバカ面は二人だけの時にしておけよ。執行部運営に支障が出るんだからさ。生徒会長は少し強面でなんぼだろ?」
丁度そこに執行部のうるさ方の会計ときわモノの広報が入室して来た。二人は俺たちを見て、それから部屋の中を見回した。
「あれ?かなでちゃんは?」
途端にタカが目を尖らせて言った。
「は?誰、かなでちゃんて。」
目を丸くした会計の尾道がタカの迫力に押されて答えた。
「…え。蒼井の事だけど。会長が最近かなで、かなで言うから、皆でそう呼ぶ事にしたのかと思ったんだけど。違うの?それよりかなでちゃんは何処なの?いつも一番に来てるのに、今日休み?」
すると渋々タカがブツブツ独り言を言いながら来るはずだと首を振った。
『俺そんなにかなでって言ってたかな。ヤバいな。怒られるな…。いや、怒ると可愛いんだよな。…ふふ。』
広報の渡里が面白がった顔を俺に向けて来たけど、俺だってこんなタカにはお手上げだ。
「まぁ、二人は勘がいいからご存知だと思うけど、付き合いたての遅く来た初恋でどピンクな会長は、暫くこんな感じだからウザいと思うけど慣れてくれ。」
尾道は笑いを堪えながら言った。
「マジで。あーあ、かなでちゃんは俺のいやしだったのにさ。しかしあんなに純粋な子、会長に押し切られたんじゃないの?大丈夫?」
丁度その時、蒼井が部屋に顔を見せた。
「すみません、今日日直だったもんですから、遅くなって。」
同級生なのにいまだに丁寧な物言いなのが蒼井らしいと言うか。すると渡里がスルッと蒼井の側に寄って肩を組んで言った。
「かなでちゃん、会長と付き合ってるんだって?大丈夫?あの人変態っぽいけど。」
途端に顔を赤くして恥ずかし気に俯いた蒼井は顔を片手で押さえて言った。
「…大丈夫です。会長は優しいです。皆さん何で知ってるんですか?」
するとタカが渡里の手を払い落として蒼井を腕の中に引き込みながら言った。
「こら!気安く触るな。これは俺の。」
俺は頭痛を感じながら、皆に言った。
「会長のIQが幼稚園児レベルになるんだ。恋って恐ろしいよな。はい、さっさと議題やっちゃおうぜ。蒼井、例の資料皆に配ってくれ。ほら、タカも仕事してくれよ。早く終わったら、好きにいちゃついて良いからさ。」
途端に大真面目で仕切り始めたタカの豹変ぶりに俺たちは笑いを堪えて顔を合わせた。蒼井だけは赤い顔をしながらウットリとタカを見つめていた。はぁ、蒼井も仕事しろって。
二人が先に執行部室を出ていくのを見送りながら、俺たち三人は顔を見合わせて笑った。
「本当別人なんだけど会長。いつもムスッとしてさ、とりつく島がない雰囲気だったよね?それがアレなの?全然慣れないよ。でも会長っていつから男に鞍替えしたの?確かにかなでちゃんは可愛いけどさ、その前に性別男だろう?」
そう面白そうに言う尾道に渡里は言った。
「確かにタカって女子とも付き合ってたな。でもほとんど続かなかったよ。俺付き合ってる女子に聞いた事あったんだ。何で別れたかって。そうしたらなんて言ったと思う?」
俺は勿体ぶった渡里に注目して続きを待った。
「エッチが好きじゃないみたいって。要は、あいつまぐわうのが好きじゃなかったみたいね。でもあの感じから言ったら、女子はダメでも男はイケた感じだよなぁ。自分じゃ分からないものかね?」
俺は思わず言った。
「性別じゃないんじゃない?好きな相手だからなんだろ?あー、青春してるなぁ、会長と蒼井。なんか羨ましいぞ!」
すると海里と尾道も顔を見合わせて笑った。
「確かに!初恋がエロいって最高だよな。でも青春が羨ましいとか、安田の口から聞こえてくるとか怖すぎる。お前食い散らかし系の癖に。」
そう当て擦りを言われて、俺は苦笑いして言った。
「いやいや、俺も結構恋には悩み深き男なんだって。」
そう言って俺たちはバカみたいに笑ったんだ。
ともだちにシェアしよう!

