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好きで自販機よりでかいわけじゃない。 1
「いい、もっとっ…!もっとしてぇ」
“いじめ甲斐がある”だのと言っていたくせに。
あんなに高圧的だった相手が今はもうドロドロになっていて
橋名はまたもや上の空でイマイチ満たされない自分の中の何かを置き去りに
相手の体内を掻き回して、その熱が終わる事だけを考えていた。
自分の下で乱れている存在は、最初は割と可愛く見えていたのに
今はなんだか、顔もよく認識できない。
「……もうイッていいっすか…」
「いいよイこ、一緒にイこ…っ!」
快楽に囚われたその存在に適当な許可を取り、上の空のまま熱を発散すると
なんとなく込み上がってくる虚しさに、ついため息が出てしまう。
「Good…いい、子だね……」
息も絶え絶えに相手からお褒めの言葉を預かり、橋名は苦笑しながら
義務のように相手に頭を撫でられるべく顔を近付けた。
男女に加え、ダイナミクスという性がある。
ダイナミクスとは支配されたいという欲求を持つSubと支配したいという欲求を持つDomの2種類で、
その欲求が満たされなければ日常生活に支障をきたしてしまうという厄介な性質だ。
ダイナミクスを持たない性、ニュートラルの人口が多いために
前時代ではダイナミクスは差別的な扱いも受けていたらしいが
今のこの世の中では最早当たり前の存在である。
欲求解消のための風俗的な施設はもちろん、専用のマッチングアプリなんてのもあるし
昔の人々に比べれば随分と生きやすい世の中であることには間違い無いのだが…。
「はぁぁ……」
橋名は昨晩のことを思い出し、改めて深いため息を零した。
男性に加えSubという性を持って産まれついた橋名は
なかなか理想のパートナーに会えず25年間特定の相手と長続きした試しが無かった。
「何?またダメだったん?」
向かいで同期の有澤が面白そうに口元に笑みを浮かべ身を乗り出してくる。
橋名は返事をする代わりにもう一度ため息を零した。
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