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好きで自販機よりでかいわけじゃない。 2
「また命令しろオラァ!ってゴイゴイ行ったんしょ」
「そんなことしないって…逆にもっとしてってぐいぐい来られてなんか萎えたというか」
「激ヤバなこと言ってる」
有澤はダイナミクスを持たないニュートラルなためか、羨ましいのなんの、と口を尖らせている。
こっちだって好きでこうなっているわけじゃないのだが、言ってもしょうがないので
手元のちまちました作業で気を紛らわす事にした。
「俺はもっとこうなんていうか、尽くしたいというか…
可愛く意地悪されたいというか…」
「いや…まあわからんでもないけど……」
中小企業の企画部に勤め、ほとんど会社と家の往復生活だ。
自然発生的な出会いなど期待できず、マッチングアプリやらで相手を探す日々だが、いまいちピンとくる相手に出会えていない橋名だった。
「まぁはっしーは見た目いかついからなぁ
その男らしさに惹かれて寄って来られるわけじゃん」
「好きでデカいわけじゃないんだけど」
橋名は昔から体格も良く目付きも悪く、歩いているだけでちょっとやんちゃな連中に絡まれることはしょっちゅうであった。
見た目のせいで勘違いされてSubに言い寄られることもあるし、
君みたいなのはちょっととDomに苦笑されることも屡々だった。
少しうまくいっても、なかなか橋名の欲求が満たされることはなく、
もしかすると自分はSubとして絶望的なのかもしれないと思う日々だ。
「こっちから言わせれば羨ましいことこの上なしですがね」
世の中の需要と供給のバランスは一体どうなっているというのだろう。
ダイナミクスは欲求が満たされなければ、体調不良や心を病んでしまうこともある。
我慢すれば済む話でもなく、長期間相手が現れなければ抑制剤を飲まなければならなかったりもする。
全く厄介な性質に生まれついてしまったものだ、と日頃の欲求不満も相まってますます理不尽を感じてしまう橋名だった。
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