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ちゃんと捕まえとけ? 6
送られてきていた、よろしくお願いします、の言葉を見ては
沙凪は苦笑し、携帯端末を顎の下にくっつけて、うーん、と唸った。
花の企画部の彼は体格も良くて、そこそこにキリッとした顔をしているし
割と社内では目立っているような存在ゆえに
自分のような日陰を猫背で歩いていく人間とは無縁だと思っていたのだが。
確かに時々辛そうにしているのを見かけてはいたものの、
まさか昨日のようなことになってしまうとは。
自分も少々飢えていたがゆえに、不用意だったかもしれない。
沙凪は仕方なく、謎のゆるい猫がだらりと寝転がっているイラストのスタンプを返事しておいた。
欲求が満たされなければ体調に異常が来してしまうような最悪の性質、
こんなのがなければと嘆く事すら面倒になってしまっているほどだ。
とはいえ割と快楽主義を自覚している沙凪は
まあなるようになるか〜、と思ってしまっていて
最悪なのは性質じゃなくて性格なんだよな多分、などと自分を傷付けてため息を零すのだった。
携帯端末がメッセージの受信を知らせてきて、早速橋名から
“今度の休みにどこか出かけませんか”といった旨の内容が送られてきていた。
「うーん…この必死な感じ、可愛いんだよなぁ…」
最悪な性格で彼のことを見てしまっている自分には本当に呆れるのだけれど。
今までのことなどをぐるぐると考えてみたりもするのだが
すぐに何もかも面倒になってしまい
まあ一回くらいならいいか。どうせ暇だし、と楽観的に観測し了承の返事を返してしまうのだった。
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