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本気くさいぞ。 2

「………もう…帰ったほうがいいかな…」 橋名は駅の柱の前に遂に座り込んでしまっていたのだが、 約束の時間から30分過ぎても彼は現れず、これは完全に弄ばれたと思わざるを得ない。 やっぱり運命なんていうのは幻想なのかもしれない。 割と悲しくなって思わず視界が滲んでしまい、橋名は慌てて自分の顔を覆って収めようとした。 「橋名くん」 不意に声が降ってきて、橋名は顔をあげる。 分厚い眼鏡をかけた男がこちらを見下ろしていて、橋名の顔を見るとボサボサの頭を掻きながら苦笑した。 「……いやー、ごめんごめん。めっちゃ寝坊した」 彼は橋名の前にしゃがみ込むと、顔を近付けてくる。 「もう帰っちゃったかもと思ったけど、待っててくれたんだ?」 沙凪は眼鏡の向こうの瞳をキラキラさせながら、どこか申し訳なさそうに首を傾けた。 「サナギさん………」 寝坊かよ、という怒りと来てくれた、という喜びと、先程までの悲しさと。 橋名は感情がぐちゃぐちゃになっていて、彼の顔を見ながらついついダラダラと涙を溢れさせてしまって 急に泣き出す大男に沙凪は困ったように笑いながら橋名の頭を抱きしめるようにした。 「わーんもう、ごめん、ほんっとにごめん!」 「や…すみませ、俺…」 「橋名くんはなんも悪くない!100俺が悪いって」 彼にわしゃわしゃと頭を撫でられて、 橋名は泣き止まなきゃと必死に自分に言い聞かせる。 なんでこの人の前ではこんなに自分が自分で無くなっちゃうんだろう、と どうにか努力して涙を引っ込めると、立ち上がり 周りの視線に橋名は逃げるように彼の腕を引っ張って歩き出した。 「すみません!あんな人前で…っ」 早足に歩きながらも今更恥ずかしさが込み上げてくる。 「それはいいんだけどさ…」 大人しく腕を引っ張られていた沙凪はそれ以降何も言わなくなってしまった。
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