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本気くさいぞ。 3

彼を気まずくて振り返ることもできず黙々と歩いてしまい ある程度駅から離れるとようやくその手を離して橋名は振り返った。 橋名の歩幅に合わせて疲れたのか、沙凪の息は少し上がっている。 「サナギさん…」 「ん…はい」 「次から、時間遅れてたら、連絡してもいいですか… 心配になるので…」 スーツ姿ではない彼は余計にふらーっとしたような独特なゆるい雰囲気が見えて 確かに寝坊しそうな人間に見えたし、髪の毛のボサボサ感も本当に慌てて出てきたんだろうなというのが伺えて怒る気はもう無かった。 「次があるんだ」 沙凪はこちらに近寄ってきて、橋名を見上げてくる。 「鬼電しなさい?」 彼はそう言って眉を下げ微笑んだ。 橋名は今までに抱いたことのないような感情に苛まれて、眉根を寄せる。 「てか橋名くん、普通はさ、お前が連絡しろよって怒るところなんだけど」 「え?ああ…そっか…」 「そっかじゃないよもー。 まあ怒られたとて多分俺忘れちゃうんだけどさ…」 「……じゃあモーニングコールします…」 「あははは、是非そーして」 沙凪は何故かケラケラと笑っていて、橋名は不可解な感情に翻弄されながら 彼のその表情を見つめていた。
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