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本気くさいぞ。 4
沙凪に、お詫びになんでも奢ると言われ、そこそこ有名な人気店のハンバーグランチを奢ってもらうことになった。
向かい合って座り、改めて彼を観察すると
シンプルな白シャツ、ちょっとダボっとしたグレーのカーディガンに黒いパンツといったラフな格好で
ボサボサの髪を撫で付けるように弄る姿はとても年上とは思えない感じだった。
彼はそこそこの賑わいを見せる店内を眺めては、人気みたいだねえ、と呟いている。
沙凪はそのちょっと長めの黒い髪を耳にかけて、水の入ったコップに口を付けた。
普段は髪に隠れている耳には、銀色に光るピアスが幾つも付いている。
水を飲み終わると、どこか気怠げに頬杖をつく姿に謎に色気を感じて少々どきっとしてしまう。
「…ん?なに?」
「あ、いや…すみません、つい見ちゃって…」
「んー?あーこれ?」
沙凪は自分の耳に触れながら苦笑した。
確かに気にならないといえば嘘になるが、普通に彼が美しすぎてみているだけだった橋名は
どういう顔をしていいかわからず自分も水の入ったコップを持ち上げた。
「会社では透明のしてるんだー。意外とわからないでしょー?」
彼はそう言って、へへ、と何故か得意げに笑っている。
「……なんか、サナギさんに似合ってると思いますよ」
「えーまじ?
そんな人と思わなかった!って言われるかもーってちょっと構えてた」
「そんなことは…」
「まあ若い子はこんなの別に驚かんよねえ」
「若い子って…そんなに変わらないじゃないですか?」
「えーでも橋名くん24とかそこら辺でしょ?」
「25ですね…」
「でしょ?俺もう31だよー?
もう誤魔化せないくらいにはおじさんじゃない?」
彼の雰囲気にそうさせられていたのだが、思っていたよりも年上で橋名は内心驚きながらも
こんな可愛い31歳…、と何故かまた好感度が上がってしまうのだった。
「橋名くんみたいな格好いい子と歩くには些か役不足ですかな」
彼はそう言いながら、両手の上に顎を乗せてにやっと笑う。
この人はわかってやっているんだろうか。
橋名はまた変な感情になってしまい曖昧に、そんなことは…ないです…、と歯切れの悪い返事を返してしまった。
「お待たせいたしました〜」
「あ、はーい。どうもー」
料理が運ばれてきて、彼は店員にふわーっと挨拶をしている。
店員が行ってしまうと、鉄板の上でジュウジュウと音を立てているハンバーグを見下ろしては、おいしそー、などと零して微笑んでいて
その笑顔には頭がやられてしまっている気がしてならない。
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