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橋名くんになら 4

「なんか、サナギさんのこと知れば知るほど放っておけないというか…」 「えー?そーお?」 サナギは何故か嬉しそうに微笑んでいるが 橋名はまたついついお小言が出てしまったかと若干後悔をしながら自分の手元を見下ろした。 「…すみません…、俺また余計なことを言っちゃって…」 「んー?」 サナギはカップをテーブルに戻しながらこちらに顔を近付けてくる。 「……橋名くんはさ、俺に呆れないんだ?」 「え?」 思わず顔をあげると、真剣な眼差しにじっと見つめられていて息を呑んでしまう。 その質問も消し飛んで、頭が真っ白になりそうだった。 「…あ、呆れるってなんで…」 「だってなんにもできないしさー 心配かけてばっかり?これってあんま良くないっていうか」 沙凪は苦笑しながらテーブルの上に頬杖をついた。 「そうですかね…俺が勝手に心配したいだけなのかも…」 「…勝手に…?」 確かに彼は見ていて危なっかしいし、ハラハラすることもあるが 今まで大人として過ごしてきたわけだ。 それに別に自分は恋人でもなんでもないわけだし。 Subは黙って受け入れていればいい、そんな言葉が思い浮かんで 橋名は俯いた。 「…うざかったですよね…すみません…」 「そういうわけじゃないけど」 彼は何か言いたそうだったが、暫く橋名の顔をじっと見たあと 遅刻しちゃうね、と言って食事を再開させるのだった。 彼のために何かできないか、と橋名は相変わらず考え続けているものの そんなのも所詮自分のためだけなのだろうか、などと思ってしまう。 だからなにも言ってくれないのだろうか。 どうしたら彼に信じてもらえるんだろう。 彼が何か抱えているのだとしたら、一つくらい預けてくれたっていいのに、と。 そんなことを思っている時点で、違うのだろうか。

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