94 / 145

個人的な話 6

サナギさんに触れたい。 そんな欲求が沸き起こってくるのに、 それはあまり言ってはいけないのかもと思っていた。 「あー…もう、しょうがねえなぁ… あいつ呼んできてやるから…ちょっと待ってろ」 「や…だめです……!」 「は?」 「これ以上…サナギさんに迷惑かけられない……っ」 「あのな…あいつの事大事に思ってるんならな、 ちゃんと自分を保って向き合わないと一緒に死にたくなるぞ」 「何を言って…」 「SubもDomも繊細な生き物ってことだ」 頭がくらくらするのを感じながら、橋名は彼を見上げた。 その眼は必死にも見える。 「自分の欲求をちゃんと伝えないとお互い潰れるぞ」 欲求をちゃんと伝える? そうしたら彼を傷付けてしまわないだろうか、と思うと怖くて堪らない。 「な…何やってんの…!?」 急に声が飛び込んできて、橋名は怖々と顔を上げた。 そこには沙凪が立っていた。 夢か幻かと思いながらも、息苦しくて胸を押さえてしまう。

ともだちにシェアしよう!