93 / 145

個人的な話 5

「そっか。 …あいつが自己犠牲的なのは分かってるよ。 Subの欲求を叶えるために、首絞められてもコマンド使わないようなやつだからな」 「え……」 「Domってのは、相手がどうして欲しいかを察して動かにゃならん。 プレイによっちゃ命に関わるしなぁ。 そういう点からするとあいつはDomとして優秀すぎる… 分かりすぎて…、止めなきゃと分かっていても叶えようとしてしまう その結果矛盾で苦しむことになる」 橋名は遂に押し負けてしまってふらふらと蹌踉けて壁に背を預け 思わず彼の胸に片手をついてしまった。 やっぱり、沙凪を苦しめているのは自分なのかもしれない、そう思うと辛くて。 「俺…俺は…全然いいSubじゃない…… サナギさんを困らせてばかりで…」 だから彼は自分に何も預けてくれないのだろうか。 なんだか立っていられなくなって、橋名は床にへたり込んでしまった。 息が上手く吸えなくて、心臓の音が嫌に早く煩く聞こえる。 「おい…?どうした?」 「…っ…」 彼に顔を覗き込まれるが、橋名は苦しすぎて立ち上がる事もままならなかった。 「マジかよ…ドロップしかけてるじゃん…お前ら付き合ってたんじゃないのかよ…」 「そう…したかったけど……断られて……」 心と身体がバラバラになっていきそうに、視界がぼやけて意識が遠のきそうだった。

ともだちにシェアしよう!