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秘書の企み

事故で両親を亡くした高校生の受。 葬儀で受をどうするか親戚達が揉める中、父親の元同僚で後輩だと言う攻が受を引き取ると申し出た。 攻は有名な青年実業家。 そしてゲイで遊び人としても有名。 受がその餌食になるのでは?と誰もが予想したが止める者はいなかった。 攻の家に住み始めた受。 予想に反し手を出されることは無く、それどころか攻は大学はもちろん留学や、仕事のイベントにも受を連れ出し、様々な経験を与えてくれた。 受は攻めを兄のように慕い、次第に恋心を抱くように。 しかし攻は相変わらず毎夜遊び歩いては自宅にも男を連れ込む始末。 やがて受は大学を出ると攻の秘書として働き始めた。 容姿端麗な受を誰もが攻の愛人なのだと噂したが、二人の関係は変わらなかった。 しかし秘書として攻の愛人トラブルの後始末に追われることもしばしば。 鬱々と不満が溜まる日々に受は意を決して攻にある提案をする。 「もう私を愛人にしては?その方が合理的です」 攻に聴かれそうな程の鳴る鼓動を隠しての提案だった。 しかし攻は鼻で嗤い「お前を愛人にする程俺は落ちぶれてない」とバッサリ。 『愛人たちと自分では何が違うのか』と落ち込む受が、攻はその後も受とそう違わない年齢の男達と遊ぶ日々が続く。 受が20代の終わりになった頃、受はある女性に出会った。 彼女は受の最大の理解者となり二人は相談の末、結婚を決めた。 攻に報告すると、攻は驚きつつも大げさなほど喜び、豪華な結婚式を援助しようと申し出てきた。しかし受は「彼女も私も神に誓う儀式に興味はありませんので」とそれを断る。 入籍と同時に攻と住む家を出て彼女と暮らすことにした受。 入籍日が迫ったある夜、受は攻の寝室を訪れた。 「独身最後の遊びに付き合ってほしい」 そう迫る受に戸惑う攻。 「貴方が遊んでくれないのなら、他の男を探す」 さらに受はそう攻を脅した。 受には確信があった。 攻は自分を大切にしているから絶対に危険な目には遭わせない。 それが恋愛感情でなくとも。 受の予想通り、攻は渋々だが受の要望を叶えてくれた。 予想外だったのは渋々だった攻が思いのほか情熱的だったこと。 熱い抱擁に受は勘違いしそうになる気持ちを必死にこらえた。 受が彼女と入籍し家を出て一ヶ月。 受は変わらず攻の秘書を務めていた。 その日も朝から攻の家へ行き、客室に寝ていた美青年3人をやんわりと叩き起こしハイヤーで帰す。 受が家を出てから、攻は遠慮が無くなったのか男遊びがさらに酷くなっている。 それから受は主寝室で眠る攻を起こしに行った。 愛人たちを放置して一人で寝ている無神経男に呼びかける。 「おはようございます。10時から役員会議です。早く着替えてください」 冷たい声で起こす受に攻は「うーん……」と薄い反応。 「会議後は〇〇社と昼食会、15時には……」 そんな攻に淡々と今日の予定を知らせ続けた。 「それと、私事ですが…離婚いたしました。報告は以上です。では下でお待ちしてます」 寝ぼけている攻を置いて寝室を出る受。 その直後、「お、おい!ちょっと待て!今なんて言った!?」と叫ぶ声が寝室から響いた。 慌てた攻の声を背中で聞きながら受はニヤリと笑うのだった。

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