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プロローグ

 僕の名前は黒羽 凛(くろば りん)。  女みたいな名前だって思ったでしょう。僕自身もそう思うんだ、母親は何を思ったのか分からないけど、恐らく考えるのがめんどくさかったんだろう、源氏名をそのまま僕につけたんだ。  小さい頃は基本的にお婆ちゃんに育てられたけど、6歳頃に病気で死んだ。そこから母と二人暮らしが始まったけど、面倒を見て貰えるわけでもなく、お金だけ置いて消えるような女だった。6歳の僕はお婆ちゃんのお手伝いをよくしていたからご飯の炊き方とか洗濯の回し方は知っていた。母に褒めてもらおうと溜まった洗濯物を率先して洗っていた。でも当時素材を知らない僕は、ドレスが駄目になったと片目が開かなくなるほど殴られることもあった。  そこから僕は怒られないよう、目につかないよう頑張って生きてきた。家事をこなし、母が帰ってくる時間になれば押し入れに入って寝る。母が出て行ったら、押し入れから出て、家事をこなし、テーブルに置かれたわずかなお金でなんとかやりくりしていた。  流石に小学校に上がる頃には役所の人間が来たりと色々揉めた記憶があるが、小学校には行かせてもらえた。自分の食費を削って給食費を払っていたから、お昼にいっぱいお代わりをしていた。ランドセルなんか買えるはずもなく、中古屋さんのセールで100円で売ってたリュックをずっと使っていた。  そんな日々が続き、僕はいつの間にか中学生になっていた。  中学では母の容姿を色濃く継いだ僕は注目の的になってしまっていた。僕は至って普通だと思っていたが、世間的には美少年だったらしい。そこからは痴漢や強姦の一つや二つ、色々あったが、ここでは伏せておくことにする。  僕は中学を卒業すると同時に就職した。中々採用してくれる会社も少なかったが、建設会社の事務に雇ってくれた。事務なんて資格がないと、と思っていたが手取り足取り社長が自ら教えてくれた。入社当初は知らなかったが、顔採用だったらしい。やけに親切に教えてくれるいい会社だと思っていたが、日中は事務職、夜は社長や接待のお客さんの相手をさせられた。  最初は痛いし、悔しかったけど、途中から諦めたんだ。反抗すれば痛い目を見る、反抗さえしなければ、普通に給料も貰って生活できる。普通に生活できることが僕にとって大事だったんだ。  会社に入って8年が経った。僕は相変わらず事務をしている。最近社長の趣味嗜好が変わって、加虐的になってきたんだ。夏でも長袖のシャツを着ないと隠せないほどの痣や鞭の跡があった。流石に苦しくて、痛くて、泣いて辞めてくれと言ったが、逆に喜んでもっと痛い目に遭ったのは嫌な記憶だ。  普通の生活にしがみつきたいが為に、今まで我慢してきたけど、23にもなって流石に限界じゃないかと薄々感じてきた。毎日どこか痛いし、最近よく眠れない。ウトウトするけど、深い睡眠が取れないから目の下の隈が酷かった。  その日は接待のお客さんの相手をさせられたんだ。50代の小太りなおじさんを喜ばす為に身体を差し出したが、身体についてる跡を見て、雑に扱っていいと思ったのか、馬乗りになって殴りながらフェラチオをさせられた。噛みちぎってやろうと思ったけど、少しでも力を入れると髪をブチブチと抜かれる。気づいたら嘔吐物と血にまみれていた。おじさんは気にせず僕をひっくり返して、無理やりアナルに侵入してきた。痛みしか感じず、早く終われと唱えていた。  何時間経ったのかわからないが、やっと行為が終わった。おじさんは「よかったよ、社長の報酬は弾んどくよ」と言いながら去って行った。こんな痛い目あってるんだから、僕の給料に反映されないかなぁ......  痛む身体を無理やり動かし、服を着てホテルを出る。流石にお尻が切れていて、血だか精液だかわかんないものがヌルッと垂れた気がするけど、気にしない。早く家に帰って寝たい。  ボーッと歩いて帰路についていると、ブーーーーーーーーっと車のクラクションの音と共に身体に衝撃が走った。急に身体が投げ飛ばされて、コンクリートの地面に打ち付けられた。肺に上手く空気が入らない…… 痛い…寒い……あぁ……死ぬのかな…… 周りにいた通行人に声をかけられてる気がする。   でも眠いんだ……目が開かない…… 誰か……助けて……まだ……死にたくないんだ 一度でも……いいから……愛されたかったんだ……

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