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第3話 ありふれた表現3

「ほら俺、たぶん春のことちゃんと理解してると思うけど」 「は!?」  俺の言うこと全部無視して、伊吹は自分のことを指さす。  なんだこれどういう展開? えっ、そういうこと? いやどういうこと。  頭がこんがらがって、何も考えられない。まずい。本当に何も考えられない。あー、違うな。何も考えられないからこんなことになってんだ。  これをラッキーチャンスと捉えていいのか、友情の崩壊と捉えていいのか、はたまた新しい変化と考えていいのか。  分からない。分からないけど、これが伊吹の言う通り酒のせいになるんだったら、別に分からないままでも良くね?  俺の返事を待たず、伊吹はそっと手を伸ばしてきた。顔に指先がかかる。髪が揺れる。こそばくて、思わず首をすくめる。  手はそのまま滑るように後頭部まで伸びて、がっちりと掴まれた。目が合って息が詰まる。  そのまま軽く、唇が重なり合った。完全なるファーストキスをよく分からない状況で失ってしまったけど、ほんのり残る温かさになんかどうでもよくなった。  頭は混乱したままだ。感情の大混線。もはや脳と気持ちと身体が別に動いているような気もする。    ……まぁ、なんかでも、別にいいか。気持ちよかったらそれで。  いったん思考を放棄して、もう一度伊吹と視線が合わさる。  唇に残った熱を求め合うように、また唇を重ね合った。ついばむように何度もキスを繰り返すうち、くちゅくちゅと水音が鳴り始める。伊吹の手が後頭部から、耳へと移り、ふさがれる。  酸素が薄くなって少し開いた口から舌が差しこまれ、余計に音が激しくなった。うわー、やばい、気持ちいい。  上あごを撫でられ、歯列をなぞられる。腰が浮いた。どんどん気持ちよさが溜まってくる。  もはや酒も言い訳にできないほど体が熱い。  本格的に息ができなくなって、ようやく顔から離された。 「あー、なんか、可愛い」  伊吹がそれだけ呟く。完全にその気になってしまっている俺は、伊吹の目をじっと見つめた。はぁ♡、と自分のものではないような甘い息が耳につく。 「めっちゃ勃ってるじゃん。全然お前いけるんじゃね?」  さわ♡と股間を撫でられて、少しビクつく。正直ここまでだとは思っていなかった。  高校生のときに一瞬だけ彼女ができて、キスまで進んだことはある。それでもこんなに気持ちよかったかと言われれば断じてそんなことはない。こいつのテクの問題? モテるからなぁ。顔もいいし。 「ぜんぜんいけるみたい」  ここまで来れば、あとは野となれ山となれだ。俺の言葉に伊吹が肩を押すと、ドン、と床に二人して倒れこんだ。  手早く服を脱がされ、下着一枚の姿になる。こんなところで、とか考える以上に自分が興奮していた。 「前におもちゃ見ちゃったんだけどさ、お前イケるんだよな、後ろで」 「うんっ?……そう、かも……今日もう、いける」 「は?」 「いや、朝、その、別にこういうことを想定してたわけじゃないけど、その……後ろで」

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