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80 媚薬入りの盃 ※ モブユン

              「…ぬぅぅ…んまいぞユンファ、…んん…」   「…んんん゛…っ」  ふっとつい見れば…ジャスル様の太った無骨な手に顔を挟み込まれ、ぐっと固定されて、無理な口づけをされているユンファ様は、心底嫌そうに顔を顰めていた。――いつの間にやら口布を取り外されているが――ユンファ様は頑なに口を引き結んでいるため、くちゃくちゃと鳴っているのは、ジャスル様がそのぷるんとした赤い唇を含め、彼の口元をベロベロと舐めしゃぶっている音であった。   「…っはぁ…、初めての接吻の味はどうだ…?」   「…んん゛…、…っ」    口吸いの合間にジャスル様が聞けど、渋い顔をして唇を引き結んだまま答えないユンファ様に、つまらなさそうなジャスル様は。   「…全くつれないのぉ、…口を開けてみろ…」   「…ん゛…、ぅぐ…っ」    それでも眉を顰め、口を開かないユンファ様――ジャスル様は不機嫌そうな顔をし、…ドッと強くユンファ様の肩を突き、押し倒した。   「…う゛…っ、…は、おやめくださいジャスル様、…」    すると後ろへ逃げるよう後ずさるユンファ様、だが。  ジャスル様は、その太った巨体で細いユンファ様にのし掛かり、捕らえる。   「…何を言う! もうワシらはメオトなんじゃ、何を嫌がる理由あるんだ、ユンファ!」  ジャスル様へ嫌悪的な顔を向け、弱々しくその人を押し退けようとしているユンファ様だが、その細い手首を掴まれ、床の濃い紅に縫い付けられてしまった彼は、眉を顰めたまま襲いかかってくるジャスル様から、顔を逸らす。   「…このような、人の目が多くある場所で…正気ではありません…」   「…ぐふふ…安心せい、すぐに周りの者など気にならなくなるほど善くなるわ。すぐに蕩けるような心地になれるよ、ユンファ…むしろ淫乱なお前は、他の者の目が癖になるかもしれんのぉ…」   「…そんなわけありません…、ジャスル様、どうかせめて(しとね)で…」――そう顔を逸したまま嫌そうに眉を顰めたユンファ様を、ジャスル様は笑い飛ばした。   「…はっはっはっは! いつまでそんなことが言えるか見ものだぞ、ユンファ…――先はお前に、()()()()()()を飲ませたのだ。…現にお前、もうおちんぽガチガチにしとるだろうに……」   「……え…?」    驚いたように目を瞠るユンファ様、…ジャスル様はユンファ様の、そもそもがはだけている着物の衿元から手を差し込んでは、彼の胸板を揉みしだき――「嫌だ、おやめください、」…それに声を上げたユンファ様の唇を、ぶちゅうっと塞いだ。   「…ゃ…っ、ん…っ」     「…………」  婚姻の契りの盃に、媚薬入りの酒を入れて…それを側室に飲ませ、この宴会の場で抱き潰す――とは…正直、俺はこの人に仕えていて、初めて見る光景ではない。  悪趣味極まれり、といったところだが――むしろこれは、このジャスル様が執り行う“婚礼の儀”において、毎度のことなのである。        

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