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第1話

「社長、朝です。起きてください」 俺の仕事は朝、社長を起こすところから始まる。 「っ!んんっはぁっ……」 肩を押すとともに唇に触れていた感触がなくなる。 社長は呼吸を整える俺を見て、にやにや笑った。 今日は伸ばされた手を避けきれなかった。 「今日は俺の勝ちだな、魅弥。今日も綺麗だ。愛してる」 愛してるはただ付け足しただけの意味を持たない言葉。 そんなの最初から分かっていたはずなのに。 社長が俺に愛してると囁いた日の夜。 女性とホテルから出るところを見てしまったとき、嬉しがっていた自分をどれだけ嘲笑ったか。 社長と俺の勝敗は五分五分。 ただ、俺はこんな戯れを嬉しいと感じてしまっている分、負けている。

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