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第29話
「……あの、実は、会長とお付き合いさせていただいています。なので、会長ではなく、私が最低です。」
なんでこの人の前で、こんな気持ち悪い嘘を付いてるんだろ。
「お前は父親と付き合っているのか?男同士で?」
男同志って事を否定的に言わないでください。
お願いだから。
「ははっ、気持ち悪いですよね。別に認めていただく必要も無いので、構いませんが。私と仕事をするのが嫌になったのでしたら、すぐに交代しますよ。私も本宅で執事をした方が楽しいかもしれませんし。」
こんなの全然言いたくなんかない。
一つも本心なんてない。
社長と仕事が出来なくなるのは絶対嫌だ。
「魅弥、落ち着け。気持ち悪いなんて言ってないだろ?俺は魅弥が幸せならそれでいい。
それに、魅弥のポジションを誰かに任せるつもりは一切ない。俺が自分のテリトリーに他人を入れることができないこと知ってるだろ?」
それはまるで俺が特別だと言われているようで。
安心したからか、目の前が潤んできた。
「しかし……本当に付き合っているのか?もし、無理やりされているのなら、ちゃんと言ってくれ」
「はい。ありがとうございます。そう言ったことは本当にありませんよ。私が好きで付き合わせていただいているので。では、そろそろ帰ります。」
「いや、とりあえず今日は泊まれ。ベッドに戻っていろ」
今にもこぼれそうな雫を見られたくなくて、返事もそこそこに寝室に行かせてもらった。
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