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第56話
昨夜は疲れた。
俺がすぐに意識を飛ばさないように、ゆっくりと時間をかけてしたのだろう。
身体には鎖のあとがくっきりと残っている。
それはいくらタオルでこすっても消えなくて。
俺はもう綺麗な身体には2度となれないのだと、嘲笑っているようだった。
「魅弥、おはよう。」
唐突に部屋のドアが開いた。
朝にこの人がここに来ることは珍しい。
「おはようございます。なにか御用ですか。」
少し身構えて聞くと、それが分かったのか、くすっと笑われた。
「特に用は無いよ。ただ、時間が余ったから、魅弥と話そうかなって思っただけ。」
「社長を起こしにいかなければならないので、もうここを出ます。お話する時間は残念ながらとれません。」
「玻璃と毎日会うの辛くない?玻璃は僕と魅弥を別れさせるためだけに、魅弥に好きだなんて言ってるんでしょ?
魅弥は玻璃のことがずっと好きなのにね。」
社長と毎日会うのは確かにしんどいけど…
その分、幸せだと思えることもある。
「わざわざ心配して頂かなくても大丈夫です。」
「でも、玻璃のこと考えてみて?魅弥がはやく付き合ってあげないと、玻璃は他の人と付き合えないよ。
まあ、玻璃の事だしセフレはいるだろうけど。」
「すみません。もう時間ですので。」
「素直になったらいいのに。案外本気で恋してくれるかもよ」
そんなわけが無い。
失礼しますと一礼して部屋を出た。
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