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第106話

何があったのだろうかと考えていると、華弥くんがぼそっと言葉を発した。 「俺とみー兄、虐待にあってたんだ。俺はちょっとしか覚えてないけど。魅なんて漢字、名前に入れるくらいだからね」 日本語の漢字は難しいけど、調べてみたことはある。 魅は魑魅魍魎に入ってて、ばけものという意味らしい。 魅力、魅了なんて言葉もあるけど、やっぱり鬼がついてるから。 「そこを今の父さんが救ってくれた、はずだったんだけど。 俺たちの本当の母親が好きだったらしい。それにそっくりな魅弥を手に入れるためだけに俺たちを引き取った」 「……」 急に自分のことを話し始めた華弥くんは、1人でそれを抱えるのはもう限界だったのだろう。 魅弥が好きな俺なら魅弥を傷つけることはないから、それを話せる。 「ははっ。それはあとから知ったんだけどね。父さんは何事にも無関心だと思ってたから。 ……はぁ〜、俺、眠くなっちゃった。そろそろ寝よ?」 華弥くんはまだ続くであろう話を無理やり切った。 俺もそれ以上聞くことはせず、おやすとだけ言った。

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