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番外編◆異種族の世界のBOX 後日談 ※R18
【異種族の世界のBOX 後日談】
最近、なんか調子がおかしい。必ずしも不調ってワケでもないけど、妙に|熱《ほて》ってる気がするというか。とにかく変なんだ。
「ん……」
どうにもソワソワと寝苦しくて寝返りを打つ。森の夜は静かで、洞窟の中には柔らかい苔が生い茂ってて寝心地も良い。隣にはシュートもいるし、何の不安も無いのに。
「悪い、起こしちまったな」
そっと頭を撫でられて謝る。真っ暗で何も見えないけど、きっとシュートの宝石みたいな瞳が俺を見つめてるんだろう。
「……」
気にしなくていいって言おうとしたけど、思い直した。俺だったら、シュートのことは何でも知りたいし、些細なことでも教えてほしいから。
「なんか、落ち着かなくてさ……ここンとこ、変なんだ。体が……」
この森で生きていけるように、何かが変わっていってるのかも。そもそも、もうずっと何も食べてない。その時点ですでに普通の人間の体じゃなくなってる自覚はある。
「辛いとか苦しいとかじゃないんだ。ただ、まだ慣れないだけかも」
そう伝えるとそっと頬に触れられて、優しい仕草にホッとした。
「ありがとな」
その手を取って指を絡めてみるとギュッと握り返してくれて、気がつけば眠ってた。
***
でも翌朝、目を覚ますと体の異変はもっと明らかになってて、俺は自分に何が起きてるのか分からないまま地面に横たわって唸るしかできなかった。
「う……うぅ……」
苦しいってのも少し違う。けど呼吸が整わなくて、グルグル目眩がして、体中が熱くて。不安で隣に寝転がってるシュートの腕を掴む。昨晩遅くに起こしちまったせいか、深く眠ってるみたいだ。
「シュート……シュート」
起きてくれって掴んだ腕をしばらく揺すってるとシュートがパッと目を覚ましてくれた。
「はっ……はぁ、俺、なんか変、で……」
体がうまく動かない。どうしよう、死ぬのかなって考えたら怖くなってきて、涙が出てきた。でもシュートが落ち着いた様子で優しく頬を撫でてくれるから、ちょっと安心する。
「はぁ……シュート?」
まだ何が起きてるのか分からないけど、シュートの手が首に移動して、そのまま胸元に滑っていく。暖かいな……なんて考えてたら腹に触れられた瞬間、全身に衝撃が走った。
「あ、あっ!な……っ、何……」
痛みに近いレベルの強烈な刺激に体が勝手に逃げかけたけど、空いてる手で肩を抱かれてそのまま腹に手を押し付けられる。
「シュート、あ、あっ、あ、待て、待ってくれ!」
突然すぎて理解が追いつかなかったけど、どうもこれは快感の類らしい。もしかして俺、体が作り変わってシュートを"受け入れる"準備が整ったとか、そういうことなのか?
「っあ、あ!!」
服の裾から手を差し込まれて、直接腹に触れられる。無意識に足がビクッと跳ね上がったけど押さえ込まれて床に寝かされた。
「はぁっ、あっ、シュート……っ」
初めての感覚に不安が強くて、必死でシュートの首にしがみついて待ってくれって頼んだけど、手は離してもらえない。それどころかあっという間に服を脱がされて裸にされちまった。ビビりつつも、俺のモノは完全に勃起してた。我ながら素直な反応が恥ずかしくて視線を逸らす。
「あ、う……っ、ふぅっ」
もしかしたらこの発情期みたいな状態を収めるには"この先"に進むしかねえってコトなのか、シュートは穏やかなまま、でも容赦なく触れてくる。
「あつ……熱い、シュート、俺っ……」
どこもかしこも性感帯になっちまったみたいに敏感すぎて、背中を支える手にすら感じちまう。でも特に腹の辺りは燃えてんのかってくらい熱くて、まだ触られてるだけなのにどうにかなりそうだ。でも絶対に触るだけで終わりじゃねえだろう。
俺の混乱や動揺なんて構ってられないとばっかりにシュートは自分の服も脱いで、頬を擦り寄せてきた。今までにも純粋に素肌同士を重ね合わせることはあったけど、こんな性的な接触は初めてで緊張する。
「はぁ、待っ……」
視線を下ろすとシュートの屹立したモンが見えた。人間のと似てるけど、ツルッとしてて触手っぽい。シュートには排泄器官が無いから、純粋に生殖する為の管って感じがする。せ……生殖……って、自分で考えておきながら生々しくて、思わず生唾を飲み込んだ。
その時、シュートの手が俺の足を持ち上げたと思うと足の間に熱い指先が潜り込んできた。
「え、あっ、ちょ……っ!?あ、あっ!あ!!」
なんだこれ、どこを触られてンのか分からねえ。けど、明らかにアナルじゃない。もしかして俺の体、まじで作り替えられちまったのか?
「あぁ、待っ、シュート!ひ、うっ……!」
腹をかき混ぜられて、情けない嬌声を上げるしかできない。そんなとこ、本来なら男の俺が濡れるハズもねえのに、今は自分で分かるくらいぐちゃぐちゃになってて、指を動かされる度に水音が洞窟に響き渡る。
「あっあっ、あ……っ!」
正直、頭が真っ白になるくらい気持ちよくて、だらしなく開いたままの口から唾液がポタポタ垂れてた。でも指が引き抜かれて、シュートのが押し付けられた瞬間に一気に不安が襲ってきた。
「待て、シュート……シュート!」
でもシュートは止まらなくて、ズッと先が入り込んで来て、そのまま触れられたことのない体の奥深くに熱い塊が迫ってくるのが分かった。
「あ、あ……っ!」
めちゃくちゃ気持ちいいけど、めちゃくちゃ怖くて、みっともなくボロボロ泣いてた。シュートはそんな俺に「ごめん」って言うみたいに、優しく頬を撫でてくれて、でも離れはしなくて。
「あ……熱い、シュートっ……はぁっ、はっ、あっ!」
そんなに激しくされなかったけど、揺さぶられる度に口から勝手に声が漏れ出した。腹の一番奥に押し付けられたシュートの性器から精液みたいなモンが流れ込んでくる。熱すぎて逃げようとしたけど抱き込まれて、腹の中でゴプゴプって音が聞こえた。
「はぁ、あっ、う、う……っ!くる、し……っ」
しばらくしてもまだ抱き合って繋がったまま、足の間からドロドロとソレが流れ出しても注がれ続ける。やばい、意識が朦朧としてきた。
「はぁっ、はぁ、あ……あっ、あ」
気を失いそうだって思った瞬間、シュートがゆっくりと俺の腹から出ていった。せっかく注ぎ込まれたモンが次々に流れ出ちまう。どうしようって思ったけど、指先ひとつ動かせなくてただ必死で息を整えてた。
***
あれから3日、もうずっと洞窟の中で寝転がったまま。多分だけど、どうやら俺の中に生命体がいるみたいだ。いわゆる人間の妊娠出産とはワケが違うようで、腹が膨らんだりはしてない。まあそもそもたった3日だしな。けど、ぐんぐんエネルギーを吸われてる感じがして、今は体が重くて起き上がることさえできない。
「……シュート」
だから森の見回りはシュートがひとりで行ってくれて、帰ってきたらひたすら抱かれる。どうやらあの"注ぎ込み"は生殖でもあるけど、生命力の譲渡でもあるらしい。
「あ、う……っあっ、あ!」
この3日間でもう数えきれないほど抱かれたけど、この感覚にはいつまでも慣れない。シュートは俺と腹の子の為に生命力を分けてくれてるだけだってのに、あられもなくよがって恥ずかしい。
「シュート……お前は、平気か?」
注ぎ込まれたモノが流れ出さないよう、俺たちは行為の後もしばらく繋がったままでいることにした。後ろから抱き込まれる体勢で横になって「無理してないか?」って尋ねてみると頭を撫でられた。
「俺は果物とかでも、力つけられるから……」
洞窟の中にはシュートが持って帰ってきてくれた森の果実が転がってる。食べられそうな時は少しでも口にして、シュートの生命力をなるべく削らなくても良いようにって。
***
多分だけど、俺の中の"生命体"はすぐ出てくると思う。どんな風に出てくるのか分からねえけど、今はあの"熱"が胸元に移動してる。俺の体から形になって放出されるのか、コレをエネルギーにして森のどこかに生まれ落ちるのか。
いずれにせよ、俺とシュートの生命力が合わさって産まれる子なんだ。とにかく無事に生まれてきてほしい……なんて呑気に考えてた矢先の出来事だった。
シュートに生命力を分けてもらいながら昼間は洞窟でひとり過ごす日々が2週間目に入った頃、妙な気配がしてバッと洞窟の入り口に目をやると見たことのない亜人がいた。この森の奴らじゃない。
「……誰だ」
ギョロッとした目と|嘴《くちばし》のように尖った口が不気味だ。とてつもない威圧感があるものの、弱ってるのか動き方もぎこちない。どこかの森の主なのかもしれない。その"堕ちた神々しさ"が逆に恐ろしかった。
「力を分けてほしいんだ」
「それ以上入って来るな!」
普段なら分け与えてやろうかと思わなくもないが、状況が状況だ。俺は今、自分の命以上に守りたいモンを背負ってる。でもソイツは静止の声なんか聞くはずもなく、ヒタヒタと足音を響かせながら近付いてくる。
「シュート!」
ここに入られた時点でシュートは気付いてると思う。きっとすぐに帰ってきてくれる。
「ハラの子だけでいい」
「……っ!」
その言葉にゾッとして慌てて逃げようとしたけど首を掴まれて引き倒された。触れられた部分が火傷するくらい熱くなって、胸元に強い痛みを感じた。
「いやだ……っ、シュート!!」
鋭い爪が振り下ろされて、無我夢中で抵抗する。左腕に痛みが走って、ガツッと何かがぶつかる音が聞こえた。シュートが帰ってきて亜人を突き飛ばしたみたいだ。
しばらくバタバタ暴れる音が聞こえてきたけど、蹲ってたから何が起きてるのかは分からなかった。切られた左腕から大量の血が流れ出して、内臓を握り潰されるみたいな痛みに襲われて、うめき声も出ない。
「はっ、はぁ、はぁ」
シュートが駆け寄ってきて抱き寄せられる。すぐに額をくっつけ合わせて生命力を分けてくれて腕の傷は塞がったけど、何かがせり上がってきて耐えきれずその場に吐いたら鮮血だった。胸元にずっとあった"熱"が弱まってるのを感じる。
「はぁ、あ……っ、はぁっ」
どうしよう、どうしよう。シュート、俺たちの子なのに、守れなかった。ごめん。頭の中がぐちゃぐちゃで何も言葉にならなくて、目の前が真っ暗になった。
***
ずっと長い悪夢を見ていた気がする。ハッと目を覚ますと早朝なのか洞窟は薄明るくて、シュートの腕に抱き込まれてた。何日くらい眠ってたんだろう。
「シュート」
声をかけたらシュートはすぐに目を覚まして頭をぎゅうぎゅう抱きしめてくれた。あったかい。それに胸元の"熱"も復活してた。
「……よかった……」
ホッとしたら涙が出てきて、同時にこの森の中は絶対に安心だなんて油断してたことを深く反省する。
「ごめんな、心配かけて」
ずっと看病してくれてたのか、シュートはちょっと痩せてた。
それから、体が重いからって寝てばっかも良くねえし、シュートと離れない方が良いってよく分かったから、俺たちはゆっくり歩いて森の見回りを二人で再開することにした。
太陽光を浴びて森の奴らと挨拶をして回ってると、多少体が重くても気分が晴れて軽くなった。
そんな風に過ごしてもう1週間もすると、俺の体から生命力を吸い取りまくってた"熱"の塊が手のひらサイズの光の玉みたいになってポンと抜け出した。
しばらく観察してるとその光は人の形を取り始めたから、どうやら一件落着、無事に生まれてきてくれたらしい。今はまだフワフワ浮かんでるだけの光だけど、いつでも俺たちの周りをご機嫌そうに飛び回ってる可愛いやつ。
俺たちはその精霊みたいな生き物にシドニーって名前をつけた。ゆくゆくはシュートみたいな姿に育つのか、小さいままなのか……何もかもナゾだけど、とにかく愛しい俺たちの子だ。
「シド、お前は空が飛べていいな」
なんて言ってみると俺の指を掴んで持ち上げようとしてくれた。
あれから他の森の主がやってくるようなことも無い。アイツとその森がどうなったのか、気にならないと言えば嘘だけど、俺は俺で、この森をシュートと一緒に守るだけで手一杯なんだ。
なんて考えてたらシュートとシドニーが少し行った先で俺を待ってたから、手を振って追いかけた。
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