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第149話

朝、リンが目覚めるとロウが朝食を作る音がした。 島の人に分けてもらった魚を焼く香ばしい匂い。海藻を入れた汁物を茹でる音。ついでに、機嫌のよさそうな彼の鼻歌。ロウの料理は、いつも単純な工程で分かりやすい。 昨日あれだけ怠そうにしていたくせに、その後に性……運動までしていたのに、どうしてあんなに元気なんだろう。 リンは布団に包まりながら、どうしようか考えていた。戸惑っていた、というべきかもしれない。 情事の翌朝で顔が合わせづらいわけじゃなかった。むしろ、またあの温もりが欲しいと、まだ足りない、もっとしたいと俗物的なことばかり考える自分に、リンは困惑している。 「おーい、メシできたぞー」 ロウが声をかけた途端、リンは咄嗟に布団に潜る。 「なんだそれ?新種の生物ごっこか?」 「ち、ちが……ちがくて……」 布団の中から真っ赤な顔を覗かせた姿は、確かに新しい生き物に見えるかもしれないけど。 「あの、願いごとを聞く券……期限とか、回数とか、あるの……?」 「は?なんで……ああ、分かった。朝飯のリクエストな。でももう作っちまったから、聞くなら昼飯で」 「リクエストじゃなくても、いい……?もっと、甘えたことでも……」 「お?おぅ、いいけど」 ロウはきょとんとした顔をしている。 感情が伝わらないことが、気持ちを言葉にすることが、こんなにもどかしくて、顔から火が出そうになるなんて知らなかった。 それでも、言わなきゃ伝わらない。そして、彼なら言っても拒絶しない 「ご飯の前に、昨日したみたいなこと……もっと、したい……」 結局、この言葉はロウを拒絶どころか喜ばせてしまって、ふたりして朝も昼も食べ損ねる羽目になってしまうのだけれど。

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