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第34話
「・・・ん・・・ぅ・・・?」
朝だ。
・・・いや、もうすぐ昼かも。
「おはよう眠り姫。お水飲む?」
「・・・ん・・・」
先に起きていたカイは、ムカつくぐらい元気そうだ。
ペットボトルのミネラルウォーターを呷 り、当然のように口移しで飲ませてくれる。
3口目を飲みながら、なんとか腕を上げてカイのオオカ耳を掴んだ。
「プレゼントは耳 じゃないよ」
「・・・ぷれ・・・?」
オオカ耳を放した手をベッドの上にぱたっと下ろすと、指先に何か当たった。
顔を向けると、綺麗にラッピングされたプレゼントが3つ。
「・・・クリスマス・・・プレゼント・・・?」
「いい子の璃都 に、サンタさんからプレゼントだよ」
人間の身体とは不思議なもので、腕を上げるのが精一杯だと思ってたのに、普通に起き上がる事が出来てしまった。
・・・クリスマスプレゼント。
え、3つあるけど、どれが俺の?
「好きなのから開けて」
「・・・え、まさか3つとも、俺の?」
「俺は昨夜 もらったから、それは3つとも璃都のだよ。ほら見て、可愛い噛み痕」
カイがシャツの襟を開き、肩を見せてきた。
・・・あ、俺が噛んだ痕。
そんな嬉しそうに見せないでよ・・・痛くないの?
まあいいや。
クリスマスプレゼントが3つも・・・どれから開けよう・・・。
「えっと・・・えっと・・・じゃあ、これ、から」
「うん」
金色のリボンを解 き、赤い包装紙を開く。
中にはメーカーロゴ入りの白い箱。
開けると、最新型のタブレットが。
「すご・・・やったぁ・・・ってピンクだし」
スマホに続きタブレットまでピンク。
思わず笑ってしまった。
カイは俺のテーマカラーをピンクだと思ってるらしい。
「桜ピンク。特注だよ」
しかも、わざわざ特注してまでピンクに・・・。
「もぉ・・・あ、タッチペンとキーボードもある」
「勉強に使って。絵を描いてもいいし、動画見てもいいし」
いや、勉強一択でしょ。
使うの楽しみ。
「ありがと、オオカミサンタさんっ!」
「ふふ、次も開けて」
次は・・・大きいピンクの袋。
リボンを解き口を開けると、中から黒い大きめのリュックが。
軽くておしゃれなのに、凄く機能的なデザインだ。
「かっこいい!」
「気に入った?」
「うんっ!これで学校行くっ」
さて、3つ目は・・・。
シックなグリーンの包装紙を開くと、黒い革のケース。
開けてみると、詳しくない俺でもわかる程有名なブランドの高級腕時計が収められていた。
「た・・・高そぉ・・・」
「普段使い用なんだけど、気に入らなかった?」
「そっ、そんな事ないっ」
クローゼットにカイの腕時計がずらりと並んでるの、ちょっといいなーって思って見てたし。
まさか自分の腕時計貰えるなんて思ってなかったから。
早速着けてみようとしたら、カイが後ろから覆い被さってきて、着けてくれた。
絶対お高いであろう高級腕時計をした左腕を翳 してみる。
おお・・・かっこいい・・・!
高校には着けて行けないけど、出かける時とか、大学行く時に着けよう。
「えへ・・・なんかデキる男みたい」
「ふふ、可愛い。喜んでもらえて、オオカミサンタも嬉しいよ」
ベッドの上で、タブレットの設定したり、リュックに入れて背負ってみたり、はしゃいでる俺をカイがいつの間にか動画に撮ってたりして・・・。
「もおっなに撮ってんのっ!」
「こんなに可愛いのに撮らない訳にいかないよ」
それからカイに手を引かれ身支度をし、車に乗せられた。
「どこ行くの?」
「リシドの店でクリスマスランチ」
「・・・え?りっくんの店?」
りっくんは複数のレストランやワイナリー、ブルワリーを経営してて、俺たちが昼によく行くレストランもりっくんがオーナーだ。
ああ見えて料理が上手で、カイに料理を教えたりしてたらしい。
到着したのは、おしゃれなビルの中にある会員制レストラン。
「いらっしゃーい!」
「よお、ちょりと」
中ではりっくんと玲央 が、既に飲みながら待っていた。
テーブルの上にはたくさんのおしゃれな料理。
いろんな種類のリッツカナッペ、クリスマスツリーみたいに盛られたジェノベーゼパスタ、リース型のピザ、ローストビーフ、それから・・・。
「チョコの噴水がある・・・」
「チョコレートファウンテンだよ」
あ、そうだ、前にカイが言ってた。
これが、チョコレートファウンテン・・・すご・・・。
「それ、僕からちょりとへのクリスマスプレゼントだよ。後で家に送ってあげるからねー」
「ほんとっ?いいのっ?」
家にチョコの噴水が・・・やば・・・。
「ほら、まず乾杯しよーよ。カイは今日は飲まないんだっけ?じゃ、ちょりとの好きな白ブドウジュースね」
4人で乾杯して、空腹だった俺はローストビーフから食べ始め、カイが皿に盛ってくれるのをちょこちょこ食べてから、我慢出来ずチョコレートファウンテンの前へ。
「これで食べたいの刺して、チョコ付けて食べるんだよ」
「じゃあ苺・・・あ、やっぱバナナ・・・マシュマロも・・・」
「全部刺せば?」
「ちょりと欲張りだなー。あ、そーだ、ひと口サイズのアイスも作っといたんだった」
「アイスがいいっ!」
チョコレートファウンテン、美味しくて楽しくて最高!
他の料理も全部美味しくて、作ってくれたりっくんをちょっと見直した。
───────
「あ"ー・・・飲み過ぎたー・・・」
「玲央、大丈夫?」
もう4時間くらい飲んでるからな。
俺もお腹いっぱいだ・・・。
「璃都、そろそろ帰ろう」
「え?あ、でも・・・」
「んぇー?もぉー帰んのぉー?僕たちはぁー?」
「知るか」
酔っ払ったりっくんをカイが邪険に扱う。
玲央は・・・あれ、寝ちゃった?
後片付けとか、しなくていいのかな。
りっくんもこんな感じだし、ご馳走になったお返しに皿洗いくらいして行った方がいいんじゃ・・・。
「俺、片付けしてくよ」
「璃都、いいよそんなの・・・」
「ちょりと優しぃー!カイザルにはもったいなーい!」
「黙れ駄狼」
駄狼って・・・。
とりあえずほっといて皿を片付けようとしたら、カイに止められた。
「カイ?」
「シグマとローが来るから、リシドたちごと任せればいいよ。ほら、帰ろう」
あ、シグマが来てくれるのか。
クリスマスなのに、なんか悪いな・・・って。
「ローって、誰?」
「シグマの兄で、リシドに付いてる執事だよ」
シグマ、お兄さんいたんだ。
ちょっと、会ってみたいかも。
「じゃあ、2人が来るまで待ってようよ」
「どうして?」
「シグマのお兄さんに会ってみたい」
・・・あれ、なんか空気がピリっとした。
「璃都、どうして俺以外の男に興味を持つの?俺を怒らせたい?昨夜かなり無理させたから今日は優しくしようと思ったのに、必要ないみたいだね」
「いやそんな意味で言ったんじゃないっ!片付け任せちゃって悪いから、せめて挨拶だけでもと思って・・・」
必死に弁解してたら、入り口のドアが開いた。
振り向くと、シグマと、シグマに似た毛色の獣人が。
「カイザル様、いかがなさいましたか?」
俺に噛み付こうと迫っていたカイに声をかけるシグマ。
良かった、助かった。
「シグマ、後片付け任せちゃってごめんね。あと、お兄さんにも挨拶しようと思って・・・」
「璃都様、初めまして。シグマの兄、ローと申します」
「あ、初めまして、璃都です。よろしく・・・」
「後は任せたぞ。おいで璃都」
「ちょっ・・・!?」
カイが俺を肩に担ぎ上げた。
こ、この運び方・・・荷物扱い?
「お気をつけて。璃都様・・・ご武運を」
「だから勝ち目ないってば!」
シグマとロー、テーブルに突っ伏して寝る玲央とへらへらと手を振るりっくんに見送られ、俺たちはレストランを後にした。
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