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~はじまり~

「う、わ。めっちゃイケメンじゃない!?」 「ホントだ、モデルさんかなあ!?一緒に写メお願いしない!?」 かなり離れた背中越し。 ピンク色の女子たちの声に想の肩がびく、と小さく跳ねた。 「....ま、まさか僕じゃないよね....」 恐る恐る振り返った先。 二人の女子が見ていたのは自分だ。 自分を見つめ続ける二人の瞳の中にハートが見えるかのようで、想は自然と身震いがした。 「あ、あのー!」 「や、ヤバい、逃げなきゃ....!」 話しかけられるや否や、想は一目散に逃げた。 高二の高槻想。177の高身長でありつつ整った顔立ちに手脚も長く完璧なルックス。 本人は頼んでもいないのだが否応なしに人目を惹きつけるオーラを身に纏う。 想からすれば誰しもが羨ましがり、時には妬まれもするルックスも、勉強だけじゃなく運動神経が抜群なことすらも想本人が望んだ訳ではない。 αという遺伝子上、才能はより一層、発揮するが、αと判別される前からもスポーツや勉強は好きだった。 「おう、おかえり、想。どうした、息切らして」 「おかえり、想ちゃん。お菓子あるよ?紅茶淹れようか?コーヒーがいい?麦茶がいい?」 息を切らしながら自宅のリビングに戻ると自宅から大学へ通うハタチの兄の諒、自宅近くのマンションで一人暮らしをしている24歳の会社員の姉、玲香の姿があった。 「む、麦茶....」 「りょうかーい♡」 リビングのソファの玲香が、読んでいた雑誌を置き、鼻歌混じりにカウンターキッチンへと向かう。 「ああ、もうホント嫌んなる、僕、目立ちすぎるし、モテすぎて」 「なんだそれ。嫌味か」 「もうっ。諒くん意地悪しないのっ。知ってるでしょ、想ちゃん、昔から内気でかなり人見知りなんだから」 ありがと、と玲香に渡された麦茶で乾いた喉を湿した。 「ふーっ。走ってきたからすんごく美味しい。玲香お姉ちゃん、今日、休みなの?平日だけど」 学校から帰宅した時間なのでまだ夕方だ。 「うん。お父さんもお母さんも海外に行っちゃって心配だし。ほら、二人でちゃんと夕飯とれるかも心配だし。 二人が戻ってくるまでこっちにいようかな、て会社にもちゃんと話してきたんだ♡」 海外赴任になった父と一緒に母もついて行ったのだ。 思わず、ガバ、と勢いよく想が顔を上げた。 「えっ!じゃ、しばらくお姉ちゃん、こっちいるの!?」 「うん、そうだよー♡夕飯なに食べたい?想ちゃんの好きな物にしよっか?」 「えっとねー」 やれやれ、とその姉と弟のやり取りを諒は苦笑しながらスマホ片手に見守った。 子供の頃から大人しく内気な性格だったが為にいじめられやすかった想。 そんな想を慰め、励ましてきただけに想と玲香はシスコンとブラコンだ。
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