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待ちに待った昼休みのチャイム。 うーん、と想は伸びをした。 「想!サッカーやるけどお前も来るよな!?」 「えっ!?サッカー!?うん!行く!」 無邪気に笑み、友人たちの誘いに立ちがった。 しばらくは女子たちにチヤホヤされるイケメンとして警戒され、想は仕方なく休み時間は1人でイヤフォンをして音楽を鑑賞したり読書するしかなかった。 次第に女子たちから逃げている様子の想に気づき、クラスメイトが試しにバスケに誘ってみると、 「....え、嘘。いいの?ホントに...?」 読んでいた書籍を開いたまま、困惑した瞳で想に見上げられ、思わず、う、うん...と何故か生唾を飲み込んでしまったクラスメイトがいた。 クラスメイト数人とグランドに向かう廊下。想の両端にはなるべく女子の視界に入らないよう気遣うクラスメイトたち。 まるで想の護衛かのようだが、想は女子たちからピンク色の奇声を発せられることもなく、安堵する。 「....あれ、小柳じゃね?」 不意にクラスメイトの1人が正面の誰かに向けられた。 「ああ、小柳奈月。あいつ校内で人気のオメガらしいけど、まあ、男だし問題ないだろ。まあ、美少女みたいな美少年なんだかよくわからん感じだけど」 想自身も遠巻きながら初めて見た。 奈月は転校してくるや否や、男子の羨望の的である、美少年のオメガだ。 確かに美少女と間違いかねない小柄で華奢な風体、小さな顔にパッチリした瞳、細くも可愛く通った鼻筋、ピンク色の小さな唇。 若干濃い、茶色の瞳の眼差しはどことなく意思が強そうにも感じる。 スラックスのブレザーが万が一、女子生徒のようにスカートだったなら女子生徒と間違ってしまっただろう。 想は気に止めてはいなかったが奈月との距離が近づくにつれ、奈月は想を一心に見つめたまま歩いてくる。 二人がすれ違う...ことはなかった。 唐突に目の前に奈月が立ち止まったが為に自然と想はきょとん、と奈月を見下ろした。 凛とした瞳が想を見つめる。 「子作りしましょう!」 奈月から唐突に発せられた言葉が理解できず、想は奈月を未だきょとん、と見下ろした。 「....こ、づ?」 「だから!子作りしましょう!僕と!」 「 ....は?え...?こ、子作り、て....?」 「簡単に言えばセックスです!」 暫しの間の後、片時も目を離そうとしない奈月の瞳を見つめたまま、想は軽く握った拳で口元を抑えた。 見る見るうちにその想の顔がピンク色に染まっていくのをクラスメイトたちは息を飲み、無言のまま見つめる。 想は一歩後ずさりし、 「な、なに言ってるの...?こ、せ....?は、はしたいよ、君...こんなとこで」 「じゃあ!違う場所ならいい!?二人きりの場所が良かった!?」 「あ、あんまり大きな声、やめて、は、恥ずかしい...そ、それに」 「それに?」 「僕、僕、その、こ、子作りとか、せ、セックス...とかよくわかんないし、とりあえず、その」 想の言葉を奈月は待った。 「さ、サッカーしたいんだよね、僕...。昼休み終わっちゃう。ごめんなさい」 「え...?」 ぺこ、と奈月に頭を下げると動揺しながらも想はその場を離れ、想のクラスメイトたちもその後を追った。 「....僕、サッカーに負けた...?」 しばらく呆然と奈月はその場に立ち尽くした。
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