13 / 18

第12話 か弱い生き物

 後退るが、タクトくんはさっさと衣服を脱いでいく。 「ま、待ってよ」 「はい?」 「……な、なにするの?」 「交尾だけど。セックスって言った方がいい?」  呼び方の問題じゃない。 「交尾⁉ おっ俺は男なのに⁉」 「うん?」 「こ、べ、別に子どもが出来るわけじゃ、ないのに?」 「子どもが欲しいの? 大胆、だね」  照れたように頬を掻くタクトくんに枕を投げる。もふっといい音が鳴った。 「?」 「いや、その……」  抱かれる、と思うと頭の中が真っ白だ。  タクトくんはしわを整えてから枕を定位置に戻す。 「養子かぁ。ベリちゃんが欲しいなら考えるよ?」 「ちがっ! ……」  のそりとベッドに上がってくる。壁まで下がるが意味がなさそうだった。すぐに抱きしめられる。  耳元で囁く。 「脱いで」 「ッ」  思わずぎゅっと服を握りしめる。 「……!」 「その服、そんなに気に入った? 選んだ身としては嬉しいけど。脱いで」  ブンブンと首を振る。  被っていたフードが背中に落ちるが、どうでも良かった。 「やだ、やだ」 「焦らすと優しくしてあげられなくなるよ」 「うっ……」  ぴしゃりと言われ、震えながらもレギンスっぽいズボンを脱ぐ。現れた白い肌に、狼男は生唾を飲んだ。 「いいね。パンツもね」 「う、うん」  酔っ払いよりひどい動きだったと思う。それでもなんとかフード付きパーカー一枚になると、間髪入れずにのしかかってくる。 「ああっ」 「出来ればフードを被っといて欲しいな。お揃いになるよう選んだからさ」 「え……?」  フードについてた黒い耳のこと? それって…… 「タクトくんは、狼男の方が好きなの?」 「急にどうしたの?」 「え、だって。耳が、狼の方がいいんでしょ?」 「狼の方って?」 「……えっと。狼男って、人間に恋するの?」  べろっと首を舐められ、反射的に身を縮こませる。 「するよ?」 「同種同士じゃないのに?」  自分を守るようにかい抱いていたが、手首を掴まれ、万歳の姿勢でシーツに押さえつけられる。 「ベリちゃんの言うことは難しいね。俺たちはそこまで知能高くないから、もっと簡単に言ってほしい」 「……」 「腕力とか体力では勝ってるけど、知力では人間がぶっちぎってるんだからさ」  苦笑し、鎖骨に舌を這わせる。その部分だけ鳥肌が立った。 「そう、かな?」 「自覚無いのすげぇや……。人間って面白いよね。でもまあ、か弱いことには変わりないかな」  グレーブルーの瞳が見下ろしてくる。

ともだちにシェアしよう!