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最終話 人間は弱いって十回書いて覚えて‼

〈ベリ視点〉  目を開けるとタクトくんが視界いっぱいに…… 「う?」 「起きた?」  ふわふわと頭を撫でられる。 「調子はどう? 次は挿入するから。また腰をこっち向けてくれる?」  その一言で、さっきまでの出来事がフラッシュバックする。どっと汗が噴き出た。 「俺、気を失って……。どのくらい、寝てた?」 「三十分も寝てないかな? 俺は寝顔を眺めてました」  恥ずかしい。顔を背けるが、彼からはフレッシュなミントの香りがした。歯磨き粉のような…… 「そ、そそそ挿入って」 「そうそう。お尻も良く解れただろうし? 挿れてくね?」  だるくて動かない身体を強引に抱き上げられる。 「ちょ、まだ。身体動かせな……え?」  何か首に違和感を覚え、手で触れてみる。感触からして革製品っぽい。 「え? なにこれ」 「えへへ。気づいてくれた? 首輪」  真顔になった。 「は?」 「俺の物って一目でわかるようにしとかないと。狼たちは臭いで理解してくれるけど、吸血鬼共は『名前書いてなかったじゃーん』とか平気で言ってくるから。よく争いになるんだ……まったく」  まったく、ではない。 「え?」 「名前とイった回数を後で彫ってあげるから。大事にしてね」 「え?」  あぐらをかいた彼の上に座らされる。向き合う体勢にされると、お尻にナニかが当たる。 「え?」 「動けないみたいだから、支えててあげる」  俺のお尻は、彼のブツの上に…… 「ふぁ?」  まだ勃起していないようだが、どうなるかは予想できた。 「俺に抱きついてていいからね?」 「ま、まだ勃ってないよう、だけど……?」 「人間って、勃起してからねじ込むの?」  ああああ。そうだ。人間とは違うのだ。目の前にモッフモフの異形がいるというのに、どうしてこうすっこ抜けるのか。 「……お、俺はどうすれば……?」 「ンフッ。かわ。わざわざ聞いてくれるなんて嬉しい。交尾の際は夫を立ててくれるタイプなんだね」  タクトくんは日本語で喋っているはずなのに、脳が理解を拒む。 「贅沢は言わないけどぉ。出来れば次は、俺の顔を見ながら鳴いて、感じて、イってほしいな。俺もしっかり見ててあげる」  可愛くウインクしてくる。  羞恥で死んだら責任取ってくれるんだろうか。 「み、見ないで……」 「照れてるの? あ、お尻広げてくれる?」  強引に貫かれるならまだしも、自分の尻を両手で広げてしゃがめと言う。 「そんな……」 「頑張って。苦しそうだから、こっちも慰めてあげるね」  吐精した先端を軽く撫でられ、心地よい痺れがジワリと広がっていく。 「あっ」 「俺の顔見て? でないと今度から衣服は与えないよ?」 「……ッ」  奥歯を噛みしめ、ぎゅっと目を閉じる。  ゆっくりと目を開けて、タクトくんと目を合わせた。  澄んだ狼の瞳が俺を映す。首輪をしている俺を。 「……! やっぱ、恥ずかしいよ‼」 「照れてる顔が魅力的だからね。我慢してね」  衣服無しは辛い。ただの全裸ならともかく、首輪はつけたままとなるだろう。 「うう。もおぉ……。タクトくんのばか……」 (かわいい)  覚悟を決めて自ら尻を掴んで広げる。こんな姿を彼に披露している事実に、顔から火どころではなくマグマが出そうだった。  それでも退路の無い俺は、ゆるゆると腰を落としていく。  タクトくんは腰に手を添えてはいるが、力を込めてこない。あくまで俺に挿れさせるつもりなのだろう。じっとこちらを見てくる瞳に悪意も何も感じない分、より恥ずかしい。 「そ、そんな、見ないで。お願い……」 「嫁さん見ないで何を見るの? この状況で?」 「ッ……」  熱を帯びた先端部分が、後ろの穴に触れると身体が止まってしまう。 「怖くないよ。ゆっくり下の口で呑み込んでね」 「う、ん……」  目の前にある尖った乳首に心が疼いたのか、ぺろっと舐めてきた。 「ふあっ⁉」  両足から力が抜け、尻を落としてしまう。  と同時に腰を上げたタクトくんに真下から貫かれた。 「―――っうう」  舌とはまた違う圧迫感に、後ろにひっくり返りかけた。即座に、ふかふかの太い腕が支えてくる。  ――入った。タクトくんの……ものが。俺に、入っ……  彼と繋がった事実に全身が震える。  自分でも尻から手を離し、抱き合うように彼の肩に掴まった。  大丈夫そう、と一瞬思ったが、ムクムクとタクトくんのナニが大きくなってくるのを感じる。 (な、ナカに入ってから大きく、なるなんてっ……)  ゴムが落ち、男性にしては長い髪をたまらず振り乱す。 「ううっ」 「暴れないで。フードが」  繋がったまま抱き寄せられてしまうと、もう動けない。  初めてが、人外だったなんて……。  俺の戸惑いなど知ったことかと、内側から押し広げられる。 「かっ、はあ……」  内臓が押し上げられる苦しさに、酸っぱいものが込み上げてきた。 「苦しい? 言ってね? 俺、加減とかまだ分かんないから、無茶しちゃうかも。壊したくない、からさ」  声が出ない場合はどうしたらよろしいでしょうか?  試すように、俺の顔色を見ながら腰を揺り動かしてくる。 「あっ。うご、か……な」  タクトくんのブツは最奥まで余裕で届いていた。容赦なく突き上げられ、二回目の兆し。湧き上がってくる快感に身悶えする。 「ベリちゃん。苦しそうな顔……してるけど。ナカは熱くて、俺のペニスに悦んでるように吸いついて……。淫らに蠢いてるよ?」 (実況しなくていいかな!)  頬を汗が伝う。 「すっごく気持ちいい。繋がれ、たね。ベリちゃん」  息苦しさと快楽に、震えが止まらない。唾液が顎に流れたことにも気づかなかった。 「はっ……あ」 「ありゃりゃ。目が虚ろ。すごくエッチ。あんまり煽らないでほしいな」  ぼうっと何も映さない瞳に、タクトくんの下半身が張り詰めてくる。 「しがみついてていいよ。顔見てろって言った手前、申し訳ないけど。俺の方が我慢できなくなってきた」  これ幸いにと広い背中に腕を回し、長い毛をぎゅっと掴む。 (ベリちゃん。寒さで震えているのか、気持ち良くて震えているのか。どっちなんだろ……)  逐一説明してほしいが、流石に今は喋れる状態でないと狼男でもわかる。彼女はいたが、タクトも男は初めてなのだ。  慎重に慎重に……  出来れば自分で腰を揺らしてほしいが、しがみつくのでやっとと主張してくる背中に目を落とす。  フードからこぼれるベリちゃんの色素の薄い髪。栗のようで美味しそう。でもこれは、幼少期の栄養不足のせいなのだとか。 (エサ捕るの苦手だったのかな? ……あーあ! 俺がもっと早く出会っていればな)  せっせとご飯を運んで、毛づくろいもしてあげたのに。 「ごめんね? 触るよ」 「あっ」  敏感な鈴口を指の腹で抉られ、脳天まで甘く痺れていく。 (タクトくん……? なんで、謝ったの?)  瞳と同じ色の鋭い爪があるのに、俺は全く傷ついていない。  思い出すのは赤いマニキュアの爪。丸っこい人間の爪はあれほど俺を傷つけたのに。鉄すらも両断しそうな爪を持つ彼の指は、器用に俺の先端を攻めてくる。  同時にゆるゆると真下から突き上げられ、苦しさを忘れた。 「は……う、うう」  彼の膝の上で。勝手に、腰が揺らめき出す。 「くっ、ああ……あ、ああ」  輪にした指で手早く扱かれ、快感を貪るように腰の動きが速くなっていく。 「あはっ。自分で振ってくれてる。可愛いなぁ」 「……っ」  無邪気な声が、火照る耳を掠めていく。 「あ、イく……。タクトくん……俺。イっちゃう……」 「はいはい。せっかくだし、一緒にイこうか」  タクトくんも大きく腰を動かしてくる。 「あ、あ……ッあ―――……」  快楽の奔流に、極まった声が出る。  彼のふかふかの毛に薄まった白い液を放ってしまう。 「ぐっ、うう、ぅ……!」  タクトくんの動きが止まり、内側に熱いものを注がれる。けっして子を孕んだりすることはないというのに。彼は恋人でも扱うかのように優しかった。  はらっと頭からフードが落ち、頭が真っ白になる。 「はあっ……はあ。あ、ああ……」 「気持ち良かったね。ベリちゃん大丈夫そう? 俺、もう一回イきたいんだけど。動かしてもいい?」  無邪気な笑みが悪魔に思えた。 「……し、ぬ」 「駄目ですか。はい」  両脇の下に手を入れ、俺の身体を持ち上げる。 「あっ、そんな……」  ずるずると繋がりが解かれる。まだまだ衰えていない彼のペニスに柔壁を擦られ、快感と不快感に眉根を寄せた。  ずりゅっと繋がりがなくなり、圧迫感が消える。 「うっ。そん、な」 「辛かった? 早く横にしてあげようと思って」 「もう……」  脱力している俺を寝台に寝かせた。身体の向きを変えると、後ろからどろっと液が溢れてくる。 「うわ。エロい」 「ばか……」  後ろの穴を覗き込んでくるタクトくんの頭上にチョップを落とす。 「ごめんごめん。ちゃんときれいにしておくから」  一瞬で眠りに落ちることができるほど頭はぼーっとしていたが、彼は遠慮なく俺の片足を持ち上げた。 「え? なに?」 「ん? きれいにしておくって言ったでしょ?」  だらりと舌を出して指差す。  待て! まて、待って‼ 「な、舐めてきれいに、するの……?」  いま、二回もイった直後なのに……ナカを舐められたら――  足を掴んだまま、頭部を股にねじ込んでくる。ピンクの舌が精液で汚れた肌を抜くように舐め取っていく。  イく前以上の刺激に飛び跳ねかけた。 「ひゃあ! あ、あ、ああ」  イったばかりの性器を舐められ、顎を殴られたような衝撃が走る。 「あ、ああっ! や、そこ! ……っん、ぁ」 「可愛い声」  タクトくんが小さく笑っている。かわいいって、言うなって……ッ!  くすぐったさと快楽が混ざり合い、ぞわぞわと痺れる。  舌が乾いてくると口内に戻し、唾液を纏わせると再び舌で転がしてくる。 「いや! あっ、あ。ああ。ひっ、あ」  片足で蹴ろうとするが、すんなり掴まれた。ちょうどいいやとばかりに、大きく開かれる。 「やだ、そんな……」 「んー? 何が嫌なの?」 「ひゃあ、あ!」  腹部に力が入るたびに、注ぎ込まれた白濁液が溢れ出るのを感じる。なんだか粗相をしているようで、耳まで朱に染まる。 「きれいに掻き出してあげるからね」 「んっ、う」  白い液を垂れ流す穴に、再び舌が押し込まれる。ぐぷ、こぽ、っと泡が混じった水音に力なく首を振る。 「あ、あ、あ。駄目! イっちゃ……。ああ」 「ふふっ」  ビクビクと大きく震えたあたりから、よく覚えていない。  首輪に「十四」の数字が刻まれ、腹いせに十四回小突いておいた。 「ベリちゃんの精液はおいしいのに、自分のはまっずいわ。でも計十回以上もイってくれるなんて、嬉しいなぁ」  ほくほく顔のタクトくん。  絞り尽くされ、俺はもう何も出ない。 「……ばがあぁぁ」  タクトくんにはもっと「人間の弱さ」を教え込まないと駄目かも知れない。持たない、俺の身体が……腰も…… 【おしまい】

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