17 / 18

第16話 かーわいい

〈タクト視点〉 (かわいいっ。かわいい! 可愛い!)  狼耳フードを被り、注文通り鳴いてくれている彼が。愛しくて仕方がない。  あの穏やかなベリちゃんが。生まれる性別間違ってないかなとたまに思う彼が。こんなエッチな声を出すなんて思ってもなかった。  息が荒くなる。 (こんなの、夢中になっちゃうよ……!)  他のオスに盗られていたらとゾッとする。何故もっと早く、彼を攫ってしまわなかったのか。過去の自分を𠮟りつけたいくらいだ。 (でもいいんだ)  欲しかったベリちゃんは今、俺の前で尻を振っている。俺を誘うように。  応じるように舌でイイトコロを転がしてやれば、きゃんきゃんと吠えてくれる。  時折何か言っているようだったが、夢心地の俺の耳には入ってこなかった。……そのせいで、めっちゃ叱られたんだけどね後でね。 「い、いぐ! ああ、ああ‼」  しかもきちんと達すると伝えてくれるなんて。可愛いお嫁さんだ。イった回数を彫りこんだ首輪をプレゼントしたくなる。何色が好きだろうか。 (おっと)  ぶるるっと身が震え、シーツに白い液が放たれる。  直後に、ベリちゃんは脱力した。ぐったりとして動かない。 (疲れたかな?)  ずるんっと舌を引き抜く。小さく「ぁ」っと鳴いたのが可愛くて、虐めたい欲がムクムクと成長してくる。 「ベリちゃん? お疲れのところ悪いけど、次は俺のを挿れるから……あれ?」 「……」  膝に座らせようと抱き寄せ、顔を覗き込むとくたっと気を失っていた。  衝撃だった。 「えっ⁉ 嘘。寝ちゃったの? そ、そんなに疲れることだった⁉」  取り乱しかけたが、彼女たちの中にも倒れちゃう娘はいたと思い出す。もちろん、三回戦くらい余裕な猛者もいたが……。 「ベリちゃん?」  未練がましく軽く頬をモフモフと叩くが無反応。よく見れば髪が張り付き、汗がにじんでいる。尾のように束ねられた髪は、ほどけかけていた。 「美味しそう(えろい)……」  意識がなくともこの色気。よく今まで無事だったなと強く思う。 「ハッ」  いけないいけない。見惚れていた。幸せな時間だった。見つめているだけでこの幸福度はすごいな、ベリちゃん。 「ゴクリ」  彼をそっと寝かせると、静かに覆いかぶさる。ベリちゃんの顔をわずかに上に動かすと、半開きの口に…… 「怒られるかな?」  お尻舐めた後にキスしたら。  人間って、不思議。うんちの何が嫌なんだろう。 「しゃーなし」  そんな人間に惚れたのは自分なのだ。彼らがどうしても無理なことは合わせてやらねばなるまい。  のそのそと、歯を磨きに行った。

ともだちにシェアしよう!