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プロローグ

 朝8時15分。   「行ってらっしゃい」  いつもの時間にダイニングでいつもの台詞を行って見送る。  そして、その台詞に何の返事もないのもいつも通り。  毎朝のこの儀式に何か返事があったことはない。  それどころか僕の顔すら見ていない。  だって僕たちの結婚は子供の頃から決められていたことで、決して恋愛結婚ではない。だから僕と陸さんの間には愛情といったものは一切ない。  それは陸さんに憧れている僕には寂しいことだけど、離婚しないでいてくれるだけありがたい。まぁ、ゆきなおば様ー今はお義母様ーがそんなことは許さないだろうけれど。  陸さんを見送った後は家事の時間だ。結婚を機に仕事を辞めた僕は陸さんに頼んで陸さんの部屋以外の掃除をさせて貰えるようにお願いをした。  僕と陸さんは結婚しているけれど、寝室は別々だ。主寝室には大きなベッドがあるけれど、その部屋は閉ざされたままだ。開くのは掃除のときだけだ。オメガの僕は、陸さんの実家である宮村家のために子供を望まれているからそのときに使うのだろうか。結婚して1ヶ月。まだヒートが来ていないからそういうことはないけれど。  さて、陸さんを見送ったし、掃除をしよう。
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