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もやもや4

「いったぁ」  目を覚ましたのは明るい陽の光の中だ。第一声が頭の痛みだなんて初めてだ。これを二日酔いって言うんだろうか。  なんて冷静に考えている場合じゃない。僕、いつの間に帰って来たんだろう。クラス会で3人に会って嬉しくて楽しくて、僕にしては飲んでしまったのは覚えてる。でも、途中から記憶がないのだ。家に帰ってきた記憶がない。だけど、どう周りを見渡しても陸さんと住んでる僕の部屋だ。ということは酔っ払いながらもきちんと家に帰って来たんだろう。タクシーに乗ったかどうかは覚えていないけど。  でも昨日着てた服を着ているのを見るに、帰ってきてそこでバテてしまったのだろうか。  それより今は何時なんだろう。そう思って部屋の時計に目をやると短い針が11を指していて、長い針は6を指している。え? 11時30分? 明るい陽がさしているということはどう考えても夜の11時なんかじゃない。昼の11時だ。そう思って思わず飛び起きてしまった。  陸さんの朝のフルーツ、カットしてないし、何よりもうお昼ご飯作らないと!  そう思ってリビングダイニングに行くと陸さんがソファーでタブレットを見ているところだった。 「陸さん! すいません、寝坊しました」 「構わない。昨日は楽しかったみたいだな」  そう言う陸さんはちょっと冷たい気がした。昨日の朝の陸さんとは明らかに違う。言うならば、一緒に住み始めた頃みたいな感じ。  なんだろう。酔っ払って帰ってきたから? それとも酔って陸さんになにかしてしまったんだろうか? 記憶がないからわからなくて、でも自分がなにかしてしまったのは確かなようで来生にでも後で訊いてみようと思った。  それよりも今はお昼を作ることを考えないと。簡単に作れるものならパスタにしよう。冷蔵庫を見て、茄子とベーコンのトマトスパゲティに決める。サラダはきゅうりとトマトのサラダでいいだろう。簡単だけど美味しいメニューだ。  最初にきゅうりを塩もみし、茄子も一口大に切って水に浸けている間にパスタを湯がく。そしてフライパンにオリーブオイルとにんにく、赤唐辛子を入れて炒め、炒まったところで赤唐辛子を取り出し、ベーコンを加えて火が通ったところで茄子を加え、炒める。茄子に焼き色がついたらトマトを加えてトマトの水分が煮詰まったところで醤油と胡椒を加える。塩を適量入れた水をフライパンに入れ、パスタも加えてざっと混ぜればできあがりだ。 「陸さん、できました」  そう声をかけると陸さんはタブレットをローテーブルに置き、手を洗うとダイニングに座る。 「いただきます」  それだけを言って僕の方には視線はこない。もっとも、今の陸さんの目は温度が低いけれど。これ、僕、帰宅してから陸さんになにかしちゃったぽいな。どうしよう。謝った方がいいよね? でも、記憶はないし……。 「陸さん。僕、昨日の記憶がなくて。僕、なにかしちゃってます、よね?」 「いや、別に何もしてない」  してないって顔じゃないと思う。明らかに温度低いし。 「それより楽しかったんだろ?」 「はい、それは。一番仲の良かったメンバーで会って話せたので」 「良かったな」  そう言って一瞬だけ僕に視線をくれたけれど、その目は先ほどよりは多少ましだけど、それでも昨日の朝のような温度はない。でも、陸さんは何があったかは話してくれなさそうだ。  普段は飲まないのに、楽しいからと言って何杯もお酒を飲んだのが悪かったな。来生、止めてたのに。これ、来生に言ったら怒られそうな気がする。  起きたときの頭痛がまだ少し残っているような気がするのと、陸さんが気になってパスタがなかなか減らない。これって二日酔いって言うんだろうな。たまにお父さんが飲んできた次の日に頭が痛いって言っていた。ご飯を食べたらお薬を飲もう。そしてなにかしてしまったであろう陸さんへの謝罪として夜は美味しいものを作ろう。そう決めてパスタを頑張って食べた。

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