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もやもや3

「うん。だから今日も忘れずに薬持ってきてある。陸さんにも念押されたし」 「大事にされてるんだな」 「そうだね。今日も夜遅くなるからタクシーで帰ってこいって言われた」  そう言うと3人はびっくりした。そうだよね。夜遅くなるって言っても僕、男だし。 「ほんとに大事にされてるな。親が決めた結婚でも、いい人と結婚したな」 「そう、かな?」 「そうだろ。大切じゃなかったら、夜遅くなるからってタクシーで帰ってこいって言わないだろ。だって、今、都内だろ?」 「うん」 「深夜帯になるし、そこそこな金額になるだろ」  やっぱりみんなそこを思うよね。僕だけじゃなかった。 「でも、お金じゃないんだろ」  そう、なのかな? 3人の話しを聞きながら、やっぱり陸さんは優しいんだなと思う。僕に対して感情なんてないのに、それでも夜遅くなると言えば心配してタクシーを使えと言う。ちょっと過保護では? と思わなくもないけど、それでも嬉しかったのは事実だし、今、3人の言葉を聞いて余計にそう思った。明日は感謝をこめて美味しいものを作ろう。 「天谷を見てると結婚っていいものなんだなって思うな」 「相手次第だろ」 「それが一番難しいかもしれないな」  それに3人は忘れてないだろうか。3人は男でベータだから陸さん側になるということを。だから過保護にされるんじゃなくてする側なんだ。絶対にそれを忘れてる気がする。 「まぁ、でも、天谷が幸せでいてなによりだよ」 「正直、親が決めた相手だから身元はしっかりしてるんだろうけど、大丈夫かなってちょっと心配だったんだよな。だけど、天谷を大切にしてくれているみたいで安心した」 「そうだな」  そういう須合にうるっとくる。6年間ずっと僕を守って来てくれた須合と度会がそう言ってくれて嬉しい。僕がヒートを起こしかけたときは僕の家まで送ってくれたりした。それこそ大事にしてくれていたのだ。そう考えると僕は幸せなんだなと思う。3人にも陸さんにも感謝だ。  なんだかそう思ったら嬉しくて、ついお酒を飲んでしまう。普段はあまり飲まないけれど、今日はクラス会だし、嬉しいこともあったから飲みたくなった。 「お酒、おかわりしていい?」 「飲め飲め!」 「おい、度会!」 「だって祝いの酒と一緒じゃん」  言い合ってる度会と来生を尻目に僕はシャンパンを取ってきて、須合と乾杯する。 「これ美味しい」  そう言って口をつけていると来生がそれに気づいた。 「おい、須合!」 「大丈夫だって。天谷だって子供じゃないんだし、タクシーで帰るんだしさ。それに、まだそんなに飲んでないだろ」 「2杯目」 「じゃあ大丈夫だよ」 「じゃあ、これが最後な」  3人の中では、一番仲が良い分来生が一番の心配性だなと思った。僕だってもういい大人だし。2、3杯平気だ。多分。  だってこんなに嬉しい日は飲みたくなるじゃないか。そう思うとお酒はするすると喉を通って行く。 「大丈夫だよ、来生」  心配顔で僕を見ている来生に声をかける。来生は優しいんだよな。今は彼女はいないみたいだけど、いたら絶対に大切にするタイプだ。来生と付き合う人は幸せだなと思う。いつか、そう遠くない日に来生の結婚式に出席したいなと思う。そう思うとそれが顔に出ていたのか須合に言われる。 「天谷、楽しそうだな」 「うん、楽しいよ」  ほんとに幸せで楽しくて、クラス会に出席して良かったと思った。

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