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初めての6
陸さんへのお詫びのメニューはレモンバターで食べるサーロインステーキとポテトサラダ。クラムチャウダーというメニューだ。とは言ってもステーキは焼くだけだし、ポテトサラダも簡単。そしてクラムチャウダーもあさりの砂抜きが少し面倒なだけでさほど難しいものではない。
こんなに簡単なのでいいのかな? と思うけれど、陸さんが食べたいものがステーキとスープと言うことだったので、それに従ったものだ。
でも、クラムチャウダーであさりを使うので、陸さんには内緒で明日もお詫びのつもりでアクアパッツアを作ろうと思っている。
だって僕が鍵を閉めていれば陸さんはヒートに当てられてラットを起こすことはなく、仕事を休む必要はなかった。
ゆきなお義母様が番になるのにヒートを隠したらいけないと言われたので、鍵を閉めなかったんだけれど、やっぱりなんだか申し訳ないことをしてしまったと思う。
でも、これだといつまでも番にはなれないし、ゆきなお義母様は番になることを望んでいるし、お母さんだって一緒だ。かと言って巻き込んで抱いて貰うと陸さんの仕事に支障をきたしてしまうので、どうしたらいいかわからない。
そんなことを考えながら夕食用のポテトサラダのじゃがいもを潰していく。
合意がなかったから項は噛まなかったと言っていたけれど、僕が番になることを了承したら陸さんは項を噛んでくれるんだろうか。そうしたら双方の親が望んでいる番になれる。でも、陸さんは好きな人がいるんじゃないの? 出かけている様子はないから今はいないんだろうか。
考え事をしながらじゃがいもを潰していたら、結構潰してしまった。じゃがいもがゴロゴロしているくらいのを作ろうとしていたのに。
次にクラムチャウダー用に野菜をダイス型に切って、バターを鍋に入れて熱し、炒める。そして薄力粉をふるいながら入れて粉っぽさがなくなるまで再度炒める。次に水、あさりの蒸し汁、コンソメを入れて煮立たせる。最後にあさりの身と生クリームを加えて混ぜ、塩、胡椒を入れたらできあがりだ。
クラムチャウダーまで作り終わってしまったので、後は食べるときにステーキを焼くだけになってしまったので僕用にコーヒーを淹れて、この間のヒートのときのことを考える。
仮に今陸さんに恋人がいないにしても、僕と番になることは違うと思う。だって番になってしまったら一生ものだ。解除なんてできない。
いや、アルファ側は番になっても特に変化がないから離婚することは問題ない。問題があるのは番以外のアルファに性的に触られるのがダメになるオメガの方だけど、アルファだって番のオメガを捨てたというと世間的には冷たい目で見られる。だから番になるのは一生ものなのだ。
そんな一生ものの番を簡単には作らないだろう。だからほんとなら陸さんの合意もなく、ドアの鍵を開けっ放しにしておいたのはまずかったのかもしれない。
あれ? でも前回のヒートの時は鍵をかけていたけれど、ドアの向こうで陸さんはラットを起こしたんだろうか。特になにも言っていなかったけれど、それはただ言わなかっただけ? ドアを隔てればヒートに当てられることはないんだろうか。
そもそもなんで陸さんは僕の部屋のドアを開けたんだろうか。前回のヒート時もドアの向こうでラットを起こしてドアを開けようとしたのだろうか。でも、陸さんはなにも言っていない。ということはラットを起こしはしなかったんだろう。ということはドアを開けようとはしなかったのかもしれない。
それを今回開けようとしたのはゆきなお義母様に番になることの順序を詳しく言われてしまったからだろうか。だとしたら僕と番になることは陸さん側は構わないっていうことなんだろうか。それがわからない。
番になることは僕的には問題ない。どころか陸さんの番になれるなんてそんなの嬉しすぎることだ。としたら、これは陸さんに伝えた方がいいんだよね? でもそれをどうやって伝えるの? それに伝えたものの、陸さんがほんとは嫌がっていたら恥ずかしいし悲しい。
ゆきなお義母様。やっぱり番になるのはかなりハードルが高いです。
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