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自分の気持ち3
小さくかかっている洋楽を聴きながら車は順調に北上し、車は日光に着いた。すぐに神橋へ行くのかなと思っていたら、団子は好きかと陸さんに訊かれた。好きだというと、団子屋の前で車を停めた。
「ここはみその上に黒砂糖のタレをのせた、ここでしか食べられない団子があるらしい」
味噌の上に黒砂糖? 珍しいタレだ。団子は注文を受けてから焼くらしく、ホカホカだ。そして焼き上がった団子を頬張ると味噌の塩気と黒砂糖の甘さが絶妙だ。これは癖になりそうな味だ。僕が団子を食べているのに陸さんは食べていない。もう一本あるのに。
「陸さん、食べないんですか?」
「俺はいいから食べろ」
「でも美味しいですよ。甘じょっぱくて」
「黒砂糖は甘いだろう。いいから二本食べろ」
食べろと言われたら食べる。美味しいし、なによりこれから歩かなきゃいけないから。なので僕は言われた通りに1人で二本平らげた。
そして、その後も近くのお店で温泉まんじゅうを食べたりと少し食べ歩きをする。食べ歩きを楽しんだ後は車は神橋へと進む。画像で見る神橋も綺麗だけど、本物はもっと綺麗だ。
車はどうするんだろうと思っていると車は神橋を渡り、輪王寺駐車場に車を止めた。車で移動するようだ。
勝道上人の像を見ながら輪王寺境内に入り、まずは宝物殿を見学する。宝物殿は国宝1件・59点、重要文化財51件・1618点、重要美術品4件・7点と国宝、重要文化財がすごい数があり、常時50点ほどを拝観室に展示しているという。
宝物殿を見た後は本堂である三仏堂へ。宝物殿を見て古いお寺だなと思ったら平安時代に創建されたという。そして現在の建物は徳川家光によって建て替えられたという。
三仏堂という名前は内陣にある千手観音、阿弥陀如来、馬頭観音という三体の大仏様を祀っていることかららしい。ちなみに薬師如来、阿弥陀如来、釈迦如来という掛仏も祀っている。ちなみに東日本で一番大きい木造建築だというだけあってほんとに大きい。
「すごいですね」
「ああ」
僕たちはお互い黙ったままで見て回る。そして三仏堂を出た後は一番煌びやかな東照宮へ。
東照宮は言うまでもなく徳川家康を祀った神社だ。創建は1617年と比較的新しい。
「これはほんとに煌びやかという言葉がぴったりだな」
「ですよね。だから小学生でもあまり飽きずに見ていられました」
「見ざる・言わざる・聞かざるはどこにあるんだ?」
「三猿ですね。あそこです。神厩舎です」
「これがそうか。東照宮と言ったらこれと眠り猫のイメージしかなかった」
「有名ですもんね」
「しかしほんとにすごいな」
ほんとに東照宮は派手というか煌びやかとしか言いようがない。でも、神厩舎もそうだけど、東照宮は重要文化財が山ほどあって、最も美しい門と言われる陽明門など国宝も複数ある。
御水舎で手を洗って口をすすいでから神様に祈る。まぁ、徳川家康だけど。
国宝の廻廊には花鳥の彫刻がされていて、どれもが極彩色に彩られている。ほんとにどこを見ても煌びやかだ。
そして見ざる・言わざる・聞かざると並んで有名な眠り猫と五重塔を見てから東照宮を後にした。
東照宮の後はまた輪王寺の大猷院へ。大猷院は徳川家光の廟所で、世界遺産にある境内では登録された22件の国宝と重要文化財が建ており、315基の灯籠がある。
ここも朱塗りで極彩色に彩られているけれど、東照宮に比べたらトーンダウンしている。それもそのはずで、家康を凌いではいけないという遺言があったためだと言われている。その遺言がなかったら東照宮に並んで煌びやかになっていたんだろうか。
仁王門は重要文化財で阿形と吽形の2体の金剛力士像が安置されている。と、重要文化財は仁王門だけでなく、二天門、夜叉門、皇嘉門も重要文化財に指定されているし、拝殿・相の間・本殿は国宝だ。ちなみに拝殿・相の間・本殿は東照宮よりはほんの少しトーンダウンしているが十分に煌びやかだ。
「徳川はどれだけ派手なんだ?」
陸さんが小さく呟く。それには同感だ。廟所なんてそんなに派手にする必要があるんだろうか。拝殿の天井はほんとに煌びやかだ。遺言がなかったら絶対に東照宮より煌びやかになっていたと思う。だって、抑えてこれなんだから。
だけど、そんな煌びやかな大猷院と打って変わって常行堂は普通の落ち着いた建物だ。常行堂は、848年に|慈覚大師円仁《じかくだいしえんにん》によって、比叡山延暦寺の『にない堂』に模して建立されたという。
「普通はこれだよな」
「そうですよね」
ため息をつきながら輪王寺をまわり、徳川家の煌びやかな世界を後にして僕たちは二荒山神社へと行った。東照宮、輪王寺と徳川家の煌びやかな建造物を見たあとには地味にすら見えるけれど、これが普通の神社だ。そしてここは縁結びの神様だ。僕も陸さんとの番という縁を結んで欲しい。そうして僕たちは二荒山神社を参拝した。
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