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重なる気持ち2

「まあでも真面目な話し、和真くんのことはまだ完全には忘れられないと思うよ。まだ1年半くらいだろ。それは無理だよ。でもさ、千景くんのことを好きなのなら打ち明けた方がいいぞ。でなきゃ、いつか愛想つかされるぞ」 「戸ノ崎の言う通りだな。愛想つかされるというより、このままだと余計に距離があいてしまうと思うぞ。それが嫌なら、はっきりさせろ」  戸ノ崎も一条も気持ちを打ち明けろという。自分でもそうだよなとは思う。でも、干渉なしでと言った人間がどんな顔して告げたらいいのかがわからない。俺が千景なら、からかわれていると思うから。  だけど言わなくては、いつか失うかもしれない。大体、今日の次に必ず明日があるとは限らないのだ。それは和真のときで痛いほどわかっている。だから千景に伝えろと言うのも当然だ。 「でも、伝えるタイミングが……。まさかいきなり言うわけにもいかないし」 「一緒に住んでて伝えるタイミングがないとか言うなよ?」 「いや、ないよ。そもそもあまり話さないというか……」  俺がそう言うと戸ノ崎も一条も呆れはてた顔をする。それはそうだろう。一緒に住んでて話さないとか考えられないだろう。それもこれも干渉なしと言ったことが響いてる。  結婚した当初はこんなことになるとは思わなかったから干渉なしでと簡単に言ったけれど、それが将来自分の首を絞めるとは思わなかった。自分が言った言葉だけどタイムスリップできるのなら、その言葉は言うのはやめろと言うのだけれど、タイムスリップなんてできないから自分で苦しむしかない。 「全く話さないのか?」  一条に訊かれるので首を横に振る。 「いや。最近は少し話すようにはなったけど、なにもないのにいきなり話しかけるなんてことはできない」 「じゃあ話しかけてもおかしくないことを作ればいい」  話しかけてもおかしくないことを? どんなことだろう? 「どこかへ出かけるとかいいんじゃないか? どこか食事に行くとか、ドライブに行くのでもいいし」  一条がアドバイスをくれる。  出かけるか……。外出先でさらりというのもありか? 食事に行ってその最中というのもありかもしれない。ドライブもいいかもしれないけれど、フラれてしまって気まずくなるのもいやだな。食事ならそんなに長時間じゃないからなんとかなるかもしれないと思うけれど、帰るのは同じ家だ。 「でもさ、和真くんのときはどうしたの。陸が告ったんだろ」  そうだ。和真には俺から告げた。でも、そんなに悩まなかった。別に一緒に住んでるわけじゃないから、フラれたらもう会わなければいいだけだ。だけど千景は違うから。 「まぁ、千景くんに直接会ったことはないから迂闊には言えないけど、期待が全く持てないっていうことはないと思うけど。週末の食事だって千景くんから言ってくれたんだろ? 嫌なやつにはそんなこと言わないだろ」 「戸ノ崎の言う通りだな」  そうなのか。それならいいけど。問題は、俺の今までの行いだよな。それが一番の問題だ。どの面さげて好きだなんて言うんだ。干渉なしでというだけでなく、冷たい態度を取ってきた俺だ。 「でも、どの面さげて」 「それはまぁ仕方ないな。自分が悪いんだから」  一条にぴしゃりと言われ、なにも言い返すことができない。それでも、言うしかないよな。和真みたいに突然失うことだってある。  「もうすぐシルバーウィークだし、どこかドライブでも行ったっていいんじゃないか?」  戸ノ崎が助け船を出してくれる。どこか出かけるか。フラれた場合のことを考えると気が重いけど仕方ない。まぁ、告白だなんてことがなくてもいつも家事をやって貰っているから、どこかへ連れて行くのはいいだろう。たまには家事を休ませてあげたい。 「頑張ってみるよ」  グチグチと言っていたって仕方ない。

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