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重なる気持ち4
翌日曜日。
陸さんはお昼近くに起きてきた。ちょうど良かった。パスタを湯がくところだった。陸さんも起きてきたし、2人分湯がこう。
でも、起きてきた陸さんは二日酔いなのか頭を抑えている。
「おはようございます」
「おはよう」
「二日酔いですか?」
「あぁ」
「お水どうぞ」
「ありがとう」
陸さんにウォーターサーバーから給水したばかりのお水を渡す。昨日、あんなになるまで飲んだから二日酔いになったんだろう。
「昨夜俺はどうやって帰って来た?」
そう訊いてくるっていうことは昨夜の記憶はないんだろう。確かに正体失くすほどだったから記憶がないのも当然か。
「お友達お二人に支えられて帰って来ました」
「そうか」
「もうすぐお昼できるので待っててください」
「わかった」
そう言うと顔を洗うのだろう、洗面所へと行った。
記憶があれば、消化不良となっている「好き」の意味を訊くのだけど。最初、自分に言われたのだとは思わなかった。でも、ちかげと僕の名前を呼んだから僕で間違いないと思う。まさか陸さんの好きな人が、僕と同じ名前とはちょっと考えられないし。
まぁでも、記憶がないということは好きだと言ったことも覚えていないだろう。ただ、陸さんのお友達の人が言っていた通り、酔った勢いで本音が出た、とか。
いや、いくらなんでもそんなに僕に都合のいいことがあるわけがない。それより今はお昼ご飯が先だ。
今日のお昼は簡単にペペロンチーノと海老とブロッコリーのサラダだ。
「陸さん。食べられますか? もう出来ましたけど」
「あぁ、食べる」
ソファに座ってお水を飲んでいた陸さんがダイニングに座る。そして僕は陸さんの前にペペロンチーノとサラダを置いた。
「今日は簡単になっちゃいましたけど」
「いや、十分だ。いただきます」
「いただきます」
ペペロンチーノを口にしながら考える。二日酔いに効くのってしじみだっけ? あさりだっけ? うちはお父さんが少ししかお酒を飲まないからそういうのがよくわからないけど、しじみかあさりが二日酔いに効くというのだけは知っている。陸さんは辛そうだから、あとでスーパーに行って買ってこよう。
「昨夜は起こしてしまったか?」
「いいえ。寝る前だったので大丈夫です」
「そうか。それなら良かった。ところで、シルバーウィークだが、予定はあるか?」
「いいえ。ありません」
普段家にいて予定が入ることは悲しいけれど、ない。せいぜい友人とたまに会うくらいなのだからシルバーウィークなんて1人だ。
「それなら箱根にでも一泊で行くか」
「え?!」
「嫌ならいいが」
「嫌じゃありません! びっくりしちゃっただけです」
「そんなに驚くな。たまには家事を休め。普通の仕事だって休みがあるんだから」
陸さんはいつもそう言って僕を休ませようとしてくれる。陸さんになにかできるのが嬉しいから、休むとか考えたことがなかった。
「箱根にいい旅館があるんだ。客室が少ないからゆったりとできるところで、部屋に綺麗な景色の見える露天風呂がついているからリラックスできる。予約が取れればいいんだが」
お部屋に露天風呂がついてるっていうことはそこそこのお値段はするんだろうな。でも最近は露天風呂付きの部屋も増えてきているし、そんなに驚くことはないか。そう考えて返事をする。
「楽しみです。最近、温泉行っていないので」
「そうか。いいところだから温泉に入ってゆっくりするといい」
「はい」
そうして僕と陸さんはシルバーウィークに箱根に行くことになった。
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