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番外編2
翌日は朝早く起きて陸さんはシリアルを、僕はパンを食べてからダイヤモンドヘッドビーチへと出かけた。陸さんがサーフィンをするからだ。
もちろんサーフィンなんてやったことのない僕がサーフィンをする訳もなく、浜辺で陸さんがサーフィンをするところを見るだけだ。片手には本を持って。
「無理に付き合わなくてもいいんだぞ? サーフィンなんて見て楽しいか?」
「陸さんが波に乗っているのを見たいです。それに本も持って来たので安心してください」
「そうか。ならいいけど。俺も休憩であがったりはするから」
「はい」
陸さんは時折休憩を挟みつつサーフィンを楽しんでいた。そして僕は、そんな陸さんの姿を浜辺で見ていた。はっきり言って格好いい。新婚旅行のときは見たかったけど、そんな距離感じゃなかったから見れなかったんだよな。今は何も考えずにガン見できるけど。
こんなに格好いい人が旦那さんだなんて信じられないし贅沢だけど、ほんとのことなんだよな。しかも格好いいのは外見だけじゃない。内面まで格好いいんだ。
午前中はそんな陸さんの姿を見つつ、でも本も読んでと結構贅沢な過ごし方をした。
ランチはサンドイッチを作って来たので陸さんと浜辺で食べる。こういうことができる海っていいな。僕は海でのアクティビティを楽しむ訳じゃないけど、寄せては返す波が好きだ。見ているのもいいし、波の音を聞いているのもいい。心が落ち着く。
「新婚旅行のときはランチは適当だったな」
「え? きちんと食べてはいなかったんですか?」
「んー。食べるときもあったけど、面倒だと抜いて、その代わり早く部屋に戻ってた」
陸さんのランチが適当だったなんて知らなかった。サーフィンなんて疲れるだろうから食事はきちんと取らないと危ない。それを言うと陸さんは苦笑いする。
「じゃあ今日はランチを持って来て良かったです。あのときも言ってくれたらサンドイッチ作ったのに」
「あのときはそんなこと言えないだろ。お互いに干渉なしでって言ったそばからランチを作ってくれだなんて」
確かにそうだけど。
「それに千景はお手伝いさんじゃない」
陸さんはよくそれを言う。だから僕に無理はさせない。それでも陸さんに頼まれたら僕はできることならなんでもするのに。
そんな風にゆっくり話しをしながらランチを食べると陸さんは再びサーフィンを、僕は読書をして午後も過ごす。それでも朝早めの時間から波に乗っていたので早めにビーチを後にした。
「もっとサーフィンしなくて良かったんですか? 僕のことなら気にしなくていいんですよ?」
「朝早くからやってたんだからいいんだよ。でないと疲れる」
あ。そうか。確かに疲れそうだ。じゃあ部屋に戻ったら昨日買って来たからパンケーキでも焼いてコーヒーを淹れよう。そしてゆっくり過ごして貰おう。そう言うと、千景こそ休めと怒られる。ハワイに来てまで家事をするな、と。
確かにホテルじゃないから掃除も必要だけど、日本にいるときみたいに毎日掃除機をかけているわけじゃないから、これでも手抜きしているんだけど。それでも陸さんの目には同じらしい。
「明日はサンセットクルーズでも行くか? 今からでも予約は間に合うだろう」
「わぁ。僕初めてなんです、ハワイでのクルーズって」
「そうか。海でサンセットを見て、ホノルルの街の夜景を見るのは綺麗だぞ」
「見たいです!」
「じゃあ予約しよう」
そう言って陸さんはスマホから予約をしてくれる。サンセットクルーズなんて考えただけでもわくわくする。僕はよっぽど嬉しそうな顔をしていたのだろう。陸さんは僕を見てくすくすと笑っている。笑われたって構わない。だってほんとに楽しみなんだ。
「だから明日は夕食は作らなくていいからな」
「はい」
きっとサンセットクルーズを言い出したのは、僕がサンセットの時間の海が好きなこともあるけれど、少しでも家事を休ませようとしてくれているんだろう。陸さんはそういう人だ。
「陸さん。ありがとうございます」
「礼を言われることはなにもしてないよ。俺も大学のとき以来だからな」
決して恩着せがましいことは言わない。そんなところも好きだ。ほんとに陸さんって外見が格好いいだけじゃなくて内面まで格好いいから絶対にモテるよね。そんな人と結婚できた僕はもっていると思う。
そんなことを考えながら明日のクルーズのことを考えた。
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