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番外編3

 ハワイ3日目は陸さんとは夕方まで別行動だ。  陸さんはサンドイッチを持ってサーフィンに行き、僕は簡単に掃除を済ませてから本屋さんに出かける。新婚旅行で来たときに買いすぎたかな? と思っていたけれど、1年以上も経てば全て既読済みだ。だから今回も本は買って帰る。  そして今回は本は送るつもりだ。前回はスーツケースに入れて持って帰るつもりだったからある程度はセーブして買っていたし、今回は僕が読むだけでなく陸さんが読むようなのも買って行くつもりだからだ。  陸さんが大学のとき交換留学でアメリカに1年いたことは知っていた。だから英語には不自由しない。だけど実はその頃からミステリーを読んでいることを知った。普段は面倒なので手軽に翻訳本を読んでいるらしいが、僕が洋書を普通に買って読んでいると知ったら、一緒に買ってきてくれと頼まれたので、今日は自分で読むものだけでなく陸さんの好きな作家のものも買って行く。  そうなると本は前回よりも断然増えるので、そうなったら最終日に宅急便で送ろうということになったのだ。なので今日は部屋に持って帰ることだけ考えればガンガン買える。  モールの本屋へは前回の新婚旅行のときと合算すれば一番足を運んだところじゃないだろうか。今回のハワイは1人で過ごすわけじゃなく、陸さんと過ごす時間の方が長くなるはずだから本屋さんへは今日しか来ない予定だ。だから今日の僕はハンター気分だ。とにかく買って帰る!  そうしてどれくらい本屋にいたんだろう。お腹がすいて我に返った。喉も渇いたし、手にしていた本をキャッシャーに持っていく。うん、そこそこ買ったけど、もう少し欲しかったかな? 陸さんに話して少ないようなら2人で来よう。きっと嫌な顔はしないはずだ。  それなりに本を買ったからやっぱり重い。時計を見るとちょうどお昼時なので近くのマックで食べることにする。陸さんとは14時半頃には部屋に戻るということにしてある。もっとも僕の場合は本屋さんだけが目当てだったから、これでお昼を食べ終えたら帰るけれど。  マックではいつものチーズバーガー。昨日もチーズバーガーだったことを思い出す。まぁ昨日のはバーガーとは言えマックのとは大違いだけど。それでも毎日こんな食事をしていたら、あまり運動を習慣としていない僕は太ること請け合いだ。  お昼を食べ終わって時計を見たら13時半を回っていたので、少し早いけれど部屋に戻ることにした。陸さんはまだ帰っていないだろうと思っていたら既に帰っていて、ラナイでうたた寝していた。サーフィンして疲れたんだろうな。ハワイへ来る前日まで仕事もしていたし。そのまま寝かせておいてあげようとしたけれど、目を覚ましてしまったようだ。 「ああ。帰ったのか」 「はい。今帰ってきました。お疲れですか?」 「あまり休まずに波に乗ってたからな」 「クルーズ、大丈夫ですか?」 「大丈夫だ」 「ならいいんですが……。無理はしないでくださいね」 「明日はゆっくりするよ。それより本はどうだった?」 「少し足りなかった気がしますけど……」 「どのくらい買った?」 「これです。12冊しか買ってないです」  そう言って僕はエコバッグを広げる。そう、2人分で12冊しか買ってないのだ。1人12冊ならわかるけれど。 「まだ欲しいのあったか?」 「まだそこまで見れてないんです。ごめんなさい」 「そうしたら明日あたり2人で行くか」 「はい。すいません」 「謝ることはない。大体1人で持てる分も限られているしな」  そう言って陸さんは笑ってくれた。疲れているなら明日はゆっくりして欲しいのに本屋さんに行かせてしまう。それでも嫌な顔ひとつしないんだ。ほんとに陸さんは優しい。

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