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番外編9
友人へのお土産、両親へのお土産と買ったので、最後はコナ・コーヒーを買いに行った。お父さんの分と自分たちが家で飲む分だ。
コナ・コーヒーは日本でも買えるけれど高いので、ハワイで買って行くのがいい。
「お土産を買うのも疲れるな。父さんと母さんなんていつでも来れるんだから買う必要ないのに」
「でも、うちのお父さんとお母さんに買って、お義父様とお義母様には買わないっていうわけにはいきませんよ」
「新婚旅行のときは1人で選んだんだろ。悪かったな、任せて」
「いいんです。今日一緒に選べたから」
そう言うと陸さんは優しい笑顔を見せてくれた。この表情が見れることが嬉しい。
「ところで夕食だが、買って帰るか。疲れただろう。美味しいロブスターの店があるんだがどうだ?」
「わぁ! ロブスター食べたいです!」
「じゃあ今夜はロブスターにするか」
車に乗ってすぐに陸さんは訊いてきた。夕食のこと全然考えてなかった。ロブスターか。いいな。
「ステーキも一緒なんだが、6ozでいいか? 7ozだと少し多いか?」
「えっと、1ozが28gくらいでしたっけ? そしたら6ozで」
「わかった。スープとか適当に頼むぞ」
「はい。お任せします」
僕がそう言うと陸さんはスマホでオーダーをする。後は取りに行けばいいだけだ。ロブスターなんて大学生のときにハワイに来たとき以来だ。なので楽しみだ。
車でお店まで行くと少し待ち時間があったものの、大して待つこともなくオーダーした品を受け取る。
「冷めるから早く帰って食べよう」
そう言って寄り道もせずにまっすぐコンドミニアムに戻る。そして帰って来てテイクアウトしてきたものを見ると、ロブスターとステーキのコンボプレート、ロブスターのスープ、大麦のライスが入っていた。ロブスターのスープなんて飲んだことがない。
「スープ、一応温めますね」
「ああ、頼む。他はテーブルに出しておくよ。飲み物は水でいいか?」
「はい」
スープを軽く温めて食事を始める。まずはロブスターから食べる。
「ん! 美味しい!」
「だろう? 旅行者はあまり見かけない店だが、地元民でいつ行ってもいっぱいだよ」
「ですよね。こんなに美味しいですもん」
ロブスターを食べた後はロブスターのスープだ。一口飲んでみると、当たり前だけどロブスターの味がする。ロブスターのスープなんて初めてだ。
「ロブスターってスープにしても美味しいんですね。スープがあるなんて知りませんでした」
「そう思って注文した。このライスも食べてみろ。さっぱりしていて美味しいぞ」
陸さんにそう促されてライスを一口食べると、確かにさっぱりしている。ロブスターやステーキの味がはっきりしているから、これくらいさっぱりしている方が合う。
「ロブスターやステーキに合いますね」
「そっちがソースやらなにやら味があるからな。ライスはさっぱりがいい」
「はい。あーでもステーキも美味しい」
アメリカでのステーキの焼き方はほとんどの店が焼きすぎる傾向にあるが、このお店はほどよい焼き加減だった。
「焼きすぎてないから美味いだろ」
「はい。お肉のいい味がします」
全てが美味しくて、僕はほとんど喋らずに食べてしまった。陸さんはそんな僕を微笑みを浮かべて見ていた。気がついたときには恥ずかしくて顔を赤らめてしまう。
「気に入ってくれたみたいだな」
「はい。どれも、とっても美味しいです」
「なら良かったよ」
2人で笑いながら食事をできることが嬉しかった。そうしてハワイ最後の夜は更けていった。
番外編・完
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