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第1話
10年振りの生まれ故郷は凄く懐かしい。
侑斗は中学までを祖父の家がある長崎で過ごした。
卒業と共に父親の転勤で県外へ。
父親達は正月やお盆には帰ってきていたが、侑斗は部活や勉強やらで帰るのを躊躇った。
……ううん、本当は違う。
部活や勉強は言い訳……ただ、傷つけた人に会うのが怖かった。
幼なじみで、星座に詳しくって……いつも、天体観測に一緒に出かけてた。
お祭りも……。
ただ、中学最後の夏祭りは違った。
卒業したら遠くへ行くと知っていたから。
だから……。
「侑斗」
駅を降りた時に名前を呼ばれて驚いた。
「あさ……ひ?」
そこには幼なじみの朝陽が笑顔で立っていた。
「やっと来たあ!!」
ニコッと笑う朝陽の笑顔は昔、一緒に遊んでいた頃と変わらない。
「朝陽……」
「すげえ、大人になってんじゃん!」
侑斗に近付き元気に笑う。
「大人になってるって……お前」
「ふふ、もう25だもんな」
ごめん、ごめん、と笑って謝る朝陽が昔と変わらないので侑斗も笑顔になった。
「本当に……朝陽?」
「なに?俺も大人になった?背は高校で止まっちゃったけどな」
朝陽は昔っから小柄で女の子みたいに可愛かった。
外に出る時は天体観測だし、学校で体育は体調不良で見学ばかりをしていたから肌が白くて……本当に女の子より可愛かった。
目の前に居る朝陽も……最後に見たのは……ハッキリみたのは夏祭りの夜。
凄く綺麗で。
そこから、意識してしまってちゃんと顔を見れなくなってしまっていた。
子供だったから。
馬鹿な子供だったから。
「精霊流し、見に来たんだろ?夜、会おう」
「うん」
「じいちゃん達に会うのって久しぶりなんだろ?会いたがってた」
「そうなんだ……10年振り」
「喜ぶね」
駅を出て歩き出す。
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