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第7話
引っ越してからも朝陽は手紙やメールをくれた。
でも、20歳になる年。朝陽の文字ではない手紙が届いた。
朝陽の母親からで病気で彼が亡くなったと。
元々心臓が弱かった朝陽は風邪をこじらせ……。
肺炎になり……それからあっという間に。
成人になれず……逝ってしまった。
嘘だと思った……きっと、ドッキリか何かでなかなか、長崎に帰らない自分を帰らせようと……なんてまで思った。
信じたくなかった。
だから、ずっとメールを送り続けた。
5年も……馬鹿みたいに。
故郷に戻って確かめる勇気なんてなくて……でも、夜空を見る度に胸が締め付けられて死にそうだった。
朝陽が好きだった北極星が空に輝いているから。
それを助けてくれたのが今付き合っている相手。
どことなく朝陽に似ていて……それで惹かれたのかも知れない。
今日、ここに来たのはその彼からちゃんと現実を受け止めて来いと言われたから。
駅について、驚いた……。
朝陽が居たから。
変わらない笑顔で。
大人にならない姿でそこに居て……。
不思議と怖くなくて、ほら、生きてんじゃん!!とさえ思った。
でも、商店街を歩いても誰にも朝陽は見えなくて……商店街のショーウィンドウに映ったのは自分だけ。
花火買いに行った時も店員に変な顔をされた。
朝陽と会話をしていたのだが店員には彼が見えず……独り言を言っているように見えたのだ。
朝陽はずっと待っていてくれたのだ。
あの頃のままで……。
どうして逃げてしまったのだろう?
朝陽も自分を好きだって言ってくれたのに。
水をはったバケツには花火が何本も突っ込まれていて……ほんの少し前までここに居た。
ここに彼は居たのに。
キスをされた唇もちゃんと感じたのに。
なのに彼は逝ってしまった……遠くへ。
侑斗がまだ行けない遠くへ。
侑斗はその場に座り込み声をあげて泣いた。
朝陽が亡くなったと聞いてから5年も経ってようやく。
ごめん朝陽。
5年も待たせてごめん……。
待っててくれてありがとう。
好きで居てくれてありがとう。
好きだったのに……。
◆◆◆
最後に朝陽の携帯にメールを送った。
『ちゃんと朝陽とお別れしました』
メールを送った数分後、初めて返事が来た。
『侑斗くん……ありがとう。ずっと、ありがとう……朝陽を忘れないでくれてありがとう』
彼の母親からだ。
朝陽が言っていた、どう返して良いか分からないと。
『こちらこそ、ありがとうございました……もう大丈夫です』
返事を返した。
『侑斗くん……朝陽の分も幸せになってください』
そう返事がきた。
どんな気持ちでこれを返してくれたのだろう?
「ごめんなさい……」
何度も繰り返した。
涙がつきないのが不思議だった。
顔を上げると今住んでいる所よりも鮮明に見える夜空。
ポラリスを探してよ……。
朝陽の声が聞こえた気がした。
end
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