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第6話

「ごめん……」 「何で謝るの?」 謝る侑斗に近付き、顔を見つめる。 「俺は嬉しかったよ?」 「えっ?」 「だって、俺も好きだったから……」 ニコッと微笑む朝陽。 「あさ……ひ……」 言葉が詰まりそうになる。 「花火しよ?」 周りが少し暗くなり始め、朝陽は水をはったバケツを置く。 「キスされた後、よそよそしくなるんだもん……寂しかったよ」 朝陽はしゃがむとロウソクに火をつけると、蝋を垂らす。 垂らした場所にロウソクを立て、手持ち花火の穂先をちぎり、火をつける。 勢い良く炎が噴き出す。 「ごめん」 「だから、何で謝んの?」 朝陽は顔を見上げて侑斗を見つめる。 「ほら、花火しよ?終わっちゃうよ?」 朝陽に促され、侑斗も花火に火をつける。 「侑斗は今、好きな人居るんでしょ?」 「えっ……?」 驚いたように朝陽を見る侑斗。 「知ってるよ?侑斗の事ならなんでも……あ、でも、ストーカーじゃないからな!」 そう言ってふふっと笑う。 あの頃と変わらない笑顔で。 「ごめん……」 侑斗はまた謝る。 「侑斗はいつも、空見上げてたでしょ?何考えてた?」 「……朝陽の事」 「そう……ありがとう」 「逃げてごめん」 「うん」 「好きって……いえなくてごめん……言ったら朝陽から嫌われるかな?ってあの時言えなかった」 「酷いよねえ……それくらいで侑斗を嫌いになると思ってんの?」 「ごめん」 「また、謝る……侑斗って泣き虫だよね」 朝陽の手が伸びて侑斗の前髪を上げる。 「でも、その泣き顔好きだよ……可愛くて」 ふふっと笑う朝陽。 遠かった爆竹の音が近くに聞こえて来た。 「……精霊流し、来て欲しかったな」 そう言った朝陽は少し寂しそうで。 「朝陽……」 「大きな船だったんだよ?父さんとじいちゃんが頑張って作ってくれた……侑斗のおじいちゃんも手伝いに来てくれたよ」 「あさ……ひ……」 侑斗は今にも泣き出しそうな顔をしていて、きっと……我慢しているのだと朝陽にも分かっている。 「でも、メールだけはずっとくれてた……母さんがいつも泣いてた……返事はどう返して良いか分からなかったみたいだけど、携帯解約出来ないって……メール打ってる侑斗の事を考えたら出来ないって」 朝陽の手は前髪から頭へと移動して「泣き虫」と笑った。 我慢していた侑斗は大粒の涙を零していた。 「好きだよ侑斗……いつも、ポラリス見上げてくれてありがとう、本当、ポラリスになれたらいいのに……そしたら侑斗にずっと見ていて貰える」 朝陽の手が頭から離れる。それを阻止するかのよに侑斗の手が朝陽の手を掴む。 「いくな!!!」 力を振り絞って出た言葉。 「ありがとう」 ニコッと笑う朝陽はそのまま侑斗に口付けを交わす。 「もう……時間切れ……あまり、さ迷うとさ心配しちゃうじゃん?父さんや母さんが」 「いくなよお……」 「ありがとう侑斗……来てくれて」 「……5年もごめん……」 震える声で謝った。 「いいよ、まだ5年……侑斗はこらから先、何十年も生きて行くんだよ?その貴重な5年をありがとう……」 「朝陽……」 掴んでいたと思っていた朝陽の手はいつの間にか消えていて少し離れた場所に朝陽は居た。 「会いに来てくれてありがとう……ちゃんと生きろよ?幸せにならないと怒るからな?」 「だめ……」 侑斗は首を振る。 「どう生きたか……ずっと後でで良いから教えろよ?そしたら、また、一緒に花火しよ?」 「やだ……」 行くなと首を振る侑斗。 「ポラリス……いつも、侑斗の上にあるから!!忘れんな!!」 でも朝陽は、そう言ってニコッと微笑むと手を振り、目の前で消えてしまった。

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