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第5話
その時の唇の柔らかさと朝陽の驚いた顔を今でもハッキリと思い出せる。
それから……朝陽の顔をちゃんと見れなくなってしまった。
意識してしまったから。
引っ越すその日までちゃんと見れなくて、別れの日。
「向こう行っても夜空見上げてて欲しい。北極星を見つけたら思い出してよ」
朝陽に言われた言葉。
だから、寂しくなると空を見上げた。
季節の変わり目に来るハガキは侑斗が20歳になる頃には届かなくなっていて、でも、メールはしていた。
「なんて顔してんだよ?」
朝陽の声に我に返った侑斗。
「夏の星座言えるようになった?侑斗はいくら教えても夏の大三角を見つけきれなくてさ……でも、北極星だけはちゃんと見つけられてた」
懐かしむのうに言う朝陽。
「だって……朝陽が1番好きな星座だろ?」
「うん……何で好きか知ってる?」
「知らない」
「1年中見えるからと……侑斗が直ぐに探せる星座だから」
「はっ?何それ……」
「オリオン座とか色々教えても探せなかったじゃん」
クスクス笑う朝陽。
「笑うなよ!」
「ふふ……拗ねる侑斗……可愛い」
朝陽は優しく微笑む。
まるで、あの日のように。
キスをしてしまったあの日のように。
遠くで爆竹の音が聞こえてきた。
「ああ、もう、そんな時間かあ……」
朝陽は音が聞こえる方を見る。
「綺麗だよね、精霊流しって」
「うん……」
「あの日も綺麗だった……侑斗にキスされた日」
侑斗はドキッとした。
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