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第25話 花開いた血肉

25話 花開いた血肉  溢れだした言葉と感情がガルゴの口で塞がれていく。しかし、その優しい手つきで更に奥底にある傷は開かれていく様だった。  リョウが口を外し、逃れても息を吸う暇も無く唇を開かれ中にうねる舌を入れ込まれる。 「んっ……はっ、んぐ……。」 「っリョウ、ちゃんと口開けろ……。」  涙が勝手に出てリョウの頬を濡らしていく。必死にガルゴの肩や背中に爪を立てて抵抗するが、真っすぐで爛々とした瞳はリョウの心を崩していく。 「いっ……、ぁ、んぅ……!」 「……っ、はっ、んっ……。んぅ……。」  嫌だと言おうとしてもそのまま口内を蹂躙され、熱い快感が口から脳を侵していく。ガルゴはリョウを窓に押し当てながらその体に自身の熱を当てる。 「……ぐっ、っ……んっ……ぅ゙!」 「んっ……、はぁ……リョウ……。」  やっと口が離され、息を荒くしながら睨みつける。しかし、すぐさまにズボンごと下着を下ろされる。 「……っ!やめっ!」 「嫌だ……、やめない。」  無理矢理、柔らかいあそこを擦られる。 「ぅぐ……!」  腰を引くが後ろの窓にぶつかるだけだった。 「……はっ、ぅ。やめ……。」 「はっ……やっぱり酷くした方が好みなんだな。」  乱暴な手つきで擦られる。まだ濡れてもいないそこは痛みを訴えるが、頭は勝手に快楽物質を生み出していく。 「勃ってきたな……。」 「……ぅう。はぁ、……ん。……なんで、こんな。」 「お前の望み通りに……してやってんだ。」 「はっ、何?急に?嫌がってた癖に……。乱暴はしたくないんじゃなかった?」 「……もう、お前と居られる方法が分かんねぇんだよ。お前がどうしたいのかも。」  ガルゴはそう低く小さく答える。それをリョウは不思議そうな顔で見つめた。 「……それって。っ!?」  リョウの言葉は遮られ、息を呑む。 「あぁ、何かあったか?」  ガルゴの指がリョウの後孔に触れている。  平然としながらガルゴはそれを開こうとクルクルと、指の腹でなぞる。 「……っ!じゅ、準備っ、して、ない……!」 「そうか……、そうだよな。」  少し冷静になったのか気まずそうな顔をしたかと思うと、リョウの前をその手で包む。 「……っ!っは、……ふっ、や、ヤるなら……準備する?」 「そ、それは一回出してからだ。」  ガルゴは自身の反りたったモノを取り出すと、リョウのモノと合わせて擦り始める。 「はっ、お前っ!……い、ぅ……んっ……。」  一回だけじゃないのかよ、そんな言葉を言おうとして詰まる。ガルゴがリョウのモノと先端同士をくっつけ擦る。 「……っ!これ、やばっ……い!」 「こういうのも……好きなのか。」  水音が二人分大きくなり、腰の重みが増していく。その後もくっつける部分を変えたり、擦り方を変えたりして共に射精感を高めていく。 「……はっ、ぁ……ふぅ、ガルゴ……。」 「そろそろか?」 「んっ……。」  コクリと頷くとガルゴはニヤッと笑った。 「……っ!が、ガルゴっ!……はっ、激しい!……ぁあ!」 「っく!そうかよ……。リョウ、気持ちいいか?」 「んぐ、っ……はっ……気持ち……いいっ!」  もう既に頭の中は快感を求め。脳を快楽で溶かしているような思考のまとまらなさでガルゴに答える。 「……っあ!」 「っ……。」  ほぼ二人同時に果て。荒い息をして胸を上下させる。 「はぁ……。ぁ……ん、ぅ。」 「リョウ。」 「なにさ。……っ、は?おい!」  ガルゴはリョウを抱きしめ、その大きな手でしっかりと背中を押さえつけてくる。手のひらの熱が伝わってくるのがはっきりと分かる。 「離せ……っ!急になんだよ、続きなら俺が……。んっ……。」 「んっ……分かってる。待ってるから。」 「……勝手にキスしてくるな。」  フラリとリョウは投げ捨てられたズボンと下着を跨いで風呂場に向かう。名残惜しそうにガルゴの指先が背中にギリギリまで触れていたが無視してそのまま歩いて行く。  風呂場について、真っ先に出たのが大きな溜息だった。 「……はぁ。なんでだよクソ。」  自身が流されまくっている。ガルゴをこちら側に落としたい。そんな気持ちが中心にあったのにも関わらず、彼の好きにさせているような現状が気分を悪くさせる。 「……はぁ、まぁ。準備するか。」  自分自身の気持ちを切り替えさせるにも声に出して行動してみる。  本当は今のガルゴが少し怖い。今まで通りあしらったり引っかき回して反応を見て笑って、そんなことができない。この先がどうなるかリョウ自身簡単に予想ができた。 「あんな封筒……燃やさなかったらこんなことには。」  今更、とても後悔する。無視してそのまま放置してればよかったと。 「なんだよ……クソ。素直に話して……ハッピーエンドってか?はっ……クソみてぇ。」  後ろの準備をしながらモヤモヤとした感情が渦巻く。髪をかきあげ乱暴に頭を掻く。  少し経って、まだ収まらない感情は大きくなっていく。胸の奥が痛むとでも言うのだろうか、むしゃくしゃしてきたリョウは本来の目的を一旦放置し、近くにあったカミソリを手にする。 「……っ、く。」  元々傷だらけの身体に新しく赤い線が入る。  真っすぐに入っていくそれはゆっくりと、カミソリと指先を赤くして、床にポツポツと斑点を作る。 「……っは、は。……くっ、は。」  その後は何度も同じように傷つけていく。そうしていると徐々に気分が良くなっていくはずだった。 「……っ、は?あれ?」  視界が歪む。ポタポタと透明な液体が床に落ちる。 「……っは、クソクソ!知らない!知らない!なんだこれ!いらない!」  本来出てくるはずの性的興奮を呼び出す為に、急いで後ろの準備をする。入り口をローションで濡らした指でほぐしていく。中の洗浄は終わっていた。後は慣らして気持ちよくなるだけのはずだった。 「……うっ、うっ。はっ……ぐっ……。」  惨めだった。  やってることも何もかも。  思わずその場に蹲って、まるで子供が雷に怯えるように丸く小さくなった。 「……うぅ、ひっ……ぐ。」  嗚咽し腕を跡が出来るぐらい強く掴む。  何がいけなかったのか。どうして変わってしまったのか。問題に巻き込まれることなんていつでもあった。怪我をすることだってなんだって。  でも、きっと、ガルゴもリョウも少しずつ何かが変わってしまった。それに気づかないふりをしていた。  すると、ノックする音がした。 「おい、リョウ……大丈夫か。その、無理なら別に。」  ガルゴが扉の向こうから話しかけてくる。時間が空いて少し冷静になったのか、声に申し訳無さが乗っかった雰囲気がする。 「……っ、大丈夫。今、出るから。」  シャワーを頭から被ってから外に出る。勿論、血は止まってはいるもののリョウの胸には赤い傷跡が何本も入っている。  それを見てガルゴは痛そうに顔を歪ませる。 「何その顔……。」  ガルゴはリョウの顔にくっついた濡れた髪を指先でずらす。垂れて視界の邪魔をしていた髪がなくなると、よりハッキリとガルゴの顔が見えた。ガルゴはまるで罪人のように声を震えさせながら濡れてしまうのも気にせず抱きしめてくる。 「……やっぱり、俺は、お前を……傷つけて……しまうのか。」 「……。」 「……ごめん。ごめん。」  悲壮な声と腕の中でリョウは、その痛みと懊悩がどうすれば綺麗になるか考えていた。  俺達にはどうにもできないのか。おかしい壊れた奴はもう助からないのか。絶望と言うに相応しい気持ちが広がっていく。  それならとリョウは口を開く。 「ガルゴ……、俺と一緒になろ?」 「……え?」  ニコリとガルゴに笑ってみせる。 「ガルゴ、俺のこと愛して。」  彼の手を取り、ぐっと傷口に入り込ませる。 「……くっ。リョウっ!」 「あっ……、ふふ……ガルゴ。そんな顔しないで。大丈夫……。」 「……。」 「大丈夫……一緒なら。きっと。」  グチュリと血が音を立てて肉と皮膚の間を、ガルゴの指が動く。 「……リョウ。俺は……。」  首を横に振るガルゴを見て、リョウは空いてる片方の手でガルゴの頬を包んでやる。 「傷つけていい……傷を、もっと。ねぇ……大丈夫だから。俺達一緒でしょ。」 「それは……。いや、俺は……普通にお前と。」 「普通って……?昔から俺達は普通の輪の中に入れなかったじゃないか。」 「っ!それでも!」 「大丈夫……ガルゴ、大丈夫。俺達、一人じゃないなら生きていけるから。」 「そんなっ、こと……!んっ……。」  否定し続けるガルゴの口を塞いでやった。 「んっ……ちゅ、んっ……。」 「んっ……!んぐ……!」  抵抗してくるガルゴの体をそっと撫でてやる。背中を首の後ろからゆっくりと、背骨に沿って。 「……っふ!んっ……!」  ピクピクと背中が動くとリョウはニコニコと、笑いながらガルゴの口内を弄ぶ。 「……っ、はぁ。ガルゴ……かわいい。」  口の端から漏れた唾液を舐め取って笑ってみせる。 「リョウっ!」 「コーフンしてるくせに。」  膝で熱を持ったあそこをつついてやる。  リョウはぎゅっと彼の首の後ろに腕を回すと、体重をかける。 「ベッドで、しよ。」 「……あ、ああ。でも、リョウ……俺はお前に無理はさせたくない。」 「だから、大丈夫だってば。」  より体重をかけてやると観念したのか、リョウのことを抱き上げてガルゴは自室へと足を進める。  電気を付けずにそのままベッドへとリョウを下ろすと、不安そうな顔をしながら頬を撫でてくる。 「なぁに……。」 「……その、喋り方やめてくれ。」 「なんで?」 「どうせ……ほかの奴らにもそうしてるんだろう。そうやって甘えて……。」  苦いものでも食ったような嫌そうな顔をしてるガルゴに、リョウの胸は高鳴った。笑みがこぼれ出しそうで、慌ててはいけないと思いながらもガルゴのその顔に口付けをする。 「……あはっ。ガルゴ、かわいい。」 「だから、そんな喋り方。」 「そんな事どうでもいいじゃん。俺、今、最高に……気分がいい……。」  ぐっと引き寄せキスを浴びせながら、体を密着させてやる。ガルゴの体臭、熱、息遣い何もかもが愛おしく感じられて、それをすべて平らげたくなった。 「くっ……!リョウっ!」  興奮してるリョウを宥めようと体を引き離そうとする。しかし、ガルゴが力を入れるとそれに抵抗したリョウがうめき声を上げる。 「あっあぁ!……っ、はぁ……ガルゴっ!」 「なっ!す、すまない!リョウ……そんなつもりじゃ。」  さっきまで血を流していた傷口は、簡単に開くと新しい真っ赤な血が肌を伝っていく。 「……っ、ガルゴっ!もっと……もっと!」  無理矢理、ガルゴの手を引っ張る。そして開かせようとする。 「っ!やめろって!離せっ!」 「や……っく!あっ!」  振りほどこうとした腕は勢いが余り、そのリョウの顔に勢いよくぶつかった。 「……ぁ、はぁ……はぁ。クソ……、あぁ、すまない。」  ベッドの上でリョウは静かになる。 「……リョウ?」  ハッとしたようにガルゴはリョウの顔を覗く。すると、リョウは鼻から血を流してボンヤリと彼を見上げる。 「……っ、血が。」  ガルゴがティッシュを取ろうと体を起こすが、すぐさまリョウが抱きついて引き戻される。そしてそのまま唇を奪われ、舌で口内を無理くり開かれる。 「くっ、ふぐっ……!んっ……!」  リョウの鼻血が伝って唇に、リョウは舌でそれを舐めるとキスを続けた。お互いの口の中で鉄の味が広がっていく。 「……んっ……んっ……。」  それをリョウは甘い声を出しながら楽しんでいるようだった。 「……っは、ガルゴ……。ねぇ……なんでそんなに俺のこと引き離すの?」 「なに、言って……っ。」 「だってさ。俺が頭おかしいなんて……中学の頃から知ってたよね?しかも、なに……俺がこの前居なくなってめっちゃ……大変だったんでしょ?」 「……それは。」 「それなのにさぁ……。普通……の恋愛、しようだなんて。馬鹿……みたい。」 「……っ、お前は!確かに他とは違うっ、けど、それは……っ!」 「なに?俺ならどうにかできるって?やめてよ……ね。」 「それじゃ……っ、どうすればっ、いいんだよ!!」 「俺と一緒になろ?さっきからそう言ってるじゃん。」  どちらとも一歩も引かない。そんな状態で威嚇する猫のように見つめ合う。 「……っ、も、もう……やめてくれよ。リョウ。これ以上……。」 「そんな事言うなら最初から見捨ててよ……。なんで、なんでなんだよ。期待させないでよ。」 「……っ、そんな事言われたってな!」 「っ!中学の頃にはもうわかってたんなら俺のこと拾うなよ!お前なら理解してくれるんじゃないかって!お前となら普通に成れるんじゃないかって!!何度も何度も!裏切られてんだよ!」  胸の中にある汚いボロボロのバケツをひっくり返して浴びせてやる。自暴自棄に近いながらもガルゴを突き放すように。 「なっ!なんだよそんなの知らない!そんな事いつお前が言った?!」 「クソっ!うるせぇ!この!」  まだまだ溢れる感情がガルゴに向かって拳を振るう。 「っう、クソ!何しやがんだ!」  すぐさまガルゴはリョウの手を掴むが、もう片方の手でまた殴る。 「うぅ!」 「おい!やめ……!」  両手が塞がれると足を折り曲げ、膝で脇腹を蹴りつける。 「っ!てめぇ!」  肋骨側に入った蹴りでガルゴは思いっきりリョウに拳を振るった。 「うぐっ!……ぎっ!くっ!」 「っ!この!」  二人は裸のまままるで獣のように殴ったり、蹴ったり。爪をたて引っ掻いたり。もつれ合い噛みついたりもした。 「……っは!ぺっ!血が……。」 「ふぅ……、は……、リョウ……!」 「っ!いだっ!この!クソガルゴ!」 「……っうぐ!なっ!この!……っ!?あっ、おい!」  その時、ガルゴから離れたかと思うとリョウはフラリとベッドの上に沈んだ。 「……っは。う……、クソ……。」 「リョウっ!だ、っ!……大丈夫か。」 「あはっ……大丈夫。ちょっと興奮……し過ぎた。」 「……。」 「ははっ……何その顔。何おっ勃ててんだって?」  リョウの下半身は何を勘違いしているのか熱を持っていた。 「……ちっ、心配して損した。」 「心配……してくれたんだ。」 「……。」  わざとそんな言い方をしているのはガルゴはもう分かっているが、つい苛立ちが生まれてしまい。背を向ける。 「……ご、ごめん。」  それにリョウがすぐに謝ったかと思うと、その背中にリョウの体温が直接伝わってくる。 「……おい。」 「なにさ……さっきはガルゴが押し付けて来てたじゃん。」 「っ、……それは。」 「……ね。しよ?続き……。」 「はぁ……?」  思わず顔をそちらに向けようと首を回すと、近すぎる距離にリョウの顔があった。  近くで見ると、あの綺麗な顔はボロボロで頬は腫れてるし、目元も涙が何か赤くなっている。極めつけに鼻血や口の端が切れた時の血が、口周りを真っ赤にしてる。 「……っ、は!ははっ!」 「え?何……笑ってんだよ。」 「いや、なんでも……。」 「はぁ!?何さ!え?言ってみろよ!」  どう見たってリョウのその姿は、他者を魅了して遊び回っている普段とはかけ離れ過ぎていた。 「……っ、酷い……姿だな。」 「はっ!?お前もなんだけど!てか、俺の顔をこんなに殴るのって……!いや、他にも居たか……。」 「なっ!?……っ、んんっ……。」 「なにその下手くそな咳払い。」 「いや……別に。」 「……ははっ!そう?ならいいや。それで?」 「それで?」 「……ボロボロの俺でも抱けるの?しかもガルゴの言う普通のセックス……なんてできる?傷つけ合わない……そんなやつ。」 「……な、なんで急に。普通の……興味ないんだろう。」 「いやぁ?俺、今日はもう疲れたけど……気持ちいいことはしたいよ。だってまともにシてないし。」 「……っ。」 「それで?……どうなの?」 「優しく……する。」  そう言うとガルゴはリョウの方に向き直り、そっと優しく抱きしめながらベッドに横たわらせ。これ以上痛くならないよう、暴れた時に投げ出された布団を丸めてクッションのようにしてやった。 「腰、少し上げるからな。痛いか?どうだ?」 「……大丈夫。」 「怖いか……?」 「全然?」  平気そうにするリョウだったが、ガルゴはそっと頬をなでて口付けをした。二人の息を合わせるような、決して乱暴ではないやり方で。 「……っ、ごめんな。」

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